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ヒット続く星野源、下積みが作った自信の理由「ポッと出ではない」

 ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)の主題歌「恋」や、『過保護のカホコ』(日本テレビ系)の「Family Song」が大ヒットを記録。『NHK紅白歌合戦』に3年連続で出場する一方、役者、文筆家として着実に実績を残すなど、いまや国民的エンタテイナーの座を獲得した星野源。そんな星野の最新作は、『映画ドラえもん のび太の宝島』(3/3公開)主題歌である「ドラえもん」だ。星野にとってのアニソンの意図、そして昨今の幅広い活躍を支える姿勢についても聞いた。

◆タイアップが「ビジネスとしての相互利用のみの関係になるのは悲しい」

 『映画ドラえもん』といえば、いわずと知れた国民的アニメ映画。その主題歌を星野源が担当し、曲名がずばり「ドラえもん」であるというニュースは、ある種の驚きをもって伝えられた。とはいえ、古くは『機動戦士ガンダム』の「翔べ!ガンダム」、『宇宙戦艦ヤマト』の「宇宙戦艦ヤマト」のように、アニメの世界観に寄り添うことはアニソンのベーシックなスタイル。それだけに、「本来、アニソンとは?」と考えて制作に臨んだのかというと、「原点回帰みたいな気持ちは特になかった」という。

 「ただ、アニメに限らず、作品の内容と関係ない主題歌には絶対にしたくないということは感じていました。僕は音楽家としても役者としても活動しているので、物語を作る側の気持ちも主題歌を書く側の気持ちもわかるんです。だからこそ、タイアップが“ビジネスとしての相互利用のみ”の関係になるのは悲しいし、自分がやるのなら、そうじゃないものを作りたいと常々思っているんです」

◆「何者でもない子どものままで」、映画『ドラえもん』の良さ

 音楽への真摯な考えのもと作られた曲「ドラえもん」には、星野が幼い頃から馴染んでいた原作、アニメ作品の世界観が反映された。

 「映画シリーズの“大長編ドラえもん”全作に共通することを歌いたいと思ったんです。そこから“何者でもなくても 世界を救おう”という歌詞ができました。僕も小さい頃から原作を読み、アニメを観てきましたが、すごく壮大な冒険をしていても、みんな普段と変わらないんですよね。のび太もジャイアンもスネ夫もやっぱりダメなんだけど(笑)、勇気を振り絞って、真心を持ってがんばるわけじゃないですか。何か才能があるとか、超能力が使えるとか、めちゃくちゃ頭がいいわけではなくて、何者でもない子どものままでがんばって、世界を救おうとする。『ドラえもん』を観ていると“自分もこの中に入れるんじゃないか?”という感覚になれて、それがすごく好きだったんです。この歌を通して、そんな部分も表現したいと思っていました」

◆「ちびっ子にすごい人気」、ライブや映像でお馴染みのキャラ“ニセ明”

 そんな思いで制作された今回のシングル「ドラえもん」(2/28発売)。初回盤の特典DVDには、「ニセ明をスキーに連れてって」という映像が収録される。“ニセ明”といえば、星野源のライブにたびたび登場する布施明風のロン毛にサングラスのキャラクターで、ファンにはお馴染み。知名度も急上昇中だ。

 「最初はただの冗談と言いますか、療養後の復帰公演になった日本武道館ライブ(2014年2月)のときに、“ファンのみんなに心配されたくない。むしろバカバカしい気持ちになって楽しんでほしい”と思って、ニセ明さんに出演してもらって(笑)。その後のツアーや映像作品にも出演していただいて、だんだん人気が出てきたんです」

 子どもたちも多く視聴するであろう今作。“ニセ明”も「いまや、ちびっ子にすごい人気なんです」と、星野も意外な広がりを喜んでいるようだった。

◆音楽も演劇も文章も、「やめたほうがいいよ」と言われた

 今作に至るまでも、「恋」の大ヒット以降、星野の活動の規模はさらに拡大している。昨年は過去最大規模のアリーナツアーを成功させる一方、エッセイ集『いのちの車窓から』(KADOKAWA)が『オリコン年間“本”ランキング2017』の「タレント本部門」で首位に。ドラマ『コウノドリ』(TBS系)等での演技も高く評価されるなど、活躍は多岐にわたる。だが、もちろん最初から順調だったわけではなかった。

 「中学生の時から学校内で役者と音楽を始めたんですけど、演劇をやっていると『音楽のほうが才能ありそうだから、そっちに集中すれば?』と言われ、音楽のほうでは『演劇のほうが向いているんじゃない?』と言われ、文章を書きたいと言ったら『やめたほうがいいよ』って言われたんですよ(笑)。だから自分で編集者に売り込んで、200文字くらいの小さな枠から書き始めて。全部インディーズからのスタートなんですよね、最初は。そこから拾ってくれる人と出会って、仕事がつながっていった。下積みはあるし、“ポッと出ではない”という自信みたいなものはあるかもしれないです。当時はしんどかったですけどね(笑)」

◆強みは「“俳優が初めてCDを出す”とは受け取られない」こと

 現在の状況は、星野自身の一貫した姿勢に支えられている。

 「たぶん、諦めが悪いんだと思います(笑)。『上手くいかない』『やめなよ』と言われても、『でも、やりたいんです』という気持ちで続けてきた。いつか花が咲くはずとも思っていなくて、やめられなかったんですよ。もちろん、続けてきて良かったなとは思います。たとえば自分が出演するドラマの主題歌を担当させてもらうときも、“俳優が初めてCDを出す”とは受け取られないので、そこは自分の強味だなと思います。あとは…あまり日の目を見なかったアイディアでも“いつかまた必ずコレをやるんだ”ってずっと持ち続けちゃうんです。大昔、二胡を使った楽曲を作曲したんですが、それは少数の人にしか届かなかったんです。いつかまたやりたいとずっと思い続けてきて。だから「恋」のイントロで二胡を使えたときに、“ようやくできた!”って(笑)。それが日本中で流れると“ほら、やっぱりいいでしょ?”って思うんですよね。やっぱり諦めが悪いんだと思います(笑)」

 こうして、日本を代表するエンタテイナーとなった星野源。状況が大きく変化しても、「制作に対するスタンスは変わらない」。

 「単純に忙しくなったり、オファーをいただくものが変わってくるという違いはありますが、制作に関しては変わっていないと思います。「恋」も売れるために狙って制作したわけではなく、『この曲最高に面白い!』と思いながら作ったものがヒットしたんです。そうやって作った曲をたくさんの方が聴いてくれるのはすごく幸せなことだと思いますし、今後も面白いと思うものを作り続けることがその恩返しになると思います。その都度やりたい音楽は違うと思いますが、根本は変えないようにしているし、変わってないですね」
(文:森朋之)

関連写真

  • 『映画ドラえもん のび太の宝島』主題歌を歌う星野源(写真:宮坂浩見) (C)oricon ME inc.
  • 『映画ドラえもん のび太の宝島』メインカット(C)藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 2018

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