11月19日に発売した長編小説『オルタネート』(新潮社)が、第164回直木三十五賞」の候補作品に選出された人気グループ・NEWSの加藤シゲアキ(33)。候補選出を受け、都内で会見を開いた加藤は、2012年1月に『ピンクとグレー』で作家デビューしたが「ジャニーズ事務所だからデビュー作を書かせていただけた」と、ずっとどこかに“引け目”を感じていた胸の内を語ってくれた。
同作でデビューした加藤は、それ以降『閃光スクランブル』、『Burn.-バーン-』、『傘をもたない蟻たちは』、『チュベローズで待ってる(AGE22・AGE32)』とヒット作を生み出し続け、今年3月には初のエッセイ集『出来ることならスティードで』を刊行。新作の『オルタネート』では、「高校生の恋愛」と「マッチングアプリ」のかけ合わせに挑戦した。
「賞をとりたい気持ちはあったのか」と聞かれると「普通の作家だと新人賞を獲得してから作家デビュー。でも、自分はジャニーズ事務所のタレントという立場で本を出させていただけているということがあったので、引け目というか小説界にお邪魔している感覚がありました。作家と名乗っていいのかという迷いがずっとありました」と心境を吐露。そのような気持ちを持ち続けていた中での直木賞候補者となり「認めていただけたのかなと思います」と自信の芽生えも口にした。
“引け目”もあると認めた加藤。それでも小説を書き続けてきた源に「ファンの支え」と「書店員の支え」をあげた。「とくに書店員さんから『1作目は応援できるけど、書き続けないと応援を続けられない』と言われたことが印象的でした。本気で小説を書く覚悟を伝えるには、書き続けることが恩返しかなと。そうして、書くことがライフワークになり、当たり前の生活になっていきました」と文章を書くことが日々のルーティンになっていった。
加藤が書き続ける努力をしてきた結果、完成した本作は、高校生限定のマッチングアプリ「オルタネート」が必須のウェブサービスとなった現代が舞台。調理部部長で品行方正、しかし、あるトラウマから人付き合いにコンプレックスを抱える蓉(いるる)。母との軋轢(あつれき)を機に、絶対真実の愛を求め続けるオルタネート信奉者の凪津(なづ)。高校を中退し、かつてのバンド仲間の存在を求めて大阪から単身上京した尚志(なおし)。出会いと別れ、葛藤と挫折、そして苦悩の末、やがて訪れる「運命」の日。3人の未来が、人生が、加速する――。悩み、傷つきながら、〈私たち〉が「世界との距離をつかむまで」を端正かつエモーショナルに描かれている。
誹謗中傷が問題視されるSNSがテーマのひとつとなっているが、加藤自身も「小学生からジャニーズ事務所に所属して、誹謗中傷も含めていろんな言葉をいただきました。本のレビューを読んでも、100の好意見よりも、1の厳しい意見のほうが残ります。でも、人間はそういうものと感じていて。厳しい言葉がすべてに感じるけど、100分の1だよねと。それが人生のすべてにならないように距離感を持つことが大事で、今作でもSNSの闇にスポットは当てていません。出会いの中で人間が成長していくことがあると思うので」と、本作で訴えたいことはあくまで人と人のつながりの部分と力説。
加藤が小説を書くことで「若者が本を読む機会が減った」ことに風穴を開ける契機となりうることになると、報道陣からの言葉を受けると「初めて小説を書いたときから、そのことは思っています。本に触れなかった若い人たちが、本に触れる機会を作る責任を背負っているとは思います。ですが、不安かというとあまりありません。(直木賞を)受賞する自信はありませんが、ここまで続けてきた自信、作品に対しての自信はあります。本を読む前と後で、なにか景色が変わって見える作品になるよう心がけていました」と言葉を紡ぎ、会見を締めくくった。
「第164回芥川賞・直木賞」の選考会は来年1月20日午後3時から、東京・築地「新喜楽」で行われる。
■第164回直木三十五賞 候補作(出版社)※作者五十音順・敬称略
芦沢央『汚れた手をそこで拭かない』(文藝春秋)
伊与原新『八月の銀の雪』(新潮社)
加藤シゲアキ『オルタネート』(新潮社)
西條奈加『心淋し川』(集英社)
坂上泉『インビジブル』(文藝春秋)
長浦京『アンダードッグス』(KADOKAWA)
■第164回芥川龍之介賞 候補作(掲載誌)
宇佐見りん『推し、燃ゆ』(文藝秋季号)
