さっきまで歌っていたジェイムス・ベイが日本語を話している? と思ったら、正体は栗原類!? この年始に驚きのCMがウェブで公開された。
昨年、新人でありながらUKのアルバム・チャートの首位を奪取し、その勢いは世界レベルに拡大。今年の第58回グラミー賞では3部門にノミネートされているのがジェイムス・ベイである。彼は、当初から姿形が栗原類に似ているという声があったことから、日本デビュー作『カオス&ザ・カーム』が2月5日に発売されるにあたり、CMに当の栗原が起用されたというわけだ。その映像の仕上がりは、ふたりの雰囲気が似ているというユーモアと、それでいてジェイムスの歌の世界を大切に伝える繊細さとが同居。栗原の洋楽好きはよく知られているので、これは最高のプロモーションと言える。
さて、現在25歳のジェイムスは11歳でギターに目覚め、16歳からひとりで歌いはじめたキャリアの持ち主。その才能はキース・リチャーズやロン・ウッドも高く評価しているほどである。彼の音楽が形作られるのには、両親のレコード・コレクションをきっかけにクラシック・ロックに浸ったことが大きそうだ。そして芯のある歌声はじつに魅力的。ソロ・アクトの大成功はサム・スミス以来だと盛んに言われているが、立ち位置的にはその前のジェイク・バグの登場時を思わせる。3月の東京、大阪を廻る初来日公演で、その魅力が明らかになる。
こんなふうに、今年の序盤は強烈な存在感のシンガー・ソングライターが目につく。続いてはオーストラリア出身のシーア。彼女といえば素顔を見せないことに象徴されるトリッキーなイメージが強いが、新作『ディス・イズ・アクティング』も話題満載だ。ジャケット写真が普通じゃないのは当然のこと、なんと今作ではシーアがほかのアーティストのために書き下ろした楽曲を自ら歌っている。例えばリード曲「アライヴ」は、アデルの『25』のセッションで彼女と共作したもの。しかもこの曲のビデオには天才空手少女として知られる高野万優が全面的に出演、撮影にはなんとシーア本人も来日し、千葉で約1週間かけて行ったという。こんなふうに仕掛けだらけのシーアは、海外ではレディー・ガガに続く異端のポップ・ヒロインとして認知されているが、音楽自体はむしろ幅広い層にアピールする大衆性をはらんでいる。実はもはや20年近く音楽業界に君臨している彼女だけに、今回の話題作で日本での認知度がもっと上がってほしいところである。
もうひとり紹介したいのはエリー・ゴールディング。UK出身の、世界的にはすでにトップクラスのアーティストである。ただしエリーもまた、ただのシンガー・ソングライターとは毛色が違う人だ。まずゼッドやカルヴィン・ハリスなど、EDMの楽曲に何度も起用されてきたこと。それからイギリス皇室の結婚パーティーやホワイトハウスのクリスマスで歌った経歴があるように、セレブ寄りのイメージが強いこと。そして鍛えられた美しい身体によって、海外の女性誌やフィットネス雑誌のカバーをたびたび飾っていること、等々。肝心の音楽のクオリティも高く、昨年ヒットした「ラヴ・ミー・ライク・ユー・ドゥ」は、これまたグラミーの2部門の候補に上がっている。同曲を収録した3作目『デリリアム』は2月にリリース予定で、大きなスケールを感じさせる力作に仕上がっている。
このように、ひと口にシンガー・ソングライターと言っても、あり方は多種多彩。今の音楽シーンは、そこまで込みで楽しむべきなのである。
文/青木優
(コンフィデンス 16年1月25日号掲載)
昨年、新人でありながらUKのアルバム・チャートの首位を奪取し、その勢いは世界レベルに拡大。今年の第58回グラミー賞では3部門にノミネートされているのがジェイムス・ベイである。彼は、当初から姿形が栗原類に似ているという声があったことから、日本デビュー作『カオス&ザ・カーム』が2月5日に発売されるにあたり、CMに当の栗原が起用されたというわけだ。その映像の仕上がりは、ふたりの雰囲気が似ているというユーモアと、それでいてジェイムスの歌の世界を大切に伝える繊細さとが同居。栗原の洋楽好きはよく知られているので、これは最高のプロモーションと言える。
さて、現在25歳のジェイムスは11歳でギターに目覚め、16歳からひとりで歌いはじめたキャリアの持ち主。その才能はキース・リチャーズやロン・ウッドも高く評価しているほどである。彼の音楽が形作られるのには、両親のレコード・コレクションをきっかけにクラシック・ロックに浸ったことが大きそうだ。そして芯のある歌声はじつに魅力的。ソロ・アクトの大成功はサム・スミス以来だと盛んに言われているが、立ち位置的にはその前のジェイク・バグの登場時を思わせる。3月の東京、大阪を廻る初来日公演で、その魅力が明らかになる。
こんなふうに、今年の序盤は強烈な存在感のシンガー・ソングライターが目につく。続いてはオーストラリア出身のシーア。彼女といえば素顔を見せないことに象徴されるトリッキーなイメージが強いが、新作『ディス・イズ・アクティング』も話題満載だ。ジャケット写真が普通じゃないのは当然のこと、なんと今作ではシーアがほかのアーティストのために書き下ろした楽曲を自ら歌っている。例えばリード曲「アライヴ」は、アデルの『25』のセッションで彼女と共作したもの。しかもこの曲のビデオには天才空手少女として知られる高野万優が全面的に出演、撮影にはなんとシーア本人も来日し、千葉で約1週間かけて行ったという。こんなふうに仕掛けだらけのシーアは、海外ではレディー・ガガに続く異端のポップ・ヒロインとして認知されているが、音楽自体はむしろ幅広い層にアピールする大衆性をはらんでいる。実はもはや20年近く音楽業界に君臨している彼女だけに、今回の話題作で日本での認知度がもっと上がってほしいところである。
もうひとり紹介したいのはエリー・ゴールディング。UK出身の、世界的にはすでにトップクラスのアーティストである。ただしエリーもまた、ただのシンガー・ソングライターとは毛色が違う人だ。まずゼッドやカルヴィン・ハリスなど、EDMの楽曲に何度も起用されてきたこと。それからイギリス皇室の結婚パーティーやホワイトハウスのクリスマスで歌った経歴があるように、セレブ寄りのイメージが強いこと。そして鍛えられた美しい身体によって、海外の女性誌やフィットネス雑誌のカバーをたびたび飾っていること、等々。肝心の音楽のクオリティも高く、昨年ヒットした「ラヴ・ミー・ライク・ユー・ドゥ」は、これまたグラミーの2部門の候補に上がっている。同曲を収録した3作目『デリリアム』は2月にリリース予定で、大きなスケールを感じさせる力作に仕上がっている。
このように、ひと口にシンガー・ソングライターと言っても、あり方は多種多彩。今の音楽シーンは、そこまで込みで楽しむべきなのである。
文/青木優
(コンフィデンス 16年1月25日号掲載)
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2016/01/30