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湯浅政明監督、フランスの「漫画祭」に登壇 新作『犬王』初上映&アート展も

 湯浅政明監督による劇場アニメーション『犬王』(5月28日公開)が、フランスで開催された「第49回アングレーム国際漫画祭」にて日本の作品として初めてプレミア上映(アート展も併催)され、湯浅監督が登壇するトークイベントが行われた。現地レポートが到着した。

湯浅政明監督による劇場アニメーション『犬王』(5月28日公開)が初上映された「第49回アングレーム国際漫画祭」の模様

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 1974年に始まり、フランス最古の漫画関連イベントとして“漫画界におけるカンヌ”とも評される「第49回アングレーム国際漫画祭」(現地時間3月17日〜20日)。現地時間18日、Cinema CGRにて『犬王』プレミア上映が実施され、約400人(超満員)の観客を前にフランスで初めて本作が上映された。作中で犬王や友魚を囲む民衆のように曲に合わせて手拍子や足でリズムをとっている観客も見られ、上映終了と共に大きな拍手が巻き起こった。

 湯浅監督が登壇するQ&Aイベントでは、本編を見終わったばかり観客から続々と質問の手が挙がる。『犬王』は室町時代の設定でありながら音楽にロックやヒップホップなど現代の音楽を使ったことについての質問に、「当時の人たちがびっくりしたであろう音楽を鳴らしたという設定で、もっと極端に変わった曲を設定することが必要でした」と湯浅監督。

 特に室町時代の資料があまりないために時代背景がわかりづらかったという苦労も語りつつ、「何万人の人が何百年、何千年といたら、ヒップホップやロックのようなことも誰かがやったはずだと僕は思います。今自分たちが知っている歴史の中に、いろんなことがあったかもしれないという可能性をもっていろんなダンスを入れています」と時代にとらわれない発想で現代の音楽を取り入れたことを明かしていた。

上映後のQ&Aに登壇した湯浅政明監督(中央)

上映後のQ&Aに登壇した湯浅政明監督(中央)

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 特に影響を受けた音楽を問われると、「人々が新しい音楽を聴いて熱狂するところはビートルズが出てきた時の印象を参考にしました。また、今回は音楽よりも先にムービーが必要だったので、自分の好きな曲をイメージしてムービーを作りました。ビートルズやクイーン、エルビス・プレスリー、ディープ・パープル、ジミ・ヘンドリックスなどイメージしたシーンもあり、そこに『犬王』の歌詞が歌われているイメージでムービーを作って、そのムービーに合わせて後から音楽をつけてもらっています」と、一体感のある映像と音楽の制作過程が明かされると、観客たちも納得の表情。

 さらに観客から、監督自身が犬王と友魚のどちらに似ているか聞かれると、湯浅監督は「どちらかというと友魚ですが、犬王みたいになりたいと憧れています」と笑顔を見せた。

■最近読んで面白かった漫画は「銀河の死なない子供たちへ」「タコピーの原罪」

併催されたアート展会場にて

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 現地時間19日には、Manga Cityにて開催されたトークイベント「マンガが動き出す時」に登壇した湯浅監督。会場はイベント開催前からすぐに満席になり、立ち見で参加する観客も出てくるほどの人気ぶり。約200人の観客を前に湯浅監督は、その熱気に押されつつ、『犬王』制作のきっかけを問われると、竹内(文恵)プロデューサーから小説を渡され、提案されたことを明かしつつ、「原作の小説のお話自体も面白かったのですが、古川さんが『平家物語 犬王の巻』の前に『平家物語』の現代語訳を書かれていたんです。源氏に負けて消えていった平家の話を、琵琶法師たちが伝えて現代に残っているのが『平家物語』。その、平家の話を伝えた琵琶法師や能楽師の話も歴史上消えていってしまった。これを古川さんが小説にして、我々がさらにアニメにするのが面白いと思ったんです」と答えた。

 フランスでも人気の高い「鉄コン筋クリート」、「Sunny」、「竹光侍」といった作品を手掛ける漫画家・松本大洋を起用したことについて「原作の表紙を描かれていたこともありますが、僕はいつも松本さんと仕事がしたいと思っていたんです」と監督からラブコールを送ったそう。その魅力を「『犬王』に必要な、リアルなテイストと存在感、人間の奥深い印象、伸びやかなフォルム、それでいてひょうきんな感じも混ぜて描いていただける松本さんのデザインが、作品にも、自分の感性にも合うと思いました」と語ると、フランスの熱いアニメ・漫画ファンたちは興奮の表情で聴き入っていた。

 一方で、本作で描かれる犬王と友魚の関係は湯浅監督と松本氏のようだと問われると「大きな意味では松本さんは同じ方向を向いていると感じていますが、僕は松本さんのことが大好きなのですごく緊張するんです。松本さんも気遣ってくれていました」と笑顔で語りつつ、「今後もっとガッツリと二人で作品を作れたらいいなと思います」と今後にも期待を持たせる発言も。

 トークイベントでは、湯浅監督が幼少期に少女漫画から影響を受けたという話や、最近読んだ漫画に「銀河の死なない子供たちへ」やフランスに来る飛行機内で読んだ「タコピーの原罪」が興味深かったという話も飛び出し、会場に詰め掛けたファンたちも大満足な様子だった。

トークイベント「マンガが動き出す時」会場の様子

トークイベント「マンガが動き出す時」会場の様子

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 「第49回アングレーム国際漫画祭」の開催期間中に、L’Alpha Mediathequeで実施されたアート展「湯浅政明&松本大洋 犬王のアート」ではフランスでも熱烈な支持を受ける松本による『犬王』キャラクターデザイン原画を世界で初めて展示。プレミア上映とアート展が併催されるのは、日本の作品で『犬王』が初めてとなり、展示3日間で約5000人の来場客が押し寄せ、その緻密な制作素材に魅入っていた。

 アート展には、そのほかにも湯浅監督自身が手掛けた設定画も展示されており、現地を訪れた湯浅監督が「キャラクター原案や設定画に加えて、松本大洋さんがたくさん描いてくださったイメージボードや、劇中でも参考にした薩摩琵琶の現物なども展示しており、フランスの皆さんにも『犬王』の世界を楽しんでいただけてとてもうれしいです」と話していた。

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  • 湯浅政明監督による劇場アニメーション『犬王』(5月28日公開)(C)2021 “INU-OH” Film Partners

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