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エルトン・ジョンの半生を描く『ロケットマン』、『ボヘミアン・ラプソディ』を超えるか

 英人気歌手エルトン・ジョンの半生をミュージカル仕立てで振り返る『ロケットマン』。米国では今年5月末、『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』と同週末に公開され、今もロングラン上映中だ。当然のことながら、同作と『ボヘミアン・ラプソディ』を比較するレビューや分析も多く出ている。『ロケットマン』は『ボヘミアン・ラプソディ』に近づくことができるのか? まずは、米国の反応を見てみたい。

■共通点や類似点が多い両作品だが、相違点のインパクトは大きい

『ロケットマン』は、少年時代に愛されることのなかったエルトンが、世界的スターにのし上がるまでの孤独や葛藤、その過程で出会う人々との関係を描いた作品。さまざまな状況におけるエルトンの気持ちを代弁するかのように、おなじみのヒット曲が歌や踊り、ピアノ演奏によって物語を彩る。

 エルトンを演じるのは、『キングスマン』シリーズの英俳優タロン・エガートン(エルトンは2017年のシリーズ最新作『キングスマン:ゴールデンサークル』にゲスト出演した縁がある)。製作総指揮はエルトン本人、監督は『ボヘミアン・ラプソディ』のデクスター・フレッチャーだ。

『ロケットマン』と『ボヘミアン・ラプソディ』には、共通点や類似点が多い。監督がフレッチャーであること、英国出身で世界的に愛されるミュージシャンの伝記的要素、セクシュアリティやドラッグ、アルコール依存における葛藤、デビュー前とブレイク後の音楽業界との関係、自身のアイデンティティに家族関係が影響していること、などだ。これだけ共通点の多い2作が、わずか半年差で公開されるとなると、二番煎じのようなイメージを抱かれそうなところだが、『ロケットマン』は確実にオリジナルの魅力を放っている。それは、2作品の相違点のインパクトが大きいからだろう。

■ミュージカル映画『ロケットマン』のオリジナリティ

 米エンタテインメント・サイト「ヴァルチャー」によると、同じ“音楽映画”というジャンルでも、フレッチャー監督は『ボヘミアン・ラプソディ』を伝記映画、『ロケットマン』をミュージカル映画と位置付けており、後者では演出の自由が多くあったという。それは、両作における音楽や楽曲の使い方にも表れている。

 前者は、クライマックスのライブ映像再現に見られるように、フレディやクイーンのパフォーマンスを忠実に描こうとしていたが、後者においてエルトンの楽曲は、彼の心の叫びとドラマの進行役としての役割を果たしている。『ボヘミアン・ラプソディ』のラミ・マレックは基本的に、フレディの声に合わせてリップシンクをしていたが、エガートンは実際に歌っている。マレックは圧巻のパフォーマンスで世界を震わせ、アカデミー賞主演男優賞を受賞。一方のエガートンも、演技はもちろん、歌やダンスも高評価を得ている。もちろん、往年のエルトン・ファンからすると、「声のインパクトは、本家にはかなわない」ということになるが、エルトン本人が製作総指揮でお墨付きを与えているのだから、映画内のパフォーマンスとしては上々なのではないだろうか。

 もうひとつの大きな相違点は、『ボヘミアン・ラプソディ』がPG13指定(13歳未満は保護者の強い同意が必要)であったのに対し、『ロケットマン』はR指定(17歳未満の鑑賞は保護者の同伴が必要)であること。当然、PG13作品のほうが観客層は広がり、ヒットが見込めることになる。「ヴァルチャー」によれば、『ロケットマン』の製作陣は、『ボヘミアン・ラプソディ』の大ヒットを受けて、内容をよりファミリー向けのPG13仕様に方向修正することも考えたそうだ。それでも、削除が必要となるシーンや内容の不可欠性を考え、R指定で続行することになったという。この判断は、後述する評価と興収に関係してくる。

