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『下町ロケット』と『ドラゴンボール』の意外な共通点 ドラマを観ない中年男性にもウケるワケ

  • 『下町ロケット』で主演を演じる阿部寛(写真/RYUGO SAITO)

    『下町ロケット』で主演を演じる阿部寛(写真/RYUGO SAITO)

 俳優・阿部寛が主演するTBS系日曜劇場『下町ロケット』は、初回平均視聴率13.9%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と、今期も好調なスタートを切った。また、「オリコンドラマバリュー」の18年4月期ドラマの10月30日〜11月5日放送分の調査では、第4話が94Ptを獲得し、同ドラマで自己最高の満足度を得た。『少年ジャンプ』の「友情・努力・勝利」で育った中年男性が社会に出て、『下町ロケット』と同じような出来事を経験し、普段ドラマを観ない中年男性にもウケている。個性豊かな登場キャラクターの魅力や、次々と強力な敵が現れ、時には敗北を経験しながら、努力し仲間を増やして立ち向かっていく一発逆転の痛快さがある物語の展開が、『ドラゴンボール』(集英社)に通じるところがある。改めてこの2作品の共通点を探ってみよう。

『少年ジャンプ』の三大要素である「友情・努力・勝利」の図式と共通

 ドラマのターゲット層と言えば、OL、主婦、若者層が主だが、『下町ロケット』の好調を支えるのは、阿部が演じる佃社長と同年代の中年男性やサラリーマンだと言う。なぜ普段ドラマを観ない中年男性にもウケているのか? 放送業界で活躍するジャーナリストの長谷川朋子氏は、「勧善懲悪の分かりやすいストーリー展開が、理由のひとつにまずあるでしょう。憂鬱な気持ちにもなる日曜の夜に、前向きに仕事脳に切り替える準備ができそうです」と分析する。

 佃社長をはじめ、殿村や立花ら世代を超えて仲間と助け合い、力を合わせて強敵を倒すように、1つずつ問題をクリアし乗り越えていくストーリー展開は、どこか『少年ジャンプ』の三大要素である「友情・努力・勝利」と自然と重なる。普段はあまりドラマを観ないものの、子供の頃に『少年ジャンプ』を読み育ってきた30〜40代の世代にとっては、まるで『ドラゴンボール』を読むような感覚で観られることが、自然と“こういう人いるよね”“わかる”と自分の状況にも合わせやすく、すんなりと受け入れられるものになっているのかもしれない。ネットでも「自分もドラマのなかに入って、佃製作所の一員になったつもりで観てしまう」「仕事とは何かと考えさせられる」など意見があがっている。

 『ドラゴンボール』は、さまざまな困難や強敵と対峙し、成長しながら、7つ集めると願いが叶う『ドラゴンボール』を集めていくというのが基本的なストーリー。次々とより強力な敵が現れ、時には敗北を経験しながら、努力し仲間を増やして立ち向かっていく。なんと言っても、一度どん底に落とされてからの大逆転劇が実に爽快だ。『下町ロケット』にも、そうした一発逆転の痛快さがある。例えば1期で、最初は佃製作所をばかにして融資を渋った白水銀行の柳井哲二(春風亭昇太)らが、手の平を返して自ら融資を申し出たところを殿村がバッサリ。その瞬間、誰もが思わず「ざまあみろ」とつぶやいたはず。『ガウディ編』で、篠井英介が演じたPMEAの審査員・滝川信二が、癒着の証拠を突きつけられた時のうろたえぶりといったらなかった。今作『ゴースト編』でも、2話で行われたコンペで大森バルブが圧倒的に優勢だったにも関わらず、心のこもった製品づくりが認められた瞬間、きっと多くの人が心でガッツポーズを取っただろう。

