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YouTube音楽部門総責任者、利益分配への批判に答える「業界の構造を変化させるべき」

 数々のアーティストをブレイクに導き、ワーナーミュージックグループの世界レコード音楽部門の会長兼最高経営責任者(CEO)を務めたリオ・コーエン氏が、YouTube・Google音楽部門総責任者に就任した。広告型ストリーミングサービスが抱える課題に対し、コーエン氏がどのような手腕を発揮するのか、その動向は世界的にも注目を集めているなか,音楽ビジネスの今後について語った。

GoogleとYouTubeは、より素晴らしい音楽が発見できるサービスへ

  • リオ・コーエン氏(YouTube,Google 音楽部門総責任者ならびに「300」創設者)

    リオ・コーエン氏(YouTube,Google 音楽部門総責任者ならびに「300」創設者)

――昨年、音楽業界から突然YouTubeの音楽部門責任者に就任されたことに衝撃を受けました。YouTubeでの役割を教えてください。
コーエン 私が考える自分の役割は、Google,YouTubeが複雑な業界の中で、アーティストやレーベル、そしてソングライターに愛されるサービスやプロダクトを開発し続けるためのガイド役となることです。YouTubeに入って7ケ月が経ち、クリエイティブ・コミュニテイとのコミュニケーションを図りながら、サブスクリプションモデルへとリスナーを誘導させることが最重要課題のひとつですね。また、YouTubeは広告モデルでの収益性を拡張しなければならない。

――サブスクリプションが、音楽ビジネスの未来とお考えですか。
コーエン 音楽業界の未来は、広告とサブスクリプションの2つの柱にあると考えます。若者や子供には、定額制の年間120ドルも大金です。だが彼らを音楽サービスから排除してはいけない。広告モデルで彼らを含んださまざまな層を取り込みつつ、生活スタイルの変化や音楽消費に合わせて、サブスクリプションへ導けばいい。YouTubeは、良質な有料サービスとコンテンツの融合を実現していきます。

――現状のYouTubeのサブスクリプションモデルは成功と言えますか。
コーエン まだですね。ですが間もなく実現すると信じています。YouTubeは単なるプロモーション用ツールや広告の媒体に留まらずサブスクリプションも進めていかなければならないと考えています。

――世界各地の音楽業界をどのように説得して、YouTubeの考えを共有しているのでしょうか。
コーエン 重要なことは、IT業界の言葉ではなく、音楽業界の共通言語で説明することだと思っています。同時に、業界には可能性を提示することが大切と考えます。過去の成功や実績を守ろうと身構える人たちに、未来への可能性を示していきたいと思っています。例えばドイツは、日本と似たCDの需要が高い市場で、ストリーミングには後発だった。ですが、今は市場全体がストリーミングに注力している。現代ではCDビジネスは費用対効果が低くなり、レーベルもアーティストもCD以外で収益性の高いビジネスを必要としています。コレクションとしてのCDの価値を守りながら、音楽視聴のみを求めるリスナーには別の選択肢を提供する仕組み作りへと構造を変化させるのが賢明だと思います。今回の来日では、日本の音楽業界への理解を深めることも目的の1つ。日本はサブスクリプションに加えてCD需要の高さに業界の複雑さがある。YouTubeと日本の音楽業界はもっとコラボレーションし、ビジネスを構築していくべきだと感じています。

――ダウンロードは今後どうなると思いますか。
コーエン ダウンロードビジネスは、スマートフォンでの音楽視聴への入口ではありましたが、広告型ビジネスモデルとサブスクリプションモデルがより重要になってくるでしょう。

――ストリーミングサービスの新人発掘のツールとしての可能性はどのようにご覧になっていますか。
コーエン アーティストたちがYouTubeやSoundCloudで曲を自由にアップできる環境は、音楽業界にとっても大きな勝機です。ただ、無数の作品に溢れ、何を聴けばいいか分からない状況は好ましくありません。音楽業界はこれまでラジオのDJやレーベルが、今、誰を聴くべきかキュレーションの役割を果たしてきました。現在のデジタル時代でも、人々が何の音楽を聴くとよいのかを見つける手助けをする方法が必要です。

――YouTubeではその「音楽を見つける手助け」をどう考えているのでしょうか。
コーエン YouTubeは、ユーザーが素晴らしい音楽を見つけられるよう後押しすると同時に、アーティストとアルバムをプロモーションし、彼らが成功する新しい方法を見出す必要があります。そうすることで、彼らはプラットフォーム上で輝くことができ、ファンと繋がるチャンスを得ることができるのです。これは私の最優先課題の1つであり、今後皆さんにさらなる取り組みをご紹介できるでしょう。

音楽業界は透明性の向上に向けて、いかに構造を変化させるべきかを議論する時期

――それ以外で最も注力している領域は何でしょう。
コーエン YouTubeとGoogle Play Musicチームの統合によって、ユーザー、音楽パートナー、そしてアーティストにとってより使いやすいサブスクリプションサービスの開発、そして広告ビジネスの強化です。アーティストやクリエイターにとって使いやすいプロダクトの開発、クリエイターの教育プログラムの向上には常に注力しています。