尾崎世界観『母影』(新潮十二月号)
木崎みつ子『コンジュジ』(すばる十一月号)
砂川文次『小隊』(文學界九月号)
乗代雄介『旅する練習』(群像十二月号)
■選考委員
【直木賞】浅田次郎、伊集院静、角田光代、北方謙三、桐野夏生、高村薫、林真理子、三浦しをん、宮部みゆき
【芥川賞】小川洋子、奥泉光、川上弘美、島田雅彦、平野啓一郎、堀江敏幸、松浦寿輝、山田詠美、吉田修一
※五十音順・敬称略
同作でデビューした加藤は、それ以降『閃光スクランブル』、『Burn.-バーン-』、『傘をもたない蟻たちは』、『チュベローズで待ってる(AGE22・AGE32)』とヒット作を生み出し続け、今年3月には初のエッセイ集『出来ることならスティードで』を刊行。新作の『オルタネート』では、「高校生の恋愛」と「マッチングアプリ」のかけ合わせに挑戦した。
“引け目”もあると認めた加藤。それでも小説を書き続けてきた源に「ファンの支え」と「書店員の支え」をあげた。「とくに書店員さんから『1作目は応援できるけど、書き続けないと応援を続けられない』と言われたことが印象的でした。本気で小説を書く覚悟を伝えるには、書き続けることが恩返しかなと。そうして、書くことがライフワークになり、当たり前の生活になっていきました」と文章を書くことが日々のルーティンになっていった。
加藤が書き続ける努力をしてきた結果、完成した本作は、高校生限定のマッチングアプリ「オルタネート」が必須のウェブサービスとなった現代が舞台。調理部部長で品行方正、しかし、あるトラウマから人付き合いにコンプレックスを抱える蓉(いるる)。母との軋轢(あつれき)を機に、絶対真実の愛を求め続けるオルタネート信奉者の凪津(なづ)。高校を中退し、かつてのバンド仲間の存在を求めて大阪から単身上京した尚志(なおし)。出会いと別れ、葛藤と挫折、そして苦悩の末、やがて訪れる「運命」の日。3人の未来が、人生が、加速する――。悩み、傷つきながら、〈私たち〉が「世界との距離をつかむまで」を端正かつエモーショナルに描かれている。
誹謗中傷が問題視されるSNSがテーマのひとつとなっているが、加藤自身も「小学生からジャニーズ事務所に所属して、誹謗中傷も含めていろんな言葉をいただきました。本のレビューを読んでも、100の好意見よりも、1の厳しい意見のほうが残ります。でも、人間はそういうものと感じていて。厳しい言葉がすべてに感じるけど、100分の1だよねと。それが人生のすべてにならないように距離感を持つことが大事で、今作でもSNSの闇にスポットは当てていません。出会いの中で人間が成長していくことがあると思うので」と、本作で訴えたいことはあくまで人と人のつながりの部分と力説。
加藤が小説を書くことで「若者が本を読む機会が減った」ことに風穴を開ける契機となりうることになると、報道陣からの言葉を受けると「初めて小説を書いたときから、そのことは思っています。本に触れなかった若い人たちが、本に触れる機会を作る責任を背負っているとは思います。ですが、不安かというとあまりありません。(直木賞を)受賞する自信はありませんが、ここまで続けてきた自信、作品に対しての自信はあります。本を読む前と後で、なにか景色が変わって見える作品になるよう心がけていました」と言葉を紡ぎ、会見を締めくくった。
「第164回芥川賞・直木賞」の選考会は来年1月20日午後3時から、東京・築地「新喜楽」で行われる。
■第164回直木三十五賞 候補作(出版社)※作者五十音順・敬称略
芦沢央『汚れた手をそこで拭かない』(文藝春秋)
伊与原新『八月の銀の雪』(新潮社)
加藤シゲアキ『オルタネート』(新潮社)
西條奈加『心淋し川』(集英社)
坂上泉『インビジブル』(文藝春秋)
長浦京『アンダードッグス』(KADOKAWA)
■第164回芥川龍之介賞 候補作(掲載誌)
宇佐見りん『推し、燃ゆ』(文藝秋季号)
尾崎世界観『母影』(新潮十二月号)
木崎みつ子『コンジュジ』(すばる十一月号)
砂川文次『小隊』(文學界九月号)
乗代雄介『旅する練習』(群像十二月号)
■選考委員
【直木賞】浅田次郎、伊集院静、角田光代、北方謙三、桐野夏生、高村薫、林真理子、三浦しをん、宮部みゆき
【芥川賞】小川洋子、奥泉光、川上弘美、島田雅彦、平野啓一郎、堀江敏幸、松浦寿輝、山田詠美、吉田修一
※五十音順・敬称略
2020/12/18