ORICON NEWS

山崎育三郎、“ミュージカル育ち”がオールマイティな理由

 “ミュージカル界のプリンス”として、『レ・ミゼラブル』や『ミス・サイゴン』などの大作に出演し、いまやドラマやバラエティでも活躍する山崎育三郎。彼が今回挑戦したのは、美空ひばりや福山雅治らの名曲を歌う、カバーアルバムだ。いわゆるミュージカル的な歌唱法は封印。かつて「ミュージカルしかやらない」と考えていた彼が変化したきっかけ、そしてバラエティでも発揮されるトーク力の高さの秘密とは?

アルバム『1936 〜your songs〜』では、美空ひばり、福山雅治らの名曲をカバー

アルバム『1936 〜your songs〜』では、美空ひばり、福山雅治らの名曲をカバー

写真ページを見る

【写真】その他の写真を見る


◆普段は何千人に向けた歌唱、今回に限ってはたったひとりに向けて

――8月24日に、カバーアルバム『1936 〜your songs〜』がリリースされました。ミュージカル俳優の山崎さんが、ミュージカル音楽ではなく、日本の歌謡曲をカバーされたことがまず新鮮でした。
【山崎育三郎】 正直、僕もある時期までは、ミュージカル以外の活動はやらないつもりでいたんです。子供の頃からミュージカル一筋で、それ以外興味がなかった。ミュージカルの世界で、帝国劇場の舞台に立つこと、『レ・ミゼラブル』のような大作に出演すること、主演を張ることをずっと目標にしてきたので。でも、2年前に初めてドラマ『下町ロケット』(TBS系)に出演する機会をいただいたときに、“僕がミュージカル以外の世界に飛び込むことで、従来のミュージカルファン以外にも、ミュージカルに興味を持ってもらえるきっかけになるかもしれない”と思ったんです。

――歌うとき、気をつけたことは?
【山崎育三郎】 ミュージカルの場合は、2階席3階席の一番奥まで届くように歌うんです。でも、ミュージカルが苦手、という方がおっしゃるには、その歌唱がトゥーマッチなんですよね。声の“圧”が強すぎるというか……(苦笑)。なので、今回のアルバムは、聴いてくださる方と1対1の関係で歌うことを意識しました。音楽を聴くときは基本ひとりじゃないですか。車の中とか、イヤホンで、とか。そのときに、聴き手の方々に“あ、これは自分に対して歌っているんだ”と思ってもらえるように。だから、普段は何千人に向けた歌唱を心がけているのを、今回に限っては、たったひとりに向けて歌っています。

◆『下町ロケット』で一番きつかったのは睡眠時間が削られたこと

――ミュージカルは非日常の世界なので、ミュージカルっぽい歌声を日常で聴くと、確かに大げさに聞こえてしまうのかもしれないですね。
【山崎育三郎】 ドラマもそうなんです。日常的な会話、ボソボソと、向かい合った相手にだけ届く声で話していては、ミュージカルでは通用しない。でも、『下町ロケット』を経験してみて、お芝居の表現の幅が広がったんです。その場で求められる役柄にきちんと対応していくのが役者だと思うので、今回は歌い手としても、聴き手の暮らしに寄り添うような気持ちで歌いました。僕にとっての新しい表現になったと思います。

――『下町ロケット』から映像にチャレンジしてみて、お芝居をする上で戸惑うことはどんなことでしたか?
【山崎育三郎】 ミュージカルは、常に拍手、笑い、涙……。お客様の反応がある中での芝居なんですよ。それが、カメラの前で、「用意!」って言われることにまず面食らったし……。でも、途中で、内に秘めているものは同じで、表現の仕方が違うだけなんだってことに気づけたのはよかったです。でも、一番きつかったのは、睡眠時間が削られたことかな。ミュージカルをやっているときっていうのは、毎日が規則正しいので、“寝る時間がない!”ってことはないんです。でも、ドラマはその連続で、あれにはビックリしました。

◆映画『レ・ミゼラブル』の後に、チケットが瞬く間に即完した

――ミュージカル界をとりまく状況も変わってきています。ミュージカル映画『レ・ミゼラブル』(2012年)やアニメ『アナと雪の女王』(2013年)の大ヒットがあって、ミュージカルに対する関心が高まっている。
【山崎育三郎】 “レミゼ”のとき、それはすごく感じました。映画がヒットしたとき、僕はちょうど帝劇で“レミゼ”の舞台に立っていて、一度、国際フォーラムで、映画のメインキャストのヒュー・ジャックマンさんとアン・ハサウェイさんとコラボするイベントがあったんです。僕は日本代表として歌も歌わせてもらいました。もともと、“レミゼ”は人気の演目なんですが、イベントの後に売り出された大阪のフェスティバルホールのチケットが、本当に飛ぶように売れて。瞬く間に即完したんです。そのとき、「ミュージカルしかやらない」なんて言ってちゃダメだ。ミュージカルファンを増やすっていうことはこういうことなんだ、って気づいた。「もっと新しいチャレンジをしていこう!」って井上(芳雄)さんや浦井(健二)さんと話して、「StarS」という僕ら3人で歌うコンサートを武道館で開催することにしたんです。そのときも、12000枚のチケットが完売して、嬉しかったですね。

――ミュージカル俳優の皆さんって、キャラクターも立ってますし、しゃべりも上手ですよね。
【山崎育三郎】 「見に来てくださるお客様がいて、自分たちの仕事は成立するんだ」ってことが、デビューの頃から身にしみてますからね。デビュー当時、僕のファンだっていう方が、2〜3人、出待ちしてくださって、「え? 僕のファンですか?」って最初は戸惑いながらサインして、握手して。それが、2〜3人が10人になり、30人になり、50人になり、徐々に増えていくんです。テレビに出てるわけじゃないので、急には増えない(笑)。ファンの方の顔が常に見えているし、よかったとかそうでもなかったっていうお客様の反応が、手に取るようにわかるんです。

――なるほど。
【山崎育三郎】 あと、ミュージカル俳優って、人前でしゃべる機会が多いんですよ。300人のお客さんの前でのディナーショーを、僕も20代前半から始めていて、そこは歌えばオッケー、芝居すればオッケーというわけではない。20歳で初めてファンクラブイベントをやったときなんか、「出たら“キャー!”ってなるのかな」なんて想像してたら、現実には拍手されただけ。「この子、何を話すのかしら?」って、目つきもなかなか厳しいんです(笑)。しかも、ほとんどが大人の女性で、お着物を着た方も少なくなくて。「ちゃんとしなきゃ!」って思いました(笑)。「いっくん、愛してる!」とかいう環境じゃなかったので、本当に、トークに関してはお客様に育てて頂いた感じです。
(文/菊地陽子)

関連写真

  • アルバム『1936 〜your songs〜』では、美空ひばり、福山雅治らの名曲をカバー
  • 現在はミュージカル『エリザベート』に出演中

オリコントピックス

あなたにおすすめの記事

メニューを閉じる

 を検索