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海外古典のドラマ化、成功のカギは配役 『シャーロック』P語るディーンの俳優力「無国籍感はとても貴重」

 秋のフジテレビ系“月9ドラマ”は、世界的ミステリー小説『シャーロック・ホームズ』を原作にしたディーン・フジオカ主演の『シャーロック』。五輪・パラ五輪開催を翌年に控え活気に沸く東京を舞台に、“現代日本版シャーロック・ホームズ”を送る。プロデュースを手がけるのは、『モンテ・クリスト伯 ―華麗なる復讐―』(18年4月期)、『レ・ミゼラブル 終わりなき旅路』(19年1月放送)と、昨年から今年にかけて古典原作を現代日本版に昇華させてきた太田大氏。7日に放送された第1話も、平均視聴率12.8%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録し、月9としては6期連続の2ケタ発進と好スタートを切った。太田氏に“古典の現代化”成功のカギについて。また、前2作を共に成功に導いてきた主演・ディーンの“俳優力”について聞く。

“シャーロック”こと誉 獅子雄を好演中のディーン・フジオカ

“シャーロック”こと誉 獅子雄を好演中のディーン・フジオカ

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◆ドラマは古典名作から“学ぶ”ことがある

 原作となる『シャーロック・ホームズ』シリーズは、名探偵のシャーロック・ホームズと医師のジョン・H・ワトソンがバディを組んで難事件を解決していく世界的ミステリーの傑作。本ドラマでは、令和の東京を舞台にスリリングかつ痛快なテイストで映像化。アーサー・コナン・ドイルが生んだ原作の魅力をそのままに、“最強バディ”が数々の難事件に立ち向かう。世界的な名作の実写化は、あらかじめ知名度があるというアドバンテージを持つ一方、「原作を超えられるか?」というプレッシャーも伴う。ましてや、設定を現代日本に置き換えて放送するケースは、少しでもバランス感を間違えば批判が集中する恐れもある。太田氏はなぜ今、立て続けに古典の現代化にチャレンジしているのか?

「世界的名作の古典からは、ドラマ作りをするうえで学ぶ要素がたくさんあります。もちろん『シャーロック〜』も、ストーリーテーリングといいトリックといい、最高傑作ですから、そこから学ぶというスタンスで挑んでいます。ただし、『シャーロック〜』に関しては、ホームズとワトソンらの“人間関係”は現代に置き換えることができても、携帯電話の普及など時代背景が大きく異なるため“事件やトリック”を置き換えることは難しい。頭を悩ませていた時、脚本を手がける井上由美子さんからアイデアをいただきました。『シャーロック〜』の原作には、過去にホームズが解決したとされる事件が概略のみや名前だけが出てくるものがあります。どんな事件だったのかは、作品内では明かされていません。これに関しては後世の作家や、シャーロキアンと呼ばれる同作の熱狂的なファンがそれぞれの解釈で解説しています。そこで、我々はその最新の末席に身を置こう、と。それがアーサー・コナン・ドイルとドラマとの接地点となりました」

◆ディーン・フジオカ自体が“企画意図”そのもの?

 古典名作の映像化に際して今回も主役を演じるディーン・フジオカは、その存在そのものが“企画意図”であると太田氏は話す。

「ディーンさんは、日本で活動されている俳優さんのなかでもルーツを感じさせない“無国籍感”があります。ディーンさんのほかに海外の古典原作の映像化を真ん中で務めることができる人は、いないのではないでしょうか。もちろん、舞台などでは海外の古典名作が上演されています。ですが民放ドラマは1話1時間で、しかも間にCMが。テレビをつけてパッと画面を見た瞬間に、物語の世界にスッと入っていただきたいとなると、ディーンさんの良い意味での“得体のしれなさ”はとても貴重なのです。身近すぎない、そして見ていてどこか不安を感じさせるミステリアスな雰囲気。本作もディーンさんがいなければ具現化できないと思いました」

 そんなディーンだが、ディーン自体は非常に身近でフランクな人柄だと解説する。

「クリエイティブ思考の方で、ディーンさんとさまざまなことを話しながら私もプロットを作っていっています。例えば、私が企画意図の段階で“『シャーロック〜』のロンドンの地の利感を、東京で再現したい”と伝えたら、ある日、池袋に連れて行ってくれたのです。そこは、日本人がいないチャイナタウンのような独特な裏通りでした。ディーンさんは海外でも活躍、お住まいになっていることもあって、おそらくディーンさんから見た東京は、彼にしか見えない独特の第三者目線が入っているのではないかと思いました。そのディーンさんの感覚は、この作品の雰囲気に如実に表れていると思います」

