今年のカンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品し、話題を呼んだ時代劇初の3D映画『一命』が15日より公開される。メガホンを取った三池崇史監督は「飛び出す海老蔵と飛び出す貧乏を観てほしい(笑)」と冗談も言うが、同作では3Dの“飛び出す”イメージを覆す映画体験ができるに違いない。監督も「日本の空間、時代劇の薄暗い感じを表現するのに3Dはぴったり。日本映画の可能性を感じてもらえれば嬉しい。でも、2Dで観ても、3Dで観ても作品の良さは変わらないから、好みでどうぞ」と自信をのぞかせた。
昨年公開の『十三人の刺客』に続いて、50年前に一度映画化されたことがある物語の映画化が続いた。「そのこと自体に意味はない。何度も映画化される、そういう運命を背負った作品というだけのこと。何か新しいものにしてやろうなんて思いは不純です」。
『一命』は、1962年に小林正樹監督が映画化(タイトルは『切腹』)したことがある滝口康彦の『異聞浪人記』が原作。市川海老蔵と瑛太のダブル主演で、貧しくとも、愛する人とともに生きることを願った二人の侍の生き様を通して、世の不条理を描く。共演は役所広司、満島ひかりら。
「映画のテーマとか、狙いとか、メッセージとか、作り手側の思いとか、どうでもいいと思っているし、僕には必要ない。自分はいち監督として参加しているだけで、誤解を恐れずに言うなら、この映画を通じて伝えたいメッセージなんて僕にとって必要ないというか、いつも伝えたいメッセージなんてないんですよ。そういうことに囚われず、こだわらず、ただ真摯に映画を作ろう、表現しようとすれば、自分たちの時間の最先端に出来上がったものは新しいに決まっているし、自然にオリジナリティは出ているものだと思う。過度な演出は極力避けてシンプルに作りました」
演出という鎧を剥がされてむき出しのまま、セリフだけを持って放り出された役者たちは、独特の佇まいで映画の中にしっかりと存在している。いままでに見たことがないような海老蔵や瑛太にも驚かされる。「自然と生まれたものを撮っていっただけですよ。彼らがとても光っているなっていう印象は撮りながら僕も思いました」。
さて、物語だが、改易や減封による主家の廃絶で浪人が途絶えることのなかった江戸初期に流行った狂言切腹を題材にしている。路頭に迷った浪人が「切腹のためお庭を拝借したい」と大名の家を訪れる。面倒を避けたい諸侯は金品を与えて、帰らせる。武士道を象徴する切腹が、体のいいゆすりの手段として利用されたのだ。
「江戸初期の人たちがどんなふうに生きたかなんて、想像もつかないし、理解しようというのも失礼な話だと思う。ただ、本来の自分たちの生きる場所を失くして、路頭に迷っているという境遇は、いつの世にもありうる。だから登場人物たちに同情する必要はないんですよね、自分もそうなるかもしれないんだから」。
三池監督の生きる場所はやっぱり「映画ですか?」と問えば、案の定「そういうことにもあんまり興味ないの」と突き放された。「自分が本当になりたかったのは、ブルース・リーのような格闘家であったり、バイクのレーサーであったり。憧れたけど、自分には素養が全くないと悟った時の喪失感は何度も味わっている。妥協の連続ですよ」
では、なんで映画監督に? 「映画を作るという行為自体は、自分にとってすごく楽なんだよね。ただ一生懸命やればいいだけだから。監督にはやらなきゃいけないことがいっぱいあるし、やっているうちに時間が経つのも忘れて夢中になれる。常に今が精一杯で、先のことなんて考える余裕もない。だから不安に思う必要もない。いつだって、それどころじゃないんだから」と事も無げに話してくれた。
映画『一命』は10月15日(土)より全国公開(2D・3D同時上映)。
【動画】映画『一命』予告編⇒
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昨年公開の『十三人の刺客』に続いて、50年前に一度映画化されたことがある物語の映画化が続いた。「そのこと自体に意味はない。何度も映画化される、そういう運命を背負った作品というだけのこと。何か新しいものにしてやろうなんて思いは不純です」。
「映画のテーマとか、狙いとか、メッセージとか、作り手側の思いとか、どうでもいいと思っているし、僕には必要ない。自分はいち監督として参加しているだけで、誤解を恐れずに言うなら、この映画を通じて伝えたいメッセージなんて僕にとって必要ないというか、いつも伝えたいメッセージなんてないんですよ。そういうことに囚われず、こだわらず、ただ真摯に映画を作ろう、表現しようとすれば、自分たちの時間の最先端に出来上がったものは新しいに決まっているし、自然にオリジナリティは出ているものだと思う。過度な演出は極力避けてシンプルに作りました」
演出という鎧を剥がされてむき出しのまま、セリフだけを持って放り出された役者たちは、独特の佇まいで映画の中にしっかりと存在している。いままでに見たことがないような海老蔵や瑛太にも驚かされる。「自然と生まれたものを撮っていっただけですよ。彼らがとても光っているなっていう印象は撮りながら僕も思いました」。
さて、物語だが、改易や減封による主家の廃絶で浪人が途絶えることのなかった江戸初期に流行った狂言切腹を題材にしている。路頭に迷った浪人が「切腹のためお庭を拝借したい」と大名の家を訪れる。面倒を避けたい諸侯は金品を与えて、帰らせる。武士道を象徴する切腹が、体のいいゆすりの手段として利用されたのだ。
「江戸初期の人たちがどんなふうに生きたかなんて、想像もつかないし、理解しようというのも失礼な話だと思う。ただ、本来の自分たちの生きる場所を失くして、路頭に迷っているという境遇は、いつの世にもありうる。だから登場人物たちに同情する必要はないんですよね、自分もそうなるかもしれないんだから」。
三池監督の生きる場所はやっぱり「映画ですか?」と問えば、案の定「そういうことにもあんまり興味ないの」と突き放された。「自分が本当になりたかったのは、ブルース・リーのような格闘家であったり、バイクのレーサーであったり。憧れたけど、自分には素養が全くないと悟った時の喪失感は何度も味わっている。妥協の連続ですよ」
では、なんで映画監督に? 「映画を作るという行為自体は、自分にとってすごく楽なんだよね。ただ一生懸命やればいいだけだから。監督にはやらなきゃいけないことがいっぱいあるし、やっているうちに時間が経つのも忘れて夢中になれる。常に今が精一杯で、先のことなんて考える余裕もない。だから不安に思う必要もない。いつだって、それどころじゃないんだから」と事も無げに話してくれた。
映画『一命』は10月15日(土)より全国公開(2D・3D同時上映)。
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2011/10/14