――ミュージックビデオやライブストリーミングの未来についてはどのように考えていますか。
コーエン ミュージックビデオは、テクノロジーの進化を受けてますます高品質に進化し、例えばAR、VRといった新しい技術との融合も進むでしょう。誰もが映像を作れる時代ですので、ミュージックビデオも共感できるストーリーがあるかが重要視されるでしょう。ライブストリーミングに関しては、コーチェラ・フェスティバルと私たちの取り組みが、ライブコンサートへの体験やアクセスのあり方を変えたといえるでしょう。音楽コンサートの配信のルールを変えたと言えます。今後は、ライブストリーミングする音楽フェスティバルの数を増やしていき、オーガナイザーと関係を構築していきます。このコーチェラ・フェスティバルでの成功を活かして、ライブミュージックをより多くの人々に提供するための取り組みを拡大したいと考えています。

――ストリーミングから音楽業界への利益分配が少ないと批判の声も上がっています。先日あなたが公開したブログの主張は、説得力がないとも言われています。収益分配の透明性の議論についてどのようにお考えですか。
コーエン 私たちは、透明性の議論において業界のリーダーになります。それはGoogleの倫理でもあります。ですが、難しいプロセスです。アーティストはレーベルと契約している以上、私たちはそこに介入はできない。しかし、透明な構造の価値を訴求することはできます。どの業界、市場でも透明性は不可欠です。特に、音楽業界は透明性の向上に向けて、いかに構造を変化させるべきかを議論する時期ですが、それには時間が伴うでしょう。厳しい議論に直面するはずですが、率先して議論を進めるべきです。音楽のビジネスは、しばしば報酬を年間ベースで考えるため、長い将来を見越した収益を考えることが難しい側面もあります。私が説明することに関して、もちろん批判をあびることもありますが、とらわれすぎず、私は自分の役割であるサービスをより良くしていくことに集中するだけです。これから行っていくことを、ぜひ見ていてほしいと思います。

コンテンツが最も価値あるモノだということに理解を深めてほしい

――現在、ストリーミングサービス各社で新作の独占配信や先行配信が盛んに行われていますが、独占配信の価値はどう思われますか。
コーエン 中長期的に見て、アーティストやレーベルにとっても良い施策とは思えません。一部のリスナーを限定するのは、他の多くのリスナーの音楽体験を悪化させてしまいます。YouTubeはどこでも誰もが聴ける高品質なサービスをリスナーに、そしてそうした環境をアーティストやレーベルに提供したいと思っています。業界全体でも、一部のリスナーのみに音楽提供することは、そう多く見なくなるでしょう。

――音楽レーベルの将来はどのようにお考えですか。
コーエン 私はワーナーミュージックの会長職を退任後、2012年に次世代向けのレーベル「300」を立ち上げました。ここでは、新たな音楽ビジネスの黄金時代が目前に来ていることを音楽業界に対して知らせていました。それを実現するには、新時代の先導役たちが必要です。過去20年で世界の音楽業界は低迷し、レコード会社は合併を繰り返すなかで、独創的な人物よりも、いわゆるサラリーマンが増えていったのも事実です。かつてクリス・ブラックウェル、アーメット・アーティガン、ジェリー・モスたちが実現したように、クリエイティブなビジネスを作れるプロデューサーが必要です。今まさに、広告とストリーミングによって音楽業界は黄金時代を迎えようとしています。CDなど物理的なものを作らずに音楽を発信できることで、コストのよりかからない方法で音楽を出せるようになるため、チャンス・ザ・ラッパーのようなアーティストが今後増えるのは必然的です。インディペンデントで活動し、独自に音楽ビジネスを作るクリエイターたちには敬意を表します。独立系アーティストが成功する確立は音楽史上かつてないほど高まっています。

――今後、世界の音楽業界に期待したいことは何でしょう?
コーエン 音楽業界には、身構えないでほしいと思います。音楽は常に「変革」の最先端と共にありました。音楽業界のビジネスにも是非、その精神を反映してほしいですね。これまで音楽業界は過去を守ってきましたが、コンテンツそのものに価値があることを大切にしてほしい。音楽は、レコードからカセット、ストリーミング、広告付きの動画など、時代ごとに発信の形を変えてきましたが、なによりもその音楽コンテンツそのものが最も価値があるということに理解を深めてほしいです。音楽業界の将来に私が不安を感じるとすれば、数少ない収益源に集中することです。YouTubeとGoogleがアーティスト、レーベル、音楽出版社、ソングライターにとって多くの利益を生み出し、その収益源を多様化させるサービスやプロダクトを開発することは業界にとって非常に価値あることだと感じています。

(文:ジェイ・コウガミ/写真:西岡義弘)

プロフィール

リオ・コーエン氏(YouTube,Google 音楽部門総責任者ならびに「300」創設者)
Rush Productionsで大成功を収めたラッパーをマネージメントすると同時に、Def Jam Recordingsの名声を確立させ、HIP HOPをカルチャーの周縁から中心へと導く一端を担い、1999年にはDef JamをUniversalに売却。さらにMercury、Island、Def Jam Recordingsを成功裏に統合し、Island-Def Jam Music Groupを創設。その後、Warner Music Group(WMG)のChief Creative Officerに就任。AtlanticとElektra Recordsを統合し、Atlantic Music Groupとすることで、WMGの発展に貢献。WMGの世界レコード音楽部門の会長兼最高経営責任者(CEO)に就任すると、「360度契約の父」として活躍。2016年にYouTube,Google音楽部門総責任者に就任。

提供元: コンフィデンス

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