北野武監督が28日、都内のホテルで行われた『第31回日刊スポーツ映画大賞 石原裕次郎賞』授賞式に前年の受賞者として登壇。受賞した映画『カメラを止めるな！』が受賞したが、毒ガスを噴射しつつも絶賛した。

【写真】その他の写真を見る

　今年は『カメラを止めるな！』の上田慎一郎監督が受賞。北野監督は「運がいいですね。俺のときは審査員にボロクソに言われましたからね」としみじみ。自身も映画監督として大成したことを踏まえ「モノを作るときは、素直にやれば見てる人は見てくれる」と熱く語った。そして『カメ止め』はおとといに見たばかりだが「非常にうらやましかった。まるで蛭子能収の漫画を見てるよう。これが下手ウマの極致。役者も下手だし、みんな下手。だけど下手ウマなんです。この良さがないとダメ」と大絶賛（？）していた。

　上田監督に対しては「これがお金持っちゃって、いい映画を作ろうとすると失敗する」と注意。毒ガスを撒き散らしたが最後は「我々が映画を撮ろうと思ったときの、そのままの映像。やっぱり喜んじゃった。ミスしているところもいい。慣れてくると、それができなくなる」と、今後を当たるであろう壁を予測。そして「不思議にミスできなくなる。こなれるのは、あらゆるアーティストの1番よくないところ。そのへんの兼ね合いも映画に情熱を持ってブチ当たれば自然に解消する」と金言を与えていた。

　同作の制作費は300万円だった。この日の賞金も300万円となった。司会の露木茂から「もう1本、撮れますね」と声をかけられると「この300万円はキャストのみんなで山分け。臨時ボーナスです。きょうの夜『カメラを止めるな！』の忘年会なんですけど、余った分は費用に回させていただきます」と笑顔を見せた。「目の前の人を楽しませることに必死でした」と撮影を振り返りつつ「目の前の人に届かないと多くの人に届かない。多くの人に届かないと時代は変わらない。これからも目の前のことから出発して多くの人に届けられる映画を作りたい」と意気込んだ。

■受賞者、作品は以下の通り。

作品賞：映画『万引き家族』（是枝裕和監督）
監督賞：白石和彌監督（『孤狼の血』『サニー／32』『止められるか、俺たちを』）
主演男優賞：松坂桃李（『娼年』『不能犯』）
主演女優賞：安藤サクラ（『万引き家族』）
助演男優賞：高橋一生（『空飛ぶタイヤ』『嘘を愛する女』『億男』）
助演女優賞：樹木希林（『万引き家族』『モリのいる場所』『日々是好日』）
新人賞：平手友梨奈（『響−HIBIKI−』）
石原裕次郎賞：『カメラを止めるな！』（上田慎一郎監督）
石原裕次郎新人賞：岩田剛典（『パーフェクト・ワールド』『去年の冬、きみと別れ』『Vision』）
外国作品賞：『スリー・ビルボード』（マーティン・マクドナー監督）