ノータイでもBMW
「BMW 6シリーズ グランツーリスモ」に試乗。5mを優に超えるビッグサイズのボディーにハッチゲートを備えた、BMWのモデルラインナップにおいて“変化球”ともいえるポジションのクルマに、果たして「駆けぬける歓び」はあるのだろうか。
5から6へ、サイズもステップアップ
エリートビジネスマンがさっそうと乗りこなす姿をどうしても想像してしまうBMWの中にあって、GTはちょっと異質な雰囲気を身にまとっている。乱暴に言ってしまえば、屋根がちょっと高くてテールゲートを備えているだけなのに、それでクールで洗練されたエグゼクティブな雰囲気とはちょっと違う“オフ感”をも漂わせているのだから、やはりクルマの姿形は重要だ。従来の「5シリーズGT」から6シリーズGTへとネーミングが変更された「640i GT」は、バリバリ仕事をこなすだけでなく、家族との時間も大切にしていますという、人もうらやむワークライフバランスのお手本生活を送るカッコいいダディーが乗っているはず、と感じさせられるのだ。
そもそもBMW 6シリーズといえば昔から流麗で贅沢(ぜいたく)な大人のクーペという認識だったが、今では2ドアの「クーペ」のみならず、「カブリオレ」も4ドアの「グランクーペ」もラインナップされ、今度はGTも6シリーズの仲間に入った。ニッチなモデルのさらにニッチなスペースも派生モデルできっちり埋めるBMWの戦略による、まさに隙間のない製品ラインナップである。
もっとも、性能や用途について欲張りになればなるほどプレミアム感が薄れるものだが、子どももおじいちゃんも犬も荷物も詰め込んで出掛けるミニバンのような、庶民派な雰囲気まではいかないのがさすがBMWというところだろうか。高性能と多用途を欲張りに追求しても、それぞれにきちんと上質さが伴っているからだろう。
通常の「5シリーズ セダン」や「ツーリング」では間に合わない、あるいは当たり前すぎてつまらないという人が日本にどれほどいるのかは知らないが、本国ではカンパニーカーではないパーソナル感を求めるユーザーにはちょうどいいキャラクターなのかもしれない。クーペではちょっと足りないが、SUVまでは要らないし、背が高すぎるという人たちに、これならどうです、といわば当て書きしたのが6シリーズGTである。
ちなみに先代にあたる5シリーズGTより25mm低くなった1540mmの車高は、機械式駐車場でもギリギリ大丈夫(機械式パーキングの多くは1550mmまで)の高さだが、とはいえ、それならウチのマンションの駐車場でも大丈夫か、と喜ぶのはまだ早い。先代よりも約10cm伸びたボディーはBMWのラインナップ中最大級、全長5105mm、全幅1900mmは5シリーズベースというより、もはや事実上「7シリーズ」と変わらない(3070mmのホイールベースは7シリーズと同一)からである