今夜（5日）、NHKの大河ドラマ『軍師官兵衛』（毎週日曜　後8：00　総合ほか）がスタートする。主演は人気グループ・V6の岡田准一。主人公の黒田官兵衛は、豊臣秀吉の軍師として活躍した戦国時代の武将だ。岡田のファンはもちろん、『江〜姫たちの戦国〜』（2011年）以来3年ぶりの“戦国もの”として注目されているであろう今年の大河。そのどちらでもない人にも、制作統括の中村高志チーフプロデューサー（CP）は「官兵衛は町工場の2代目社長のような存在。現代人が共感できる人物」と“企業ドラマ”にも通じる要素をアピールする。

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　官兵衛は、播磨国（兵庫県）の姫路城主の長男として生まれ、父・職隆（もとたか）は播磨有数の豪族・小寺家の家老。もともとは、地方の小大名の一家老に過ぎなかった。当時、播磨は東の織田、西の毛利、東西を大国に挟まれ揺れていた。小寺家当主の政職（まさもと）は、優柔不断な性格で、己の保身を図ることだけは敏い。そんなやっかいな主君に翻弄される官兵衛の境遇を中村CPは「愛知県の自動車メーカー（織田）と広島の自動車メーカー（毛利）の両方に部品を供給していた孫請けの町工場」と例える。

　織田と毛利、どちらに付くか顔色を窺っている状態から、信長の将来性をいち早く見抜いたのが官兵衛だった。当主に裏切られ、1年以上、幽閉されるというどん底からも這い上がり、秀吉の天下統一を演出する。中村CPは「小さな町工場のオヤジが全国に打って出るストーリーは企業のサクセスストーリーと、秀吉の軍師として各地を転々とする姿は単身赴任の企業戦士と重なる」と続けた。生涯、側室をもたず妻だけを愛し続けた律儀なところも、どこか現代的で好感が持てそうだ。

　さらに、中村CPが声を大にするのは「官兵衛が生き残りの達人である」ということ。武力ではなく智力を駆使し、生涯1度も合戦で負けを知らなかった官兵衛。信長、秀吉、家康の三英傑に重用され、九州・福岡藩52万石の礎を築き、その子孫は大大名として代々栄えた。どんなに不確かで不安な時代でも生き残る人間はいる。キャッチコピーの通り、「今だって、乱世だ。」。官兵衛はどうやって生き残っていったのか…、本ドラマではそれが描かれる。

　今回、オリジナルで脚本を手がける前川洋一氏は、昨年大ヒットした『半沢直樹』（TBS）と同じ池井戸潤氏原作の企業ドラマ『下町ロケット』や『空飛ぶタイヤ』（共にWOWOW）を手がけ、骨太な人物描写に定評がある脚本家。「生き残るためには裏切りなど日常茶飯事の中で、官兵衛もまた、幾度も裏切られ、痛い目を見ます。しかし、彼は決して人を裏切らない正直者でした。そこが彼の魅力の一つだと思うので、大切に描いていきます」と意気込む。

　演出を担当する田中健二専任ディレクターも「戦国時代という極限状態下でこそ人間の本質があぶりだされ、その本質は今も昔も大して変わらないと思っています」と思いは一緒。「戦国時代には現代の我々からするとびっくりするような常軌を逸したエピソードがたくさんあって、それをエンターテイメントとして楽しみながら、ピンチに追い込まれたときどうやって生き残るか。自分だったら何を守るか。官兵衛のように振る舞えるのか。時に自分を重ね合わせて、楽しんでいただけたら幸いです」と呼びかけていた。

　出演は、黒田官兵衛役に岡田准一、正室・光（てる）役に中谷美紀、父・黒田職隆役に柴田恭兵、小寺政職役に片岡鶴太郎、織田信長役に江口洋介、羽柴秀吉役に竹中直人、竹中半兵衛役に谷原章介ほか。