ORICON NEWS
松本潤『99.9』完全新作SPドラマで見せた安定感とさまざまな化学反応
刑事専門の弁護士が主人公の『99.9-刑事専門弁護士-』（TBS系）は、99.9％有罪と見なされた案件でも残された0.1％の事実を自身が納得するまでとことん追求する、型破りな弁護士・深山大翔（松本潤）の奮闘を描いたドラマだ。
2016年4月期の日曜劇場で「SEASON I」が放送され、謎解きの楽しさはもとより、個性豊かなキャストたちのチグハグだがユーモラスな掛け合いや、各シーンに盛り込まれた尋常ではない数の小ネタの話題も相まって、一気に視聴者の心をつかみ高視聴率を記録した。続編を望む声に押され、「SEASON II」が放送されたのは2年後の18年1月期。その当時、TBSの連続ドラマでシリーズ化されたのは、日曜劇場『JIN-仁-』（09年10月期、11年4月期放送）以来6年ぶり、日曜劇場では2作品目という異例の出来事だったことからも、いかに大きな支持を集めていたかがわかるというものだ。
■人気シリーズが復活 今回の戦いの相手は同業の弁護士
その人気作がスペシャルドラマとして復活した。21年12月29日に放送された『完全新作SP新たな出会い篇』では、深山をはじめ、その上司の弁護士・佐田篤弘（香川照之）、パラリーガルの明石達也（片桐仁）や藤野宏樹（マギー）、中塚美麗（馬場園梓）ら、おなじみの斑目法律事務所の面々はもちろん健在。そこに、“新たな出会い”と謳われている通り、三代目ヒロインとして、司法修習を終えたばかりの新米弁護士・河野穂乃果（杉咲花）が加わっている。
これまで事件を通して、検察官や裁判官と丁々発止の戦いを繰り広げてきた深山だが、今回の相手はなんと同業の弁護士・南雲恭平（西島秀俊）。南雲は政治家の収賄疑惑を巡り、検察も抱き込んで暗躍するダークな役どころ。テンポ感あるコミカルなシーンと、シリアスなシーンの緩急の付け方が魅力のシリーズだが、この両者の裏のかき合い、駆け引きのスリリングさが、物語にいっそう深みを持たせていた。
『99.9』の登場人物のキャラクターは実にクセが強く、変わり者揃い。その筆頭にくるのが主人公の深山だ。とにかく協調性が低くマイペース。そんな弁護士が“型破り”という誉め言葉で称されるのは、「事実を知る」ために突き進んでいく姿勢にあるのではないだろうか。彼は決して、特殊な才能を有しているわけでも、ズバ抜けた身体能力があるわけでもない。持ち合わせているのは、真実を知りたいという思いだ。ただ、この思いが他の誰よりも強い。自身が納得するまで、あきらめることなくとことん事件に向かい合う姿には、どこか“執着”めいたものすら感じさせる。
おそらくこれが深山という弁護士の秀でた才能なのだ。こう書くと、ずいぶん泥臭いキャラクターのようにも感じられるが、そういう印象を視聴者に与えないのが、松本演じる深山のひょうひょうとした佇まいだ。それが物語に軽やかさを与えている。
■コメディエンヌとしての才能の片りんを見せた新ヒロイン役の杉咲花
今回、そんな深山に絡むのは、歴代ヒロインでもっとも奇天烈なキャラクターとも思える新米弁護士・河野穂乃果だ。歴代の相棒となる弁護士には、プロレス好きな立花彩乃（榮倉奈々）、腹話術が得意な尾崎舞子（木村文乃）が登場してきた。2人ともになかなかにクセのあるキャラクターなのだが、その部分は物語が進むとともに徐々にあぶり出されてきた。しかし、今シリーズのヒロインは最初から全開なのだ。
冒頭の事件で、深山に感銘を受けた彼女は、いきなり弟子入りを志願する。師匠を真似て、毎日同じ服装（10着所持）で出勤。繰り出すオヤジギャグにもいちいち反応して、特徴的な笑い声をあげ、書き留める。愛読書はマンガ『ロボット弁護士B』。度々そのセリフやポーズでキメようと試みるという、なかなかのハイテンションぶりを見せる。
