ドラマ『相棒』や『リーガルハイ』などを手がけ、いまもっとも多忙な超売れっ子脚本家・古沢良太氏に時間をもらうことができた。いま自身が書きたいことと書けること、仕事への向き合い方、脚本家としてのポリシーを、一言ひとこと考え込みながら絞りだすように語ってくれた。徹夜明けで応じてくれた取材のなかでは、ときに過激な言葉も飛び出したが、エンタテインメントの表現者としての古沢氏の発言は、そこにかける氏のポリシーであり、それ以上の意味をもたない。エンタテインメントを語る言葉としてあえてそのままの表現で掲載させていただく。自らを“時限爆弾を作るのが好きなやさしいテロリスト”とする真意とは?
◆いつかすごいものを作れるかもしれない
話題沸騰中の月9ドラマの異色作『デート〜恋とはどんなものかしら〜』(フジテレビ系)がいよいよ週明け23日に最終話を迎え、ウソと笑いと愛が交錯する映画最新作『エイプリルフールズ』が4月1日から公開される。古沢氏が手がけたこの2作は、ともにラブストーリー。『相棒』シリーズ(テレビ朝日系)や『リーガルハイ』(フジテレビ系)など、これまで恋愛がメインの物語を書くイメージがなかった古沢氏だが、最近の志向がそちら側に向いているのだろうか。
「(考え込みながら)えーっとですね……。この仕事を始めた頃は、本当に自分に技術がなくて、書けるものが限られていたんですけど、生活していくためにオファーされる仕事をほとんど断らずに受けていて。例えば『相棒』に参加した当初、僕は刑事ドラマなんて全然書けなかったんです。サスペンスも書けなかったけど、一生懸命勉強して、一つひとつ仕事をこなしていくうちに、技術が上がり、書けるものが増えていった。昔は書けないと思っていたタイプのものでも、だんだん書けるかもしれないというふうになってきたなかで、いまラブストーリーを書いているんだと思うんですよね。自分のなかでそういうテーマに興味があるということではなくて、これまでできなかったことにいま挑戦している感じです」
そういう流れのなかでたどり着いた『デート』。視聴率も好調であり、毎週おもしろく拝見していることを伝えると「よかった……」と意外にも心から安堵した表情を見せる。そして、長谷川博己演じる高等遊民を自称する谷口巧と、思いがけず彼を上回る強烈なキャラクターになってしまったという杏演じる藪下依子の設定なども、世間話をしているように気さくに話してくれた。そんな古沢氏の脚本を書き続ける原動力を聞いてみた。
「それはいろいろありますね。小さい頃から何か人とは違うことを考えて、人を笑わせる、喜ばせることがすごく好きだったので、いまでもそのこと自体が好きっていうのが根本にあります。それと、圧倒的におもしろいものを作りたいとずっと思っています。何か思いついたときは“ものすごくおもしろいものができるんじゃないか!?”って期待するんだけど、やっぱり自分の力が及ばなくて、今回もこの程度だったなっていつも思う。それでも前よりはうまくできるようになったところもあるので、続けていけば、いつかすごいものを作れるかもしれない、というところを目指してやっていますね」
「子どもの頃から、ひとりで絵を描いたり、工作をするのが好きでした。いまでもこうやって脚本を書いて、ドラマや映画を作っているとき、ちょっと不謹慎だけど、時限爆弾を作っているような感覚があって。“これが世に出たら、すげーことが起こるぞ!”って思いながらコツコツと作っているんだけど、意外と大したことなくて。でもそうやってニタニタしながら、爆弾を作っているのが好きな、やさしいテロリストなんです(笑)」
◆全てのキャラクターを自分で演じながら書く
穏やかな口調からの、このご時世でドキりとするような最後の言葉だが、発言を通して読んでもらえれば、エンタテインメントに真摯に向き合う表現者であり、気鋭のクリエイターである古沢氏ならではの斬新かつ絶妙な例えであることが理解できる。いたずら心もにじませる会話の節々からは、作品作りに携わることを心の底から楽しんでいるふうな感じがうかがえる。脚本だけでなく、作品として仕上げる演出への興味はないのだろうか?