キャラクターの立ち位置も、絶妙にマッチ

 また『下町ロケット』では、物語のターニングポイントで大きな決断を迫られた時に、佃社長が社員を集めて熱く演説して会社が一丸となるシーンがたびたび登場する。『ゴースト編』2話でも、ギアゴースト社を買収する際に同社重役を集めて熱く語る、阿部の長ゼリフが感動を呼んだ。これは悟空の熱さや、「オラにみんなのパワーを分けてくれ!」と、世界中にメッセージを送って元気玉を大きくするシーンとも重なる。佃社長らが開発していく新型ロケットバルブ、人工心臓弁ガウディ、新型トランスミッションは、『下町ロケット』にとっての『ドラゴンボール』だ。

 『下町ロケット』が『ドラゴンボール』的であるのは、ストーリー構成のことだけではない。キャラクターの立ち位置も、絶妙にマッチしていて面白い。『ドラゴンボール』では、ピッコロや人造人間18号など、かつては目の前に立ちはだかっていた強敵が仲間に加わっていく流れがある。

 例えば木下ほうかが演じる帝国重工の宇宙航空部本部長水原重治は、1期では佃製作所の作るロケットバルブを否定し、何かと物言いと付けていたが、『ゴースト編』では「佃のバルブがなければロケットは飛ばない」と、佃社長に絶大な信頼を寄せる。

 ヒール役も欠かせない存在で、池畑慎之介が演じる企業弁護士・中川京一は、陰湿さで言ったらフリーザそのもの。佃のライバル会社であるダイダロスの社長・重田登志行(古舘伊知郎)は、佃の顧客を次々と自分のものにして台頭する点で、敵を吸収しながら強くなる強敵セルさながらだ。さらに竹内涼真が演じる若きエンジニア・立花洋介は悟飯であり、土屋太鳳が演じる佃社長の娘・利菜は悟空の孫娘・パンといった存在。徳重聡が演じて話題の軽部は、清濁持ち合わせたキャラクターという部分でベジータ的な存在に相当すると言える。

『ドラゴンボール』的なキャラ設定やストーリー構成は、池井戸潤氏の作品にも共通する

 『少年ジャンプ』の「友情・努力・勝利」で育った世代。理想に燃えた青春時代を越えて、実際に社会に出るとそれは理想に過ぎなかったことに気づく。上司との関係をはじめとする人間関係の軋轢、会社同士のパワーバランス、実家問題など、社会生活で誰もがぶち当たることの多くが、『下町ロケット』では描かれている。視聴者は、そこに自分自身の経験を重ね合わせるわけだが、より感情移入することができるのは、さまざまな立場の人間が実に丁寧に描かれていることによるだろう。それに『下町ロケット』では、現実に打ちのめされながらも、ターニングポイントでそのつど必ず理想論を選択していることもポイントだ。誰もが心のどこかで理想を求め、信じていている、少年ジャンプの「友情・努力・勝利」が胸の奥にある世代だからこそ、より胸に響いてくるのかもしれない。

 愚直なまでに真っ直ぐで熱い主人公像と、それを支える個性豊かな仲間たち。徹底的なまでの悪役の存在は、主人公像をより引き立ててくれる。そして、たびたび訪れる窮地を一発逆転の発想で乗り切る痛快さ。こうした『ドラゴンボール』的なキャラクター設定やストーリー構成は、『下町ロケット』に限らず、『半沢直樹』や『陸王』など、これまでの池井戸潤氏の作品にも共通して言えることだ。前述の長谷川氏は、「『下町ロケット』の新シーズンは“仲間を増やして敵(悪)を倒していく”感が増しているので、そんな(『ドラゴンボール』的な)楽しみ方もアリかもしれません」と前作との違いを語る。阿部寛が演じる佃航平の七転八起の活躍が、悟空の活躍にワクワクしたあの頃を思い出させ、毎週『ジャンプ』を欠かさず買っていた頃のように、毎週欠かさず『下町ロケット』が観たくなる。中年男性の心を掴んで離さない

(文/榑林史章)

提供元: コンフィデンス

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