世界に伝わる人情ドラマ『深夜食堂』

 根強いファンを得てきた『深夜食堂-Tokyo Stories-』。アジア各国でも高い人気を誇るこの人間ドラマの新シーズンが、Netflixのオリジナルドラマとしてスタート。世界190ヶ国に配信された。

■深夜ドラマから全世界へ世界190ヶ国同時配信を開始

 路地裏の小さな食堂で繰り広げられる人生模様を描く『深夜食堂 -Tokyo Stories-』が10月21日より、Netflixオリジナルドラマとして世界190ヶ国で同時配信された。同名漫画を原作に、09年に深夜ドラマとして第1部が放送。その後、11年に第2部、14年に第3部とシリーズを重ね、15年1月公開の映画版もヒット。特筆すべきはアジア各国でも人気が高いことで、遠藤日登思プロデューサーによると「台湾や韓国では、日本よりも立派な作りのDVDが出ているほどです(笑)」と、熱心なファンマーケットの存在を窺わせる。

 「ただ、アジア圏では違法配信で認知が広がっていったようです。番販も進めてきましたが、やはり日本放送から2、3日後には字幕付きでネットに流れてしまう。そこで第3部では全10話を完パケして、そこに字幕を付けたものを番販し、日本と同時放送するという試みもしてきました」(遠藤日登思プロデューサー/以下同)

 15年には韓国の「ソウルドラマアワード年間最高人気外国ドラマ賞」を受賞。違法配信がゼロにはならなかったものの、第3 部での試みは成功だったと言えるだろう。

 「映画版も各国で好評をいただきました。また映画は比較的海を越えやすいため、次回作は映画版単体で行こうという話も出ていた。しかしやはり、連ドラの25分の尺が本作の世界観にマッチしているという意見もあり、次回作の展開を模索していたところでNetflixが日本上陸したんです」

 すでに海外でもファン層と認知を得ていたことから、Netflixへのアプローチもすんなりと進んだ。

 「Netflix側には、「地上波ではできなかった表現にも挑戦してください」と背中を押していただきました。しかし急に世界観が変わったら、今まで楽しんでくれたファンをがっかりさせてしまう。そこはむしろ、「これまで通りに」とお願いしましたね」

 事実、気鋭の映画監督たちが丹念に作り上げるドラマの手触りはそのままに、役者陣も味のある面々が続投。唯一、今回の新たな挑戦といえば韓国ロケを行ったことだ。

 「原作にもある、いつかドラマでも描きたかったエピソードです。正直、今までは予算的に海外ロケなんて不可能でした。韓国のファンには身近に感じて楽しんでもらいたいです」

 いかに評価されても、制作費を回収できなければ次回作には繋げられない。確実な制作費を求めてサブスクリプションに活路を見出す例が、欧米で定着しつつあるのも事実だ。

 「ただ本作は、比較的シニア層のファンが多いので、配信で観ることに抵抗があるのではないかと懸念しています。一方で、アジアでは若いファンが多いので、その抵抗は感じられません」

 韓国や中華圏ではリメイクドラマも制作されるなど、「深夜食堂」にとってアジアは手堅いマーケット。世界190ヶ国配信の手応えはどうだろう。

 「Netflixの視聴特性や属性をはっきりと把握できていません。いきなりの全世界配信ですから、1人も観てもらえない国だってあるかもしれません。ただ先日、ロンドンで開催された『東アジア映画祭』で3話分を上映したところ、イギリスにも凄く熱心なファンがいて驚きました」

 では、心の機微を丁寧に描いた極めて日本的とも言える本作が、世界の人々の心を揺さぶるのはなぜか。

 「それを分析したことはありませんが、人情物語というものが言葉や習慣を超えて伝わっているのだと思います。もう1つは“極めて日本的”だからではないかと。ちなみにここ数年、(本作の世界観にも似た)新宿ゴールデン街が欧米人の観光客で賑わっています。あの日本独特の雰囲気の中で肩寄せ合って飲んだりすることが海外の方にとっても魅力的に感じるのなら、深夜食堂が思いがけない国で人気が出る可能性もあると期待しています」
(文/児玉澄子)

(コンフィデンス 16年11月14日号掲載)



関連写真

  • 『深夜食堂 -Tokyo Stories-』はNetflixにて10月21日より全10話一挙配信中。11月5日より映画『続・深夜食堂』も公開された。出演は小林薫ほか(C)2016 安倍夜郎・小学館/ドラマ「深夜食堂」製作委員会
  • 10月25日にロンドン東アジア映画祭で『深夜食堂-Tokyo Stories-』が上映され、遠藤プロデューサーも出演。大勢のファンが詰めかけた

提供元:CONFIDENCE

タグ

【最新号】コンフィデンス 2017年9月11日号 詳細はコチラ バックナンバー 一覧

最新号コンフィデンス2017年9月11日号

<COVER STORY>
川淵三郎氏(日本トップリーグ連携機構代表理事 会長)
「アリーナ文化の創出」を提唱

<SPECIAL ISSUE>
「ORICON LIVE STUDYwith ACPC」Vol.3
プロダクション目線の“観客文化育成”とおもてなし

お問い合わせ

オリコントピックス