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円谷プロの先陣が現役クリエイターに辛口エール

 「ウルトラマン」シリーズの円谷プロダクションが1968年に製作した、怪奇ミステリードラマ『怪奇大作戦』が、30年以上もの時間を経てDVD-BOXとして復刻された。当時、日曜の夜7時台で、平均視聴率が20%超えと社会現象を巻き起こした同作の橋本洋二プロデューサー、飯島敏宏監督、脚本家の上原正三の3人にORICON STYLEでは取材を敢行。映画やテレビで活躍する後輩のクリエイター陣に「もっとオリジナルなものを考えてやったらいいのに」と、一製作者として手厳しくも温かいエールを送った。

社会現象を巻き起こし、今もなお後輩クリエイターたちに多大な影響を与える(左から)橋本洋二プロデューサー、飯島敏宏監督、脚本家の上原正三氏 (C)ORICON DD.inc

社会現象を巻き起こし、今もなお後輩クリエイターたちに多大な影響を与える(左から)橋本洋二プロデューサー、飯島敏宏監督、脚本家の上原正三氏 (C)ORICON DD.inc

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■視聴者を子どもから親たちへ…熱狂的なファンを獲得した『怪奇』

 同作が放送されたのは『ウルトラセブン』の後枠。子供向けの作品が多い時間帯だったが、製作サイドから「子どもだけでなく、大人の視聴者も巻き込む作品を」という要望があり「こちらとしては、願ったりかなったり(笑)」と、腕を鳴らしてのスタートだった。注目高まる第1話は『壁ぬけ男』。一度成功したマジシャンが、挫折の果てにもう一度スポットライトを浴びようと摩訶不思議な現象(事件)を引き起こし、最後には自らの命を絶ってしまうという、栄光と挫折を知る一人の男の悲哀を描いた。

 当時“ゲゲゲの鬼太郎”がけん引した妖怪ブームとは一線を画し、怪奇現象を引き起こす犯罪の根底にある「人間の悲哀」を描いた同作は、子ども主軸の放送枠でありながら親たちからも熱狂的なファンを獲得。物語と映像に衝撃を受けた世代が今や映画やドラマで活躍し、同作に変わらぬ尊敬の念を抱いている。

 その気持ちの表れから、同作に関するオマージュ作品は非常に多い。アニメ映画『クレヨンしんちゃん』シリーズや、堤幸彦監督はTBS系ドラマ『ケイゾク』で『怪奇』のドラマタイトルをそのまま引用。岩井俊二監督の映画『ヴァンパイア』も同作から影響を受けている。これについて飯島監督は「子どもの時に刺激を受けてこの世界に入りましたと言っていただけると、嬉しい気持ちもありますよ」と笑顔をみせた。

■そろそろオマージュ卒業したらどう?

 ただ、自身の作品に多くのオマージュが存在することを必ずしも手放しで喜んでいるわけではない。口火を切ったのは飯島監督で「新しい技術も発達したし、そろそろオマージュ卒業したらどう? っていうのも率直な意見かな(笑)」とポツリ。「いろいろな作品が存在しているのは知っていますけど、今は僕らの時代より、CGもあるしはるかに技術も発達しているでしょ」と、柔らかな口調は崩さずだが、少し厳しい話が始まった。

 「子どもの頃に刺激を受けた作品を、もっと深く掘り下げて、いろいろ再現してやろうという作り手の気持ちはわかる」と、後輩達の気持ちを十分に汲んだうえで「その一方で、もっとオリジナルなものを考えてやったらいいのになぁ〜という気持ちもあります。新しいものでお客を楽しませて欲しい。まぁ、みんな知っている人たちだから、あえてエールを送る意味でちょっと手厳しく言っておこうかな」と優しく笑う。

 橋本氏も続いて「僕らの時は何でも手作りだった。今の技術なら何てことないシーンでも、当時は一生懸命考えて、アイデアをひねくり出していた」と述懐。「スタジオに缶詰状態で、ご飯が届いたから“お昼なんだな”と。隣のスタジオの人が帰っていくから夜か。誰か来たから朝か…みたいな(笑)」と、作品を生み出すことにガムシャラだった時代が確かにあったという。

 上原氏も自らを「戦争を生きぬいた僕らの世代は“飢餓児童”」と例え、「精神の奥の奥までカラカラに渇いていた。テレビは締め切りがタイトで、撮影現場は映画ほど贅沢じゃない。でも1本撮り切らないと明日の飯が食えないしね」と振り返り、なりふり構わず“新しいもの”を送り出し、時代を切り出してきた気概を明かした。

 “復刻 円谷TVドラマライブラリー”と銘打ち、色あせない名作ドラマとして語り継がれてきたDVD-BOX『怪奇大作戦』の上巻は現在発売中。下巻は11月21日に発売される。

 ドラマ『怪奇大作戦』

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