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濱口竜介監督『ドライブ・マイ・カー』カンヌで脚本賞受賞 日本映画初の快挙

 新型コロナウイルスの影響で昨年は中止となり、約2年ぶりにフランスで開催された「第74回カンヌ国際映画祭」(6日〜17日)で、現地時間17日午後7時30分(日本時間18日午前2時30分)から授賞式が行われ、コンペティション部門に日本映画として唯一正式出品された濱口竜介監督の『ドライブ・マイ・カー』が脚本賞に輝いた。日本人・日本映画としてカンヌ史上初となる脚本賞が、濱口監督と共同脚本の大江崇允氏の二人に贈られた。

第74回カンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞した『ドライブ・マイ・カー』濱口竜介監督(C) Kazuko WAKAYAMA

第74回カンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞した『ドライブ・マイ・カー』濱口竜介監督(C) Kazuko WAKAYAMA

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 主演に西島秀俊を迎え、村上春樹の短編を映画化した本作。脚本賞は、コンペティション部門に出品された全24作のうち最も優れた脚本に贈られる賞で、レオス・カラックス、ウェス・アンダーソン、ポール・バーホーベン、フランソワ・オゾン、ジャック・オーディアール監督など世界的名匠たちの話題作を抑え、24作品の中から堂々の選出となった。

 『ドライブ・マイ・カー』は、授賞式に先駆けて発表された同映画祭の独立賞である国際映画批評家連盟賞、AFCAE賞、エキュメニカル審査員賞を受賞しており、脚本賞を合わせて計4つの受賞はカンヌ史上初。

 今回の受賞を受け、濱口監督は「最初にお礼を申し上げなくてはならないのは、この物語を我々に与えてくれた原作者の村上春樹さん。そして、役者のみなさんが、この物語を自分の身体で素晴らしく表現してくれた」と喜びのコメントを発表。また、共同脚本の大江氏からも受賞を受けてコメントが到着。大江氏は、脚本のアイデアを生み出すだけでなく、撮影時の前半部では監督補としても参加。演劇パートのリアリティを濱口監督と共に突き詰めていった。

 また主演の西島秀俊からは「世界の人々の共感を呼んだのは本当に素晴らしい事」と祝福のコメントも到着。共演の三浦透子岡田将生霧島れいかからも歓喜のコメントが到着した。カンヌを熱狂させた『ドライブ・マイ・カー』の日本公開は、8月20日となる。

 濱口監督作品としては、商業デビュー作『寝ても覚めても』が2018年に同映画祭コンペティション部門に出品されており、今回、2作品連続・3年ぶりの出品にして見事、脚本賞受賞の快挙を果たした。さらにこれまで濱口監督は、第71回ベルリン国際映画祭で短編集『偶然と想像』が審査員グランプリ(銀熊賞)を受賞。第77回ヴェネチア国際映画祭では共同脚本を務めた『スパイの妻<劇場版>』が銀獅子賞(監督賞)を受賞。そして今回のカンヌで歴史を塗り替える偉業を成し遂げ、三大映画祭を席巻。ますます世界的に注目を集めることになりそうだ。

■濱口竜介監督 授賞式スピーチ

 ありがとうございます。脚本賞、この物語に対していただいた賞ですが、最初にお礼を申し上げなくてはならないのは、この物語を我々に与えてくれた原作者の村上春樹さんです。

 共同脚本家の大江崇允さんという脚本家がいらっしゃいます。大江さんと僕の関係は奇妙なもので、大江さんは僕にひたすら書かせるタイプの脚本家です。大江さんはいつも読みながら「本当に素晴らしい。このままやりなさい」と彼がいつも言ってくれました。この作品は、3時間近くあり壮大な物語。単純にわかりやすさだけを考えたらそうはいかなかった。彼がずっと励まし続けてくれたから、この物語を最後まで映画として書ききることができたと思っています。

 脚本賞をいただいたが、脚本は映画には映っていない。それを素晴らしいと思っていただけたのは、表現する役者たちが本当に素晴らしかったと。役者たちこそが物語だという風に思っています。

 主演の西島秀俊さん、三浦透子さん、岡田将生さん、霧島れいかさん、パク・ユリムさん、ジン・デヨンさん、ソニア・ユアンさん、ペリー・ディゾンさん、アン・フィテさん、安部聡子さん、すべての出演者、役者のみなさんが、この物語を自分の身体で素晴らしく表現してくれた。もしよろしければ、海の向こうにいる役者、それを支えてくれたスタッフの皆さんに大きな拍手を送っていただけたらと思います。

■西島秀俊のコメント
 濱口監督、大江崇允さん、カンヌ国際映画祭脚本賞受賞、心からお祝い申し上げます。監督が村上春樹さんの原作を問いとし、過去と真摯に向き合う事で人は絶望から再生することが出来るという答えを示したこの作品が、世界の人々の共感を呼んだのは本当に素晴らしい事だと思います。監督の、人への深い洞察と愛情の力です。これからも沢山の傑作を作って下さい。楽しみにしています。おめでとうございます!

■三浦透子のコメント
 濱口監督、作品に関わった全ての皆さん、本当におめでとうございます。皆さんと仕事ができたこと、自信を持って届けられる作品が完成できたこと、カンヌ映画祭で上映できたこと、そしてこれから日本の皆さんに観ていただけること。もう十分嬉しいことばかりなのですが、やはり、こうして賞という形で評価をいただけることは、本当にありがたいです。みんなでお祝いできる時を楽しみにしています!

■岡田将生のコメント
 濱口監督、カンヌ国際映画祭脚本賞受賞、本当におめでとうございます。そしてこの作品に関わった皆さん、本当におめでとうございます。こんな幸せなことがあっていいんでしょうか。監督の作品の現場で過ごさせていただいた日々は宝物です。この映画が世界の方々に通じた事が何よりも幸せです。早くスタッフキャストとこの気持ちを分かち合いたいです。そして、日本の方々にもこの映画をスクリーンで是非観て頂きたいです。この映画は僕にとって本当に宝物です。

■霧島れいかのコメント
 私はこの作品を家族や親友のように大切に想っています。今回その作品が素晴らしい賞を頂けたこと、今、撮影当時のことを振り返りながら感動と感謝で胸がいっぱいです。濱口監督の作品に対する真っ直ぐな心と深い想いが伝わったカンヌでの上映後の拍手は忘れられません。この感動をキャストと関係者の方々と早く共有したいです! 濱口監督おめでとうございます!

■共同脚本・大江崇允氏のコメント
 19世紀末に誕生した『映画』という芸術は今後、何百年先にも残ることが確定したと僕は思っています。21世紀の文明が情報をアーカイブ化し、昨日生まれた映画の隣に色のない名作映画が並ぶ、なんてことが当たり前になりました。時間が失われた感覚すら覚えます。スマホの向こう側にあらゆるエンターテイメントが残り、遠い未来までなくなることはないでしょう。図書館の本棚のように綺麗に整った装いですが、しかし畑の作物のようにそれは同じ顔にも見えます。これが現実だと思います。困難な時代と取るか、新しい世界の種が撒かれたと受け止めるのか、それは自分次第だと思います。

 『ドライブ・マイ・カー』では、ゴドー(神)を待ちながら、同時にアーストロフのせりふのように、数百年後の未来へと奇跡に似た「祈り」を投げています。それが今の作家にできる、映画という可能性だと僕は考えています。そして、今映画を作ることは百年後にも残ることを想定しなければならないのではないのか、と身が引き締まる思いです。濱口竜介監督、山本晃久プロデューサー。お二人の素敵な企みの仲間になれたことを光栄に思います。ありがとうございました。

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