 シャーロックの相棒、“ワトソン=若宮潤一”役には岩田剛典を起用。そのほか、山田真歩ゆうたろう佐々木蔵之介らをキャスティングしている。

「岩田さんはクールでスマートだけど、熱いものも秘めていてピカイチな俳優さん。ディーンさんととても良いハーモニーを奏でていて、現場では“ディーンさん”、“がんちゃん”と呼び合っています。西谷監督が言うには岩田さんはすごく頑張り屋で真面目で頭脳明晰。そして、やると決めたらやるという男気があります。そんなピッタリなバディに加え、佐々木蔵之介さんという方の存在。皆のお兄さんとして精神的主柱となっていて、ベストなキャスティングになったと自負しております」

◆月9ドラマの現在地、『シャーロック』は過去と今が混在

 ここ最近の月9は、4月期の『ラジエーションハウス〜放射線科の診断レポート〜』、7月期の『監察医 朝顔』と2作続けて、視聴率、満足度ともに高い評価を得ている。数年前に比べ、主演の年齢が全体的に少し上がり、視聴者のターゲット層も引き上げられているのではという印象だが、今回「ディーン×月9」という組み合わせで、どのように月9ブランドを作り上げていくのか?

「まず、月9という枠をまた多くの方々に注目していただけている状況はとても喜ばしいことです。個人的には、(前述の番組が)視聴者のターゲット層を上げた作りにしていたかどうか、だから人気を集めていたのかということは一概に言えません。おそらく、結果論なのでしょうね。例えば、『〜朝顔』にしても今の時代のトレンドを読むというよりも、社会が必要としている感覚を作品に取り入れていたのが広く受け入れられた理由かなと。

 こんなに皆、忙しくて時間もない、疲れている、テレビを持っている人も減ってきているなかで、あえてテレビにスイッチを入れるという行為にあるものは何かと考えたときに、“有益さ”があるのではないかと考えます。それは情報も得られるけど、何よりも“心が豊かになる”ということ。それが無料で手に入るのが地上波の良さではないかと考えます。時代によってはトレンドは、テレビ制作側が作るという時代もあった。それはそれで素晴らしい。ですが、今はそういう時代ではありません。日々自分たちが生活していくなかで感じる疑問点、やりきれない思い、疑念のようなものをすくっていくことが、視聴者に受け入れられるものになるのかなと感じています」

 太田プロデューサー自身も、月9の最近の変化は感じている。

「この1年ぐらいの月9ドラマは、刑事、医療などの事件解決ものが多かった。ですが、パブリックイメージの月9ドラマというのは、ラブストーリーの代名詞で、“ザ・ドラマ”ということもあると思います。たしかに、そういう時代もありました。ですが時代が変われば枠も変わっていく。そんななかで、今期の『シャーロック』は、その両方を持ち合わせている作品かもしれません。男女のラブストーリーではありませんが、シャーロックとワトソンの2人の熱い友情がラブストーリーに見えなくもありません。そこには、ドラマ全盛期だった時代のトレンド感もあると思います。昨今の傾向とかつてのイメージの両方を兼ね備えた『シャーロック』を、ぜひ楽しんでください」

文/衣輪晋一

●太田大(おおた だい)
 1979年4月29日生まれ、東京都出身。2003年、フジテレビジョンに入局。5年間報道局で社会部の記者やニュース番組のディレクターなどを務めた後、現在の編成制作局へ。ドラマ『泣かないと決めた日』(10年)や『名前をなくした女神』(11年)、リアリティーショー『テラスハウス』などの編成企画を務め、『モンテ・クリスト伯 -華麗なる復讐-』(18年)『レ・ミゼラブル 終わりなき旅路』(19年)など話題のドラマを手がけている。

関連写真

  • “シャーロック”こと誉 獅子雄を好演中のディーン・フジオカ
  • 相棒の“ワトソン”こと若宮 潤一は岩田剛典(右)が演じる
  • フジテレビ系『シャーロック』(毎週月曜 後9:00)第2話より
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  • フジテレビ系『シャーロック』(毎週月曜 後9:00)メインビジュアル

提供元:CONFIDENCE

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