■米批評家からの評価が高いのは『ロケットマン』

『ボヘミアン・ラプソディ』を語るうえで欠かせない枕詞は、「批評家の酷評にもかかわらず、歴史的な大ヒットに」というもの。むしろ、その「批評家の酷評」こそが一般ファンの情熱に火を注ぎ、驚きのロングランにつながったとさえ見ることができる現象だった。その点、『ロケットマン』は批評家の評価も上々だ。米映画批評サイト「ロッテン・トマト」のスコアは、『ボヘミアン・ラプソディ』が61%、『ロケットマン』は89%。一方、公開初日の観客評価による格付け指標「CinemaScore」は、『ボヘミアン・ラプソディ』がA、『ロケットマン』がA-となっており、一般観客の評価は前者が少し高くなっている。

『ボヘミアン・ラプソディ』については、PG13指定にするために(理由はそれだけではないが)セクシュアリティ描写をあいまいにしたこと、ドラマ性を高めるためにエイズ発覚時期に脚色を施したことなどが、やはり批判の尾を引いており、『ロケットマン』のほうが真実に近いと評されている。これは、エルトン自らが製作総指揮を執っているため、当然のことでもあるのだが、セクシュアリティやドラッグ、アルコールについて、オブラートに包むことなく描いている部分を評価する声が多い。

『ボヘミアン・ラプソディ』においては、当初の監督であったブライアン・シンガーが降板し、撮影終了の数週間前にフレッチャーがメガホンをとることになったという舞台裏のドタバタ劇も、批評家や一般ファンを複雑な心情にさせていることは言うまでもない。

■興収面ではモンスターヒットの『ボヘミアン・ラプソディ』優位

 公開初週末の米興収は、『ボヘミアン・ラプソディ』が5100万ドル、『ロケットマン』が2600万ドルと2倍の差があるが、後者はR指定、かつ、初夏の超大作ラッシュ中の公開であるため、健闘していると言える。最終的に『ボヘミアン・ラプソディ』の北米興収は2.1億ドル、世界興収は9億ドル超え。

『ロケットマン』は公開から1ヶ月後の6月末時点で、北米興収8400万ドル、世界興収1.7億ドル。『ロケットマン』が王者の興収を超えることはできないだろうが、米「バラエティ」紙によれば、製作費は4000万ドルと言われているため、すでに成功の域に達している(『ボヘミアン・ラプソディ』の製作費は約5000万ドルであるため、こちらがモンスターヒットであることには変わりない)。

■良作の一番の違いは観客の“後味”

 音楽伝記映画というジャンルは新しいものではないが、『ボヘミアン・ラプソディ』のようなヒット現象は初めてだったことから、同作にはある種のビギナーズラックがあったとも言われている。何より、どれほど熱狂しても、今は手の届かない場所に行ってしまった天才への想いが募る『ボヘミアン・ラプソディ』と、苦しみぬいた過去がありながら、幸せな主人公の今に安堵感を持てる『ロケットマン』の一番の違いは、“後味”だ。

『ロケットマン』を観て、「エルトン・ジョンにもう一度浸りたい」、または「初めて聴いてみたい」と思う人は多いだろうが、「この映画をもう一度観たい」と思う度合いでいえば、『ボヘミアン・ラプソディ』にはかなわない。9億ドルという興収は、フレディに会いたくて、何度も映画館に通った、世界中の人々が積み上げた数字なのだ。

 先人が敷いたレールがある幸運と、巨大な先人を追うプレッシャーを同時に抱えながら、世に贈りだされた『ロケットマン』。こうしたなかで、映画としてのオリジナリティを放ちつつ、音楽映画ファンを魅了したことは、評価されるべきだろう。『ロケットマン』は8月23日に日本公開される。
(文/町田雪)

関連写真

  • 『ロケットマン』8月23日公開(C)2018 Paramount Pictures. All rights reserved.
  • 『ボヘミアン・ラプソディ』(C)2019 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.
  • 『ボヘミアン・ラプソディ 2枚組ブルーレイ&DVD』(C)2019 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.

提供元:CONFIDENCE

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