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話題のテレビマン・藤井健太郎 攻めの姿勢が高評価も「僕はジャッジするだけ」

 「結果発表〜!」ダウンタウン浜田雅功が叫ぶと、その様子をTBS局内のモニター越しに見守っていた記者たちから、ひときわ大きな笑い声が上がった。今月2日に行われた、コント日本一を決める『キングオブコント2016』決勝戦の9代目キング発表時のことだ。最も緊迫した場面で笑いが起きたのは、様々な説を検証する同局バラエティー『水曜日のダウンタウン』(毎週水曜 後9:57)での「結果発表のコールが日本一上手いの浜田雅功説」の影響にほかならない。

TBS系『水曜日のダウンタウン』などの演出術を語った同局プロデューサー・藤井健太郎氏 (C)ORICON NewS inc.

TBS系『水曜日のダウンタウン』などの演出術を語った同局プロデューサー・藤井健太郎氏 (C)ORICON NewS inc.

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 ORICON STYLEでは、多くの根強いファンを持つ同番組の総合演出を担当し、最近では著書『悪意とこだわりの演出術』(双葉社)を出版するなど、テレビ業界内外から注目を集めている同局プロデューサーの藤井健太郎氏(36)にインタビュー。悪意と笑いの仕掛人・藤井氏のルーツや番組作りの極意、今のテレビ界への思いに迫った。

■胸に刺さったダウンタウンの笑い 作り手意識は『電波少年』から

 幼少期から“テレビっ子”だったという藤井氏だが、とりわけ好きだった番組は『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』(『元テレ』)と『ダウンタウンのごっつええ感じ』(『ごっつ』)だったという。放送時間がともに日曜の夜8時と“丸かぶり”だったこともあり、『元テレ』から『ごっつ』へと移行する瞬間があったと振り返る。「『平成口ゲンカ王決定戦』の途中くらいですかね。(同コーナーで“素朴なヤンキー”として人気を集めた)三上大和の時は良かったんですけど、2人目の女の人くらいの頃には『ごっつ』に行ったっていう感じでした」。ダウンタウンが見せるエッジの効いた笑いは、当時中学生だった藤井氏に大きなインパクトを与えた。「やっぱり、刺さったのはダウンタウン。単純な面白さでいうと、これまでのテレビの中で『ごっつ』が一番面白かったと思いますね」。

 作り手としての面白さに気づいた番組は、1992年から2003年まで日本テレビ系列で放送された『電波少年』シリーズ。アポなしロケ、ヒッチハイクの旅、懸賞生活など出演者を極限まで追い込む、過激な企画が大きな反響を呼んだが、藤井氏は「面白いことを考えているのは、カメラの後ろ側にいる人たちなんだなって感じました。(企画を)やらせている、考えている人たちが面白いんだと思いましたね」と語る。電波少年シリーズが、ひとつの区切りを迎えた03年にTBSへ入社した。

 入社1年目から提出した企画が採用され、翌年には特番『限界ヲ知レ』を「プロデューサー・総合演出・AD」という異例の立場から担当。そんな最中、容姿にコンプレックスを持った素人が悩みを相談し、美のスペシャリストたちによって華麗に変身するというフジテレビのバラエティー番組『B. C. ビューティー・コロシアム』を眺めながら、改めて“自身の長所”を再確認したという。

 「あの番組は面白かったんですけど、直すっていう正義を盾に、その前の状態のブスをめちゃくちゃに言うっていう、ヒドい番組じゃないですか(笑)。過去の再現VTRとかで『ナメクジ女』って言われて、塩をかけられたりしていて…。でも『これ、オレだったらもっとイケるぞ』っていう、変な自信みたいなのがどこかにありました。当時は、自分のやりたいものが自由に作れるような時期ではなかったですけど、オンエアを見て、そう思ったのを覚えています。そういうことが、きっと得意なことなんだなっていう」。それから十数年の月日が経ち、自身の番組チームが、バナナマン設楽統から「地獄の軍団」と称されることとなる。

■今のテレビは過渡期 攻めの姿勢が高評価も「僕はジャッジするだけ」

 テレビっ子だった藤井氏の特徴的なスタイルとして挙げられるのが、自身が蓄えてきた“テレビの歴史”ともいえるさまざまな小ネタの数々。『元テレ』『ごっつ』と同じ日曜8時枠で、2010年から12年まで放送されていた『クイズ☆タレント名鑑』では、「松島トモ子のライオン騒動」「ベン・ジョンソンのドーピング」「トランプマン」など、当時の世間を騒然とさせた“裏テレビ史”と呼ぶにふさわしいネタがふんだんに盛り込まれた。若い世代には伝わりにくいネタも積極的に打ち出していく意図について、著書『悪意と〜』では次のように説明している。

 「ちょっと大袈裟な言い方ではありますが、『クイズ☆タレント名鑑』で僕らが松島さんをサンプリングのように掘り起こし、新しい味付けをして下の世代に伝えたように、古くても良いモノ、面白いモノは、その時代に合った解釈やエディットを加えて、残していけるといいなと思っています」(『悪意とこだわりの演出術』p55より)

 悪意と愛はもちろん、徹底的にこだわった演出術も藤井氏が注目を集める要因のひとつ。「基本的には時間をかけた分だけ番組は面白くなる」という信念のもと、時間を惜しまずギリギリまで細部の調整を行うだけでなく、ナレーション原稿もすべて自分で書き上げるという徹底ぶり。総集編の放送にも手を抜かず、先月21日放送の『水曜日のダウソタウソ』では、出演者全員がそっくりさんという、斬新な構成が大きな反響を呼んだ。

 テレビ好きの心をくすぶる演出について、藤井氏は「思いつきがスゴいとか、思いつきの能力が他の人より優れているというよりは、思いついたものを形にする、その意志というか、そこへの踏み込みがほかの人よりもあるのかもしれないですね。具現化する能力というよりかは、僕はGOをするジャッジするだけです」と話す。こだわり抜く理由についても「気になるタチなんでしょうね。たぶん、どの番組にも総合演出という立場の人がいて、ジャッジをしているんですけど、僕はもう少し突っ込んでやりたくなっちゃうっていう。つまんないと思われるのが一番イヤなので」と冷静に語った。最前線をひた走る藤井氏にとって、今のテレビ界はどのように映っているのだろうか。

 「やっぱり、たぶん昔は『純粋に面白いものを作る』というのがメインだった気がします。でも、だんだんと視聴率で勝負していく以上、『何となくでもいいから見させる』という作りの番組が多くなってきた。それは特殊な構造のものになっていると思うので、それが行き着くところまで行き着いたら、また変わってくるのかな、と。何となくで見ちゃう番組と『早く家に帰って、これ見よう』っていう番組は、もはや同じジャンルとは思えないくらい違うものになっています。ネットの有料配信などもあるし、何か過渡期な気はしますけどね。ま、それっぽいこと言いましたけど、本当はあまり何も考えてないです(笑)」。

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