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『この世界の片隅に』制作P・真木太郎氏「のんさんじゃなかったら、こんなに当たっていない」

 アニメ映画『この世界の片隅に』で制作プロデューサーを務めた真木太郎氏が28日、都内で行われた『黒川塾(五十八)』に出席した。2016年の公開から1年以上経った今でも一部の映画館で上映が続いてヒットしている同映画を振り返り「(主人公が)のんさんじゃなかったら、こんなに当たっていない」と明かし「アニメーションは声優だけではなく音が大事。主人公・すずのどういう風に歩いて喋るのかが、監督の頭の中の設計図にあった。しゃべり方や声の質とかが、だんだん、のんさんにフォーカスしていった。『のんさんみたいな』イメージから『のんさんじゃなきゃダメだ』彼女以外思いつかない」と語った。

真木太郎氏 (C)ORICON NewS inc.

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 「ヒットする要素が見当たらない」と、業界のプロたちに企画段階で言われて資金調達が難航した同作。そこで当時まだ珍しかったクラウドファンディングに目を付けて、制作にこぎ着けた。真木氏は「2015年に始めた時は、世間的に危ないお金の集め方でした。市民権を得ていないみたいな」と告白。それでも、募集してから8日で目標資金調達金額の2000万円を調達し、上映後はSNSの口コミなどで話題となりヒット作となった。

 クラウドファンディングは、制作資金などを一般のファンから募るというもの。すぐに目標資金調達額が集まり話題となったことで、「ポツり、ポツりと、『じゃあ、真木さん、付き合いで5%出すよ』」という流れができたと真木氏は語る。出資するとDVDなどの特典がもらえる「リターン」があるのが一般だが、同作はそういったことにほとんどお金を掛けていない。

 その理由について真木氏は「何のためにお金を出すのか。映画を完成してほしい。映画が観たいということが支援者の意図。なので、『1円でも多く制作費に回すのがリターンでしょ』というのが僕らの考え方」と明かしつつ、想像以上に出資者がいたため「エンドロールに名前のクレジットを2000人くらい載せるのは大変だった」と笑いながら暴露した。

 また、アニメ制作会社単独でなく、出版社、レコード会社、広告代理店などから出資を募り、制作資金を集める方法を指す制作員会方式についても言及。真木氏は「制作委員会の定義はルールを含めてバラバラ。目的はいかに儲けるかということで、利益の最大化を図って、クリエイターにどう還元するかが大事だ」と訴えた。

 中盤、「アニメーション制作の現場で起こっていること」をテーマに、国内外のアニメーションを取り巻く環境と実態、それらの課題が話題に。その中で『TVアニメのタイトルが増えている』ことについてのグラフがスクリーンに映し出されると、真木氏は「狂っているよね」と笑わせつつ「一番ひどいのはラノベだよね。作り捨てのチャンピオンで、とにかく『書け! 書け! 書け!』って、その中でヒットが出れば良い構図。若手が出るチャンスは増えたけど、ユーザーにとっては、フィルターがなく出て来るから、嫌になっちゃう」と語った。

 同イベントは、音楽、映画、ゲームなど全てのエンタテインメントの原点を見つめ直し、未来のエンタテインメントのあるべき姿をポジティブに考える会で、今回で58回目。開催時期に合わせてゲスト・テーマを決定し、参加者と現状分析や動向を研究し、あるべきエンタメ像を想像するもので、クロストークやリスナーからの質疑応答もあった。ジャーナリストの数土直志、主催者の黒川文雄も出席した。

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  • 真木太郎氏 (C)ORICON NewS inc.
  • 主催者の黒川文雄氏 (C)ORICON NewS inc.
  • 『黒川塾(五十八)』の模様 (C)ORICON NewS inc.
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