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日本の女性監督のパイオニア・田中絹代『月は上りぬ』カンヌクラシックスで上映

 日活製作、1955年劇場公開の田中絹代監督作品『月は上りぬ』(つきはのぼりぬ)4Kデジタル復元版が、第74回カンヌ国際映画祭(7月6日〜17日)クラシック部門(以下、カンヌクラシックス)で上映される。

1955年に公開された田中絹代監督(写真)『月は上りぬ』 4Kデジタル復元版、カンヌクラシックスで上映 (C)日活

1955年に公開された田中絹代監督(写真)『月は上りぬ』 4Kデジタル復元版、カンヌクラシックスで上映 (C)日活

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 カンヌクラシックスは、2004年に同映画祭の一部門として設立。文化遺産としての作品のショーケース、また過去の名作の再発見、修復された偉大な作品のお披露目などを目的としている。日本映画ではこれまでに、『乱』(黒澤明監督)、『雨月物語』(溝口健二監督)、『楢山節考』(今村昌平監督)、『東京物語』(小津安二郎監督)など、名だたる巨匠の作品が選出された。

 本年のカンヌクラシックスには、『黒いオルフェ』(1959年、マルセル・カミュ)、『神の道化師、フランチェスコ』(1950年、ロベルト・ロッセリーニ)、『ふたりのベロニカ』(1991年、クシシュトフ・キェシロフスキ )、『オーソン・ウェルズのフェイク』(1973年、オーソン・ウェルズ)、『マルホランド・ドライブ』(2001年、デイヴィッド・リンチ)など31作品が選出され、そのうち日本映画のクラシック作品としては本作と篠田正浩監督『夜叉ヶ池』(1979年)の2本。

 同部門における日活作品の選出は今回が初めてで、カンヌ国際映画祭は『月は上りぬ』の選出理由を「我々の大好きな日本映画のクラシック作品のエッセンスが凝縮されています。そして、画面からはこちらに訴えかけるものを感じました。人間の感情の機微や複雑さが、極めてシンプルな手法で、しかし独創的に、そして美しく繊細に包み込まれています」としている。

 『月は上りぬ』は、日本を代表する女優、田中絹代が手掛けた6本の監督作品の中の第2作。巨匠・小津安二郎と齋藤良輔の共同脚本を得て、晩秋の古都・奈良を舞台に、三姉妹の恋模様を女性ならではの視点で流麗に描いていた。田中自身も出演しているが、三姉妹の父を笠智衆が演じ、音楽を齋藤高順が手掛けるなど、小津組常連と言えるスタッフが田中の演出に彩りを添えている。

 田中絹代は日本映画史上2人目の女性映画監督(1人目は坂根田鶴子)にして、女優として日本で初めて映画監督を務めた人物でもある。今からおよそ70年前、女性が映画監督を務めること自体が極めて異例と言えた当時の日本で、女優業の傍ら映画監督の夢に挑戦し、日本における女性映画監督のパイオニアとなった。今回の選出は、映画監督としての田中絹代に改めてスポットがあたるきっかけになりそうだ。

関連写真

  • 1955年に公開された田中絹代監督(写真)『月は上りぬ』 4Kデジタル復元版、カンヌクラシックスで上映 (C)日活
  • 1955年公開、田中絹代監督『月は上りぬ』(C)日活
  • 『月は上りぬ』試写にて。(前列左から)北原三枝、小津安二郎、田中絹代、成瀬巳喜男 (C)日活

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