ともすれば嫌味にもとられてしまいそうなキャラクターだが、どこか可愛らしさを感じてしまうのは、演じる杉咲の持つ空気感が為せるわざだろう。これまで見たこともない表情や演技で新鮮な魅力を発揮して、コメディエンヌとしての才能の片りんをのぞかせている。
それにしても、これまで、歴代ヒロインをはじめ周囲にたしなめられてばかりの深山だったが、今回は、『ロボット弁護士B』のモノマネをする穂乃果をたしなめるという、意外なシーンも楽しめた。マイペース深山であっても、Z世代には若干振り回されてしまったということだろうか。
変わらない深山のスタンス、登場人物たちのコミカルなやりとり、テンポ良く進んでいく展開に、気づいたら引き込まれてしまっている「99.9ワールド」の安定感はそのままに、新たなキャストによって、さまざまな化学反応も起きている本ドラマ。大ヒットした映画『99.9-刑事専門弁護士- THE MOVIE』につながる重要な1作としても見逃せない作品であることは言うまでもない。
文・カツラギヒロコ
Blu-ray Disc＆DVD『99.9 －刑事専門弁護士－ 完全新作SP 新たな出会い篇』
■発売日：2022年5月11日（水）
■価格：Blu-ray Disc： 6,380円（税込）／DVD：5,280円（税込）
■仕様： Blu-ray Disc＆DVD共通 2021年／日本／カラー／本編118分＋特典映像34分／1枚組
■製作著作・発売元：TBS
■発売協力：TBSグロウディア
■販売元：TCエンタテインメント
■キャスト：
松本 潤／香川照之／杉咲 花／片桐 仁／マギー／馬場園梓／馬場 徹／映美くらら／ 池田貴史／岸井ゆきの／畑 芽育 西島秀俊／蒔田 彩珠 藤本隆宏／渡辺真起子／石橋蓮司／岸部一徳
■スタッフ：
主題歌：嵐「Daylight」（ジェイ・ストーム）
脚本：三浦駿斗／トリック監修：蒔田光治／音楽：井筒昭雄／企画：瀬戸口克陽／プロデュース：東仲恵吾／演出：木村ひさし
★YouTube公式チャンネル「ORICON NEWS」
2016年4月期の日曜劇場で「SEASON I」が放送され、謎解きの楽しさはもとより、個性豊かなキャストたちのチグハグだがユーモラスな掛け合いや、各シーンに盛り込まれた尋常ではない数の小ネタの話題も相まって、一気に視聴者の心をつかみ高視聴率を記録した。続編を望む声に押され、「SEASON II」が放送されたのは2年後の18年1月期。その当時、TBSの連続ドラマでシリーズ化されたのは、日曜劇場『JIN-仁-』（09年10月期、11年4月期放送）以来6年ぶり、日曜劇場では2作品目という異例の出来事だったことからも、いかに大きな支持を集めていたかがわかるというものだ。
■人気シリーズが復活 今回の戦いの相手は同業の弁護士
その人気作がスペシャルドラマとして復活した。21年12月29日に放送された『完全新作SP新たな出会い篇』では、深山をはじめ、その上司の弁護士・佐田篤弘（香川照之）、パラリーガルの明石達也（片桐仁）や藤野宏樹（マギー）、中塚美麗（馬場園梓）ら、おなじみの斑目法律事務所の面々はもちろん健在。そこに、“新たな出会い”と謳われている通り、三代目ヒロインとして、司法修習を終えたばかりの新米弁護士・河野穂乃果（杉咲花）が加わっている。
これまで事件を通して、検察官や裁判官と丁々発止の戦いを繰り広げてきた深山だが、今回の相手はなんと同業の弁護士・南雲恭平（西島秀俊）。南雲は政治家の収賄疑惑を巡り、検察も抱き込んで暗躍するダークな役どころ。テンポ感あるコミカルなシーンと、シリアスなシーンの緩急の付け方が魅力のシリーズだが、この両者の裏のかき合い、駆け引きのスリリングさが、物語にいっそう深みを持たせていた。
