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宮沢和史&又吉直樹が語り合う「勝敗がない言葉との格闘」 表現者としてのお互いへの視線、言葉への向き合い方

今は30年間で一番肩の力が抜けていて、なんでも書ける感覚がある(宮沢和史)

――宮沢さんは2016年に体調不良で音楽活動を無期限休止していただけに、今年5月のソロアルバム『留まらざること 川の如く』リリースはファンを歓喜させました。
又吉直樹アルバムに収録されている「歌手」を聴いたときに、THE BOOMの「手紙」(27thシングル/95年発売)を思い出しました。いつか自分の伝えたいことを具現化してくれるロックンローラーが現れたら、マイクを置くかもしれないということが歌われている曲です。ファンとしては「そんなときは来ない!」という心境で聴いていたんですけど。それから25年近く経って「歌手」を聴いて、「ええ、どうしよう……」と思ったんです。「歌手」って、自分はもう歌手じゃないんだ、ということを歌っているじゃないですか。

宮沢和史歌手を引退した数ヶ月後に書いた歌詞だったんです。もう人様に見せることのない歌詞なのにも関わらず、気づいたらメロディに乗せやすいように書いている(笑)。
又吉直樹そう! お会いしたときに「こんな歌詞なのに、結局は歌いやすいように書いていた」というエピソードを聴いて、それでまた「手紙」を聴き返して、それこそ点と点が結びついて、すべてが必然性のある言葉と感情で繋がっている! と解釈しました。

宮沢和史感情もそうだけど、昔はどんなに言葉と格闘しても「歌手」みたいな歌詞は書けなかったし、歌えなかった。でも今は30年間で一番肩の力が抜けていて、なんでも書けるという感覚があるんです。
又吉直樹だからやっぱり宮沢さんはどこまで行っても歌手なんです。たとえペースはゆっくりになっても、それこそ歌わなくなっても、歌手を引退なんてできない。そのことにすごく感動したし、うれしくなりました。

いろいろな場で言葉をアウトプットしてほしい(宮沢和史)

――宮沢さんと又吉さんを結びつけるもうひとつの要素に「沖縄」という土地があります。不朽の名曲「島唄」(11thシングル/93年発売)に止まらない宮沢さんと沖縄との関わり。そこには2人の共通点でもある「言葉」が深く関係しています。
宮沢和史先日、エイサーのチームと一緒にインドに行ってきたんですけど、もうめちゃウケでしたね。インドの若い子たちもステージに上がって、みんなでカチャーシーを踊りまくり(笑)。沖縄の国際性や底力を改めて思い知らされました。
又吉直樹僕の祖母は100歳で、もうあまり動けないんですけど、親戚が集まって誰かが三線を弾くと、キレよくカチャーシーを踊り出すんです。またそれがカッコいいんです。

宮沢和史思うに琉歌(沖縄諸島の伝統的な詩)のリズムじゃないかと。和歌は七五調だけど、琉歌は八八八六調で読み始めが裏拍から入る。すごくリズミカルなんです。音楽というのは裏拍の文化なので、どこの国に行ってもウケるんですよ。
又吉直樹琉歌はまだ触れたことがないんです。勉強したいと思ってはいたんですが。

宮沢和史僕も最近ようやく琉歌を書くことに挑戦しているところなんですが、又吉さんにもぜひ琉歌を書いたり読んだりしてもらいたい。もちろん小説は今後も書き続けるでしょうけど、一緒に朗読して、やっぱりステージに立つだけで発する存在感があると思ったし、何より“言葉の人”ですから、いろいろな場で言葉をアウトプットしてほしい。なかでも、たった30文字で沖縄のあらゆる事象が表現できる琉歌という言葉と格闘する又吉さん、そんな姿をイメージするとワクワクします。
(文:児玉澄子/写真:西岡義弘)

『Kazufumi Miyazawa 30th Anniversary 〜Premium Studio Session Recording 〜』

 デビュー30周年を迎えた宮沢和史が、初となる最新曲含むベストセレクション10曲のスタジオでのセッションレコーディング映像と音源を収録したBlu-ray/DVDをリリース。その裏側に迫るドキュメンタリー映像も収められている。
【通常仕様】
Blu-ray(YRXN-80009):5000円(税別)
DVD(YRBN-80195):4000円(税別)
【公式サイト】(外部サイト)

『人間』

 絵や文章での表現を志してきた永山は、38歳の誕生日、古い知人からメールを受け取る。若かりし頃「ハウス」と呼ばれる共同住居でともに暮らした仲野が、ある騒動の渦中にいるという。何者かになろうとあがいた季節の果てで、かつての若者たちを待ち受けていたものとは? 芥川賞作家・又吉直樹の最新刊。
著者:又吉直樹
定価:1400円(税別)
毎日新聞出版
【『人間』特設サイト】(外部サイト)

提供元: コンフィデンス

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