設立から23年目を迎えるLD&Kが契約形態の新基準を発表。そのステートメントには、音源パッケージの収益配分にあたってアーティストの取分をより多く確保するため、小売店流通をしないという選択肢を設けるなど、ドラスティックな方法論が例示されている。株式会社LD&Kの代表取締役社長/オーナー・大谷秀政氏に真意を聞いた。
◆“AtoC”の次代に即し、アーティスト側が選べる状態を提示
LD&Kは音楽レーベル兼マネジメント事務所としてだけでなく、スタジオやライブハウスの運営、イベント制作、マーチャンダイジング、音楽出版、著作権管理、資金調達プラットフォームなど、音楽文化の継続のための仕組みを全方位的に構築してきた。さらに近年ではカフェをはじめとする飲食業でも着実に実績を伸ばしている。このタイミングでの新たな契約形態への挑戦にはどのような意図があるのだろうか。
「大前提として、パッケージ売上が減少し、もうアーティスト印税が1%というような従来のやり方では、音楽活動を継続すること自体が難しい時代になっているということがあります。同時に、SNSの普及などで急速にファンとの関係性が変化し、いわば“AtoC”(Artist to Customer)といえるような、アーティストが直接ファンとつながる状況も当たり前のものになっている。世の中が変化しているなら、それに合わせてアーティストとメーカーの契約形態を面倒がらずに見直しましょうという、ごく単純な話なんです」
同社では以前から、著作権使用料などを除くアーティスト印税として5〜8%での契約が基本。原盤制作費をアーティスト側が一部負担する共同原盤の場合には、最大で15.5%をアーティスト側の収益とできる仕組みを整えている。今回の新基準では、小売店流通をせず通販管理を委託する選択をした場合、共同原盤なら最大で30.5%までアーティスト側の収益を引き上げることが可能になる。
「小売店を否定しているわけではありません。1つの選択肢として、アーティスト側が選べる状態を提示したいということです。あくまでアーティストとメーカーの契約内容ですから、本来はこうやってわざわざ言わなくてもいいわけで、ウチはこういうやり方も選べますというだけのことなんです。ただ、イノベーションが進んでかなり圧縮できているはずの固定費が、旧来の“戦後スタアさんたちのレコード歌唱契約”をそのまま引き継いでいるような形態のまま計算されているのは、あまりにも時代に合わないんじゃないか。そういう意識はずっとありました。このままAtoCが拡大するなら、メーカーやレーベルの存在意義まで揺らいでいく。アーティストさんたちもアホではありませんので、いずれ見捨てられかねません(苦笑)」
◆メジャーから放出された人たちの受け皿になれたら
当然、音源パッケージの流通についての契約の選択肢であり、ダウンロード、ストリーミングといった配信サービスでの取り扱いはまた別途、細目を契約していくことになる。
「逆にアーティスト側の意識を高めて、さらに自主的な活動を促進していくという狙いもあります。一緒に仕事していくなら、変に中間搾取みたいなイメージを持たれるより、情報を開示して選んでもらうほうがシンプルですし信頼関係を作れる。規模はミニマムですが、我々は360度で音楽に関わることがひと通りやれるインフラは最低限持っています。何もアーティスト契約せずとも、通販だけとかライブ制作だけで利用してもらってもいい。それこそメジャーから放出されても自分たちでパッケージを作り、ライブ会場の手売りや直接発送してるような人たちの受け皿にもなれたらと思っています」
便利屋じゃないんだけどね、と笑う大谷氏。すでにある仕組みを守ろうとするばかりでは、業界全体の発展には結局つながらないという危機意識と音楽文化へのこだわりこそが、今回の取り組みの根本には感じられる。今回、大谷氏が「わざわざ言わなくてもいい」ことをオープンに発信したことの意味を、もう一度真剣に考えるべき時期なのだろう。
◆“AtoC”の次代に即し、アーティスト側が選べる状態を提示
LD&Kは音楽レーベル兼マネジメント事務所としてだけでなく、スタジオやライブハウスの運営、イベント制作、マーチャンダイジング、音楽出版、著作権管理、資金調達プラットフォームなど、音楽文化の継続のための仕組みを全方位的に構築してきた。さらに近年ではカフェをはじめとする飲食業でも着実に実績を伸ばしている。このタイミングでの新たな契約形態への挑戦にはどのような意図があるのだろうか。
「大前提として、パッケージ売上が減少し、もうアーティスト印税が1%というような従来のやり方では、音楽活動を継続すること自体が難しい時代になっているということがあります。同時に、SNSの普及などで急速にファンとの関係性が変化し、いわば“AtoC”(Artist to Customer)といえるような、アーティストが直接ファンとつながる状況も当たり前のものになっている。世の中が変化しているなら、それに合わせてアーティストとメーカーの契約形態を面倒がらずに見直しましょうという、ごく単純な話なんです」
同社では以前から、著作権使用料などを除くアーティスト印税として5〜8%での契約が基本。原盤制作費をアーティスト側が一部負担する共同原盤の場合には、最大で15.5%をアーティスト側の収益とできる仕組みを整えている。今回の新基準では、小売店流通をせず通販管理を委託する選択をした場合、共同原盤なら最大で30.5%までアーティスト側の収益を引き上げることが可能になる。
「小売店を否定しているわけではありません。1つの選択肢として、アーティスト側が選べる状態を提示したいということです。あくまでアーティストとメーカーの契約内容ですから、本来はこうやってわざわざ言わなくてもいいわけで、ウチはこういうやり方も選べますというだけのことなんです。ただ、イノベーションが進んでかなり圧縮できているはずの固定費が、旧来の“戦後スタアさんたちのレコード歌唱契約”をそのまま引き継いでいるような形態のまま計算されているのは、あまりにも時代に合わないんじゃないか。そういう意識はずっとありました。このままAtoCが拡大するなら、メーカーやレーベルの存在意義まで揺らいでいく。アーティストさんたちもアホではありませんので、いずれ見捨てられかねません(苦笑)」
◆メジャーから放出された人たちの受け皿になれたら
当然、音源パッケージの流通についての契約の選択肢であり、ダウンロード、ストリーミングといった配信サービスでの取り扱いはまた別途、細目を契約していくことになる。
「逆にアーティスト側の意識を高めて、さらに自主的な活動を促進していくという狙いもあります。一緒に仕事していくなら、変に中間搾取みたいなイメージを持たれるより、情報を開示して選んでもらうほうがシンプルですし信頼関係を作れる。規模はミニマムですが、我々は360度で音楽に関わることがひと通りやれるインフラは最低限持っています。何もアーティスト契約せずとも、通販だけとかライブ制作だけで利用してもらってもいい。それこそメジャーから放出されても自分たちでパッケージを作り、ライブ会場の手売りや直接発送してるような人たちの受け皿にもなれたらと思っています」
便利屋じゃないんだけどね、と笑う大谷氏。すでにある仕組みを守ろうとするばかりでは、業界全体の発展には結局つながらないという危機意識と音楽文化へのこだわりこそが、今回の取り組みの根本には感じられる。今回、大谷氏が「わざわざ言わなくてもいい」ことをオープンに発信したことの意味を、もう一度真剣に考えるべき時期なのだろう。
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2018/01/20