俳優の趣里（32）が、2023年度後期の連続テレビ小説『ブギウギ』（第109作）のヒロイン・花田鈴子役に決定した。「とても緊張しています」と純白のドレスに身を包んで取材会に登場すると、「真っ白な気分で、きょうという日を迎えたいと思っていました。まさか自分にこんな日が来るとは。こんな日を迎えられるとは思っていなかったので、喜びと驚きと身の引き締まる気持ちでいます」と抜てきに笑顔を見せた。

【写真】その他の写真を見る

　過去に出演した『とと姉ちゃん』（16年前期、第94作）を含め、朝ドラヒロインのオーディションはこれまでに3度受験。「オーディションの募集の年齢が私の年齢までだったので、これが最後のチャンスだなと思って」と挑戦した4度目で、ヒロインの座をつかんだ。そんな趣里は“新ヒロイン”でありながら、経験豊富な“表現者”である。

　趣里自身も、4歳からクラシックバレエに励み、高校生のときには単身でイギリスに留学。「バレリーナになることしか考えていなかった」と語るほど熱中し、表現力を磨いた。しかし、足首の剥離骨折とアキレス腱断裂という大きなケガを理由にバレリーナの夢は断念し、帰国。「大学受験をしようと思って高卒認定を取ったり、自分は何になるんだろう、自分とは何なんだろうみたいなことを感じていた」という苦しい日々を過ごした。

　そんな中、岩松了氏の舞台を見て「自分が経験してきたバレエでの大変だったことを演劇の世界で忘れられた瞬間を初めて知った。感動して帰る道が輝いて見えた」と感銘を受けたという。「自分も表現をして楽しんでもらうという夢をあきらめなくていいのかなと感じた瞬間でした」と振り返り、バレエで培った表現力を生かし、“俳優”の道に進むきっかけとなった。

　「エンタテインメントの持つ力に何度も救われてきた経験があります」と自身の過去を振り返った趣里は、「朝ドラの持つたくさんの方々を笑顔にして、前向きな気持ちにしてくれて、生活に彩を添える朝ドラに強い憧れを持っていました」と朝ドラへの思い入れも人一倍。「（同作のモデルとなる）シヅ子さんは、ステージの上でもエネルギーを私たちに届けてくれて、笑顔の裏にはいろいろなことを乗り越えてステージに立ってらっしゃるので、そのふり幅の明るさを経験と重ねて演じていけたらと思います」と力を込めた。

　さらに、父・水谷豊と母で元・キャンディーズの伊藤蘭は、ともに『NHK紅白歌合戦』出場経験があり、歌の素質にも期待が高まる。「歌、踊り、芝居と大変になると思う」としつつ「けいこを重ねてこれまでのすべてをかけて全力で向き合って、感謝の気持ちを忘れずに恩返しできるように、見てくださる皆さまに、心がブギウギ、ズキズキ、ワクワクしていただける作品が届けられるように全身全霊で頑張ります」と力を込めた。

　趣里が演じるヒロイン・鈴子は、香川生まれ大阪育ち。趣里は、「まずは基本的な大阪弁の勉強を来月辺りから始めたい」とバレエで培った持ち前のストイックさを見せた。さらに、「好きな大阪弁は？」という報道陣の問いかけには、「なんでやねん！」と即座に対応。「イメージ的に怖い、暗いと思われがちですが、どちらかと言うと明るい方なので、意外とノリツッコミもいけます」と“ブギの女王”の素質を見せた。

　同作は、戦後の大スター・笠置シヅ子さんをモデルとしたヒロイン・鈴子の物語。鈴子が、明るい笑顔とまっすぐな心で歌手の道を突き進み日本中に元気を届ける。音楽は「東京ブギウギ」を作曲した服部良一さんの孫・服部隆之氏が担当する。

　タイトルにある『ブギウギ』とは、陽気で踊り出したくなるような音楽リズムの一種で、多くの人を明るく元気にしたいという思いを込められている。鈴子は、香川生まれの大阪育ち。銭湯の看板娘から、“ブギの女王”と呼ばれる戦後の大スター歌手となっていく。大阪の華やかなステージ、生まれ故郷・香川への思い、そして夢を追いかけ東京へ。さまざまな舞台が作品を彩り、今作は「これまでの朝ドラにはないほどの歌と踊り」が出てくる。

　趣里は、主演映画『生きてるだけで、愛。』で第42回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。今年は、映画『ホリックxxxHOLiC』、『流浪の月』『もっと超越した所へ。』、ドラマ『DCU〜手錠を持ったダイバー』（TBS）などに出演している。