『99.9』の登場人物のキャラクターは実にクセが強く、変わり者揃い。その筆頭にくるのが主人公の深山だ。とにかく協調性が低くマイペース。そんな弁護士が“型破り”という誉め言葉で称されるのは、「事実を知る」ために突き進んでいく姿勢にあるのではないだろうか。彼は決して、特殊な才能を有しているわけでも、ズバ抜けた身体能力があるわけでもない。持ち合わせているのは、真実を知りたいという思いだ。ただ、この思いが他の誰よりも強い。自身が納得するまで、あきらめることなくとことん事件に向かい合う姿には、どこか“執着”めいたものすら感じさせる。
おそらくこれが深山という弁護士の秀でた才能なのだ。こう書くと、ずいぶん泥臭いキャラクターのようにも感じられるが、そういう印象を視聴者に与えないのが、松本演じる深山のひょうひょうとした佇まいだ。それが物語に軽やかさを与えている。
■コメディエンヌとしての才能の片りんを見せた新ヒロイン役の杉咲花
今回、そんな深山に絡むのは、歴代ヒロインでもっとも奇天烈なキャラクターとも思える新米弁護士・河野穂乃果だ。歴代の相棒となる弁護士には、プロレス好きな立花彩乃（榮倉奈々）、腹話術が得意な尾崎舞子（木村文乃）が登場してきた。2人ともになかなかにクセのあるキャラクターなのだが、その部分は物語が進むとともに徐々にあぶり出されてきた。しかし、今シリーズのヒロインは最初から全開なのだ。
冒頭の事件で、深山に感銘を受けた彼女は、いきなり弟子入りを志願する。師匠を真似て、毎日同じ服装（10着所持）で出勤。繰り出すオヤジギャグにもいちいち反応して、特徴的な笑い声をあげ、書き留める。愛読書はマンガ『ロボット弁護士B』。度々そのセリフやポーズでキメようと試みるという、なかなかのハイテンションぶりを見せる。
ともすれば嫌味にもとられてしまいそうなキャラクターだが、どこか可愛らしさを感じてしまうのは、演じる杉咲の持つ空気感が為せるわざだろう。これまで見たこともない表情や演技で新鮮な魅力を発揮して、コメディエンヌとしての才能の片りんをのぞかせている。
それにしても、これまで、歴代ヒロインをはじめ周囲にたしなめられてばかりの深山だったが、今回は、『ロボット弁護士B』のモノマネをする穂乃果をたしなめるという、意外なシーンも楽しめた。マイペース深山であっても、Z世代には若干振り回されてしまったということだろうか。
変わらない深山のスタンス、登場人物たちのコミカルなやりとり、テンポ良く進んでいく展開に、気づいたら引き込まれてしまっている「99.9ワールド」の安定感はそのままに、新たなキャストによって、さまざまな化学反応も起きている本ドラマ。大ヒットした映画『99.9-刑事専門弁護士- THE MOVIE』につながる重要な1作としても見逃せない作品であることは言うまでもない。
文・カツラギヒロコ
Blu-ray Disc＆DVD『99.9 －刑事専門弁護士－ 完全新作SP 新たな出会い篇』
■発売日：2022年5月11日（水）
■価格：Blu-ray Disc： 6,380円（税込）／DVD：5,280円（税込）
■仕様： Blu-ray Disc＆DVD共通 2021年／日本／カラー／本編118分＋特典映像34分／1枚組
■製作著作・発売元：TBS
■発売協力：TBSグロウディア
■販売元：TCエンタテインメント
■キャスト：
松本 潤／香川照之／杉咲 花／片桐 仁／マギー／馬場園梓／馬場 徹／映美くらら／ 池田貴史／岸井ゆきの／畑 芽育 西島秀俊／蒔田 彩珠 藤本隆宏／渡辺真起子／石橋蓮司／岸部一徳
■スタッフ：
主題歌：嵐「Daylight」（ジェイ・ストーム）
脚本：三浦駿斗／トリック監修：蒔田光治／音楽：井筒昭雄／企画：瀬戸口克陽／プロデュース：東仲恵吾／演出：木村ひさし
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2022/05/11
