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Netflixから世界の映像作家へ ゴール実現のための“健全な労働環境”

■「Film makers(映画と人 これまで、そして、これから)」第25回 Netflixコンテンツ・アクイジション部門ディレクター・坂本和隆

 世界最大級のオンラインストリーミングサービスとして2015年9月、日本における映像配信サービスを開始したNetflix。あれから4年経ったNetflixは、日本の映像業界にどんな影響を及ぼし、どんな野望を抱いているのか。実写オリジナル作品の制作に携わるコンテンツ・アクイジション部門ディレクターの坂本和隆氏に話を聞いた。

■最大のパフォーマンスを出せる労働環境

 「ストレンジャー・シングス 未知の世界」や「ハウス・オブ・カード 野望の階段」らの海外オリジナルシリーズや、山田孝之主演で、AV業界に革命を起こした伝説の風雲児・村西とおるの人生を描いたオリジナルシリーズ『全裸監督』をはじめ、待機作品として園子温監督の映画『愛なき森で叫べ』、蜷川実花監督のシリーズ『FOLLOWERS』など日本作品も充実したラインナップのNetflix。

 どの作品も斬新な企画力はもちろんだが、作り込まれた映像、さらに続きをすぐに鑑賞したくなるようなストーリーラインなど非常に質も高い。「全裸監督」の総監督を務めた武正晴は、Netflixオリジナル作品祭で、美術、衣装、音楽、セット、脚本に至るまで、ありとあらゆる作業に手間と時間をかけていることに感銘を受けたと話していたが、Netflixの制作現場を経験した人からは、同じような声を聞くことが多い。

 坂本氏は「我々がオリジナルシリーズと呼んでいる作品群は、撮影前に脚本を全話揃え、撮影にも準備期間をしっかり設けています。さらに、クリエイターが、最大のパフォーマンスを出せるような健全な労働環境にも気を配っています」と語る。
 
■Netflixは面白い企画なら経験・実績は問わない 

 クリエイターにとっては理想的な環境に思われるが、実際に作品を制作し、費用を回収する立場から考えると、脚本開発の工数や、撮影日数が増えれば増えるほど予算は膨らむため、どうしてもリクープを考えると、スケジュールや労働環境は過酷になる。特に国内のみが市場になる場合は、よりそれは顕著になる。

 しかしNetflixの市場は世界である。オリジナルコンテンツは190ヶ国以上へと配信される。最初からワールドワイドな視野で制作体制がとられることなどから「予算に対してもより大きなものが提示できるんです」と坂本氏は語る。
 
 その意味で、門戸も広く開放している。「常に面白い発想を持つ方、才能のある方を探しています。そこには経験、年齢は問いません。もちろん実績のある方も大歓迎ですが、ニューカマーでも、名前や経験がないからと言ってNOという発想ではないのです。いま日本でも非常に人気の高い『ストレンジャー・シングス 未知の世界』を生み出したダファー兄弟も、決して有名クリエイターとして活躍していた人ではなかったですから」。

 では、Netflixはどんな企画を求めているのだろうか。坂本氏は以前、世界が市場であるがゆえに、誰にでも共感が得られる「時代性」と「普遍性」の大切さを説いていたが、そのなかで「まずは自国のマーケットできっちり面白いと思ってもらえるかどうかが前提です。それにプラスアルファ、どこまで世界に広がるか。我々のなかで一番良くないとされているのが社内で“ミックススープ”とも呼ばれている、どこの国の視聴者にも引っかからない企画です」と説く。

 さらに坂本氏は、Netflixの特徴として「グローバルな制作チームがあること」を挙げると「例えば自国で面白いと思うものでも『よその国の風土にはどうなんだろう』と感じる企画もあると思います。そういうとがった企画を地域をまたいでシェアしたり、議論できるところに、Netflixの風通しの良さを感じます」と魅力を述べる。

■東京国際映画祭でもNetflix映画3作品が劇場上映

 一方で、カンヌ国際映画祭では「フランスで劇場公開しない作品は、コンペティション部門への参加が認められない」と事実上、Netflixオリジナル映画に対してコンペ参加を認めない方針を打ち出すなど、既存のメディアとの関係性も取り沙汰されることがある。坂本氏は「こちら側が既存の映像業界を変革しようとか、そんな大それた思いは全くないんです。テレビにはテレビの面白さがあるし、映画には映画の魅力があります。我々は常に共存していく方法を模索しています」と胸の内を明かす。

 日本で行われている東京国際映画祭では、昨年、第91回アカデミー賞外国語映画賞を受賞するなど高い評価を得たアルフォンソ・キュアロン監督の『ROMA/ローマ』が、今年もリドリー・スコットが製作総指揮を務める『アースクエイクバード』と、クロージング作品として、マーティン・スコセッシ監督とロバート・デ・ニーロが9度目のタッグを組む『アイリッシュマン』が、特別招待作品として劇場上映される。
 
 「新しいメディアであるがゆえに、捉え方は人それぞれだと思いますが、我々としては『ROMA/ローマ』を含めて、こうして歴史ある映画祭で取り上げていただけることは、ものすごくうれしいことです。アメリカもそうですが、大きな映画スタジオでは通りづらい企画にも、Netflixが挑戦していくことで、映像業界全体が活性化していけば、それはすごく意義のあることなのかなと思っています。こちらも、既存の概念にとらわれることなく、しっかりと企画をキャッチアップしていかなければなりません」。

■ここ3〜4年でNetflixからブレイクする映像作家が激増!?

 キャリア・実績を問わず「面白い」と思ったものなら、バジェットをしっかりかけて勝負ができる――。クリエイターにとっては非常に大きな魅力だ。坂本氏も世界にリーチしているという部分を強調する。
 
 「例えば日本の映画の場合、世界に出るとき、配給権を世界に売っていく作業が必要になります。ビジネスとして面白い部分でもありますが、煩雑になったり、手間が掛かったりすることもある。それがNetflixでは、一発で全世界配信ができます。予期せぬ人の目に触れるケースもあります。実際僕が関わった作品のなかにも、ハリウッドのエージェントから問い合わせがあったり、出演している俳優への照会が来たりもするんです。才能が海を越えていく可能性が、ここ3〜4年で一気に加速すると思います」。
 
 Netflixが才能を見出し、その人たちが世界に羽ばたいていく――。「究極のゴールはそこかもしれませんね」と坂本氏が呟いた言葉こそ“映像界の黒船”の最大のミッションなのかもしれない。(取材・文・撮影:磯部正和)

関連写真

  • Netflixオリジナルシリーズ『全裸監督』全世界独占配信中
  • 坂本和隆氏 (C)ORICON NewS inc.
  • 坂本和隆氏 (C)ORICON NewS inc.

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