映画『おおかみこどもの雨と雪』（公開中）を手掛けたアニメーション映画監督・細田守氏が、この度ORICON STYLEのインタビューに応じた。同作は興行収入41億円、動員340万人を突破。「作品を観た方々がこの映画を広めて、ヒットさせてくださった」と感謝し、観客の共感を得た要因を分析した。

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　同作は19歳のごく普通の大学生・花がおおかみおとこと恋に落ち、姉の雪と弟の雨と言う「おおかもこども」を授かり、出産や子育てを通して母親として成長する姿を描く。制作当時、細田監督の夫人も妊娠中で、7月の作品公開後に第1子が誕生。「今だから言えるんですけど、作品の中には妻の妊娠という出来事もすごく反映されているじゃないかな」と優しく笑う。

　作品の着想について「親が子どもを産んで育てるというのはすごく奇跡的なこと。でも、身近すぎてなかなか気づかないですよね。僕自身も結婚したら子どもができるのはすごく当たり前なことと思っていたんです。けど、実際はそう言うものでもなかった」と、“親になりたい”と願う自身の憧れを重ねてのスタートだったという。

　「だから、改めて『親になるってすごい』って思うんです。当たり前に思っている身近なことも、そのなかに大事なことや奇跡的なことが詰まっていると感じてもらえたら嬉しい」と力説し、“おおかみこども”という誰にも相談もできない秘密を抱えながらも、前向きに親である喜びを感じるヒロイン・花に込めた想いを明かした。

　同作が完成し、公開された後に細田監督は“父親”となった。だからこそ、劇中に描かれている主人公・花には自身が「こんなふうに子どもを受け入れられる親になりたい」という、憧れの母親像を投影したと明かす。劇中の花は、子どもの主体性を尊重する“受容の母”として描かれている。

　「子どもが生きていくなかで、今は人間社会、学校社会が必ずしも平坦な道であるとはいえないですよね。だから僕ら親は、子どもが対面する困難を受け入れたい。こんなにしんどい世の中に子どもを放つ、親としての意気込みのような気持ちから、花のヒロイン像が出来上がっていきましたね」。

　父親になる前だからこそ、理想を投影した同作。もしも、映画の完成の前に子どもが生まれていたら？ という質問には「作品自体は随分変わっていたでしょうね。もし子どもが先に生まれていたら、僕はこういうお話を作れなかった」と、巡りあわせの奇跡に微笑む。

　子育てのリアルさだけを追求するのではなく、親になりたい、自分が親になったらこうありたいという憧れを詰め込んだ“花”だからこそ、同作はすでに親となった世代だけではなく、若い女性たちも含めた幅広い年齢層から高い支持と共感を獲得。花は母親だが、監督自身の子育て観も同作を通じてみることができ、思いを重ねる父親たちの心も掴んだといえそうだ。

　映画『おおかみこどもの雨と雪』