「よく訊かれるんですけどねぇ。なんかね、めんどくさい(笑)。脚本を書き上げた時点で、自分のなかでは終わるんです。もう一回それに向かう情熱は……けっこう難しいなあ。あと僕は、全てのキャラクターを自分で演じながら、脚本を書くんですよ。登場人物は全員、自分だと思って書いているので。だから書き上げた時点で、自分のなかではもう完成しているので、俳優さんに対して『その言い方は違う!』とか、すごく細かく演出をつけるイヤな監督になると思います(笑)。脚本はパーツのひとつと割り切れるけど、全てを自分でやるハメになったら……とても憂鬱な気持ちになりますね」
今夏は舞台へとステージを変えて、大泉洋らの劇団TEAM NACSの本公演『悪童』の脚本という大仕事が待っている。ひっきりなしに舞い込むであろうオファーのなかから、どのように仕事を選んでいるのかを聞くと、これまでの話から感じた人柄から、なんとなく予想できた答えが返ってきた。
「なんとなくです。とくに明確な理由があるわけじゃなくて、タイミングですね。次に何をやろうかな? と思っているときに声をかけてもらえると“じゃあやろうかな”って気持ちになる。それ以外のときに声をかけられると『いや、いいです』ってなる。それくらいです(笑)」
そんななんとなくのなかでも、そのときに自身が関わるべき作品を自然に引き寄せ、それに携わることになる引きの強さをきっと持っているのだろう。それが並外れた売れっ子になるということなのかもしれない。
「そんなことないと思います。いつも後悔しながらやっていますから。『デート』もすごく自信なかったですし……“今回こそ大失敗するんじゃないか”って、毎回不安のなかでやっているんです」
◆いつかすごいものを作れるかもしれない
話題沸騰中の月9ドラマの異色作『デート〜恋とはどんなものかしら〜』(フジテレビ系)がいよいよ週明け23日に最終話を迎え、ウソと笑いと愛が交錯する映画最新作『エイプリルフールズ』が4月1日から公開される。古沢氏が手がけたこの2作は、ともにラブストーリー。『相棒』シリーズ(テレビ朝日系)や『リーガルハイ』(フジテレビ系)など、これまで恋愛がメインの物語を書くイメージがなかった古沢氏だが、最近の志向がそちら側に向いているのだろうか。
「(考え込みながら)えーっとですね……。この仕事を始めた頃は、本当に自分に技術がなくて、書けるものが限られていたんですけど、生活していくためにオファーされる仕事をほとんど断らずに受けていて。例えば『相棒』に参加した当初、僕は刑事ドラマなんて全然書けなかったんです。サスペンスも書けなかったけど、一生懸命勉強して、一つひとつ仕事をこなしていくうちに、技術が上がり、書けるものが増えていった。昔は書けないと思っていたタイプのものでも、だんだん書けるかもしれないというふうになってきたなかで、いまラブストーリーを書いているんだと思うんですよね。自分のなかでそういうテーマに興味があるということではなくて、これまでできなかったことにいま挑戦している感じです」
そういう流れのなかでたどり着いた『デート』。視聴率も好調であり、毎週おもしろく拝見していることを伝えると「よかった……」と意外にも心から安堵した表情を見せる。そして、長谷川博己演じる高等遊民を自称する谷口巧と、思いがけず彼を上回る強烈なキャラクターになってしまったという杏演じる藪下依子の設定なども、世間話をしているように気さくに話してくれた。そんな古沢氏の脚本を書き続ける原動力を聞いてみた。
「それはいろいろありますね。小さい頃から何か人とは違うことを考えて、人を笑わせる、喜ばせることがすごく好きだったので、いまでもそのこと自体が好きっていうのが根本にあります。それと、圧倒的におもしろいものを作りたいとずっと思っています。何か思いついたときは“ものすごくおもしろいものができるんじゃないか!?”って期待するんだけど、やっぱり自分の力が及ばなくて、今回もこの程度だったなっていつも思う。それでも前よりはうまくできるようになったところもあるので、続けていけば、いつかすごいものを作れるかもしれない、というところを目指してやっていますね」
「子どもの頃から、ひとりで絵を描いたり、工作をするのが好きでした。いまでもこうやって脚本を書いて、ドラマや映画を作っているとき、ちょっと不謹慎だけど、時限爆弾を作っているような感覚があって。“これが世に出たら、すげーことが起こるぞ!”って思いながらコツコツと作っているんだけど、意外と大したことなくて。でもそうやってニタニタしながら、爆弾を作っているのが好きな、やさしいテロリストなんです(笑)」
◆全てのキャラクターを自分で演じながら書く
穏やかな口調からの、このご時世でドキりとするような最後の言葉だが、発言を通して読んでもらえれば、エンタテインメントに真摯に向き合う表現者であり、気鋭のクリエイターである古沢氏ならではの斬新かつ絶妙な例えであることが理解できる。いたずら心もにじませる会話の節々からは、作品作りに携わることを心の底から楽しんでいるふうな感じがうかがえる。脚本だけでなく、作品として仕上げる演出への興味はないのだろうか?
「よく訊かれるんですけどねぇ。なんかね、めんどくさい(笑)。脚本を書き上げた時点で、自分のなかでは終わるんです。もう一回それに向かう情熱は……けっこう難しいなあ。あと僕は、全てのキャラクターを自分で演じながら、脚本を書くんですよ。登場人物は全員、自分だと思って書いているので。だから書き上げた時点で、自分のなかではもう完成しているので、俳優さんに対して『その言い方は違う!』とか、すごく細かく演出をつけるイヤな監督になると思います(笑)。脚本はパーツのひとつと割り切れるけど、全てを自分でやるハメになったら……とても憂鬱な気持ちになりますね」
今夏は舞台へとステージを変えて、大泉洋らの劇団TEAM NACSの本公演『悪童』の脚本という大仕事が待っている。ひっきりなしに舞い込むであろうオファーのなかから、どのように仕事を選んでいるのかを聞くと、これまでの話から感じた人柄から、なんとなく予想できた答えが返ってきた。
「なんとなくです。とくに明確な理由があるわけじゃなくて、タイミングですね。次に何をやろうかな? と思っているときに声をかけてもらえると“じゃあやろうかな”って気持ちになる。それ以外のときに声をかけられると『いや、いいです』ってなる。それくらいです(笑)」
そんななんとなくのなかでも、そのときに自身が関わるべき作品を自然に引き寄せ、それに携わることになる引きの強さをきっと持っているのだろう。それが並外れた売れっ子になるということなのかもしれない。
「そんなことないと思います。いつも後悔しながらやっていますから。『デート』もすごく自信なかったですし……“今回こそ大失敗するんじゃないか”って、毎回不安のなかでやっているんです」
コメントする・見る
2015/03/20