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優香、ナチュラル演技で高まる女優としての再評価 同じグラドル出身の小池栄子とは対極ポジションへ

 隣りに引っ越してきた男の笑顔の裏の狂気に、一家が翻弄される心理サスペンス『火の粉』(フジテレビ系)。ユースケ・サンタマリアが演じる主人公のサイコパスぶりとともに、彼に得体の知れぬ恐怖を感じる主婦役の優香が物語の緊迫感を生んでいる。これまでバラエティタレントのイメージが強かった優香だが、ここ最近では出演作の好演が目立ち、女優として再評価の気運が高まっている。

『火の粉』(フジテレビ系)の好演が話題の優香

『火の粉』(フジテレビ系)の好演が話題の優香

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◆“グラビアアイドル”というジャンルのステータスを高めた優香

 現在はAKB48ら歌うアイドルグループによる戦国時代が続いているが、15〜20年ほど前はグラビアアイドルが花盛りだった。『ヤングジャンプ』(集英社)『ヤングマガジン』(講談社)など青年コミック誌や『週刊プレイボーイ』(集英社)など男性誌のほか、『sabra』(小学館)など新興グラビア誌の創刊も続き、表紙を始め水着のアイドルたちが競っていた。

 トップランクは小池栄子、佐藤江梨子、井川遥、釈由美子、酒井若菜といった面々で、1997年に“Fカップ女子高生”としてデビューした優香もそのひとりであり、かつ特別視されていた。大手事務所のホリプロが初めて送り出したグラビアアイドルが彼女。水着グラビア自体のステータスも優香が高めたと言われている。

 人気グラドルの多くは次第に女優業に進出。そのなかで、いち早く評価されたのは小池栄子だった。映画『接吻』や『八日目の蝉』で日本アカデミー賞優秀助演女優賞などを受賞。ドラマでも『リーガル・ハイ』(フジテレビ系)、『マッサン』(NHK総合)などから放送中の『世界一難しい恋』(日本テレビ系)まで脇を固める好演が続く。グラビア時代は“癒し系”が主流のなかで“威圧系”として独自のポジションを築いたが、その強い存在感を演技にも生かしている。

 同い年(1980年生まれ)の優香は、“癒し系”の代表格で、2000年には早々に水着から卒業。連ドラ『20歳の結婚』(TBS系)や映画『恋に歌えば♪』に主演し、大河ドラマ『新選組!』(NHK総合)などにも出演したが、当初女優業ではいまひとつ大きなインパクトを残せなかった。

 一方、『王様のブランチ』(TBS系)や『グータン』(フジテレビ系)などでMCを長年務め、『志村けんのバカ殿様』(フジテレビ系)のコントでバカ姫を演じたりと、バラエティタレントのイメージが視聴者にも浸透。2013年の深夜ドラマ『ハクバノ王子サマ』(日本テレビ系)では、1話放送まで主演が誰か伏せられ“国民的女優”とされていたが、それが優香と明かされると「違和感がある」との声が上がった。知名度はともかく、女優としての認知は低かったため。ただ、このドラマでは32歳で彼氏のいない教師を演じ、独身女性の孤独感を醸し出して共感も呼んだ。

◆アクの薄さが作品に溶け込むナチュラル演技への開眼

 近年は、9年続けた『王様のブランチ』のMCは2012年3月で卒業。15年に及ぶ志村けんの冠番組レギュラーも昨年3月終了の『志村笑!』(フジテレビ系)が最後になった。現在、バラエティのレギュラーは『Qさま!!』(テレビ朝日系)のみ。そのぶん、昨年は大河ドラマ『花燃ゆ』(NHK総合)や映画『ギャラクシー街道』に出演。今年1月期には木曜時代劇『ちかえもん』(NHK総合)、『臨床犯罪学者 火村英生の推理』(日本テレビ系)と連ドラに2本出演して、映画『人生の約束』も公開。ここに来て、女優業へ改めて本腰を入れたようだ。そして今期の『火の粉』ではヒロイン役を射止めた。

 彼女が演じる主婦の梶間雪見は、隣人の武内真伍(ユースケ)の自分たち家族への親切すぎる振る舞いに薄気味悪さを感じていた。義母や夫が武内に心酔し、幼い娘も彼に懐くなか、隠していた過去の流産を家族に知られ、娘への虐待を疑われ、一時は家を出る。何とか武内の正体を暴こうとするが……という役どころ。武内への怯えを押し殺し、精神的に追い詰められながら、家族に降りかかる“火の粉”を払おうと奮い立つ。災難に遭う普通の主婦の背筋の震えが伝わり、武内の怖さを引き立てる、優香の地道な演技が光る。

 役に強い芯を通していく小池と比べ、優香は女優として強い印象を残すタイプではなかった。だが、最近はそのアクの薄さが作品に溶け込むナチュラルさに転じ、『火の粉』では不安げなぶん、揺れ動く心情がリアルに映る。何段階か上の演技に開眼したかのよう。

 ちなみに『人生の約束』には小池も出演していて、優香が東京のIT企業で社長を支える秘書、小池は富山の港町の快活な女性漁師と正反対の役柄だった。群雄割拠のグラビア戦国時代から15年以上経ち、女優の世界に勝負の場を移してからは小池が一歩抜きん出たが、対極のキャラクターだった優香がキャリアを経て追い上げ、再び小池と対照的なポジションを確立しつつある。2人とも35歳の今もグラビアを彩ったビジュアルが健在なのは共通点だ。
(文:斉藤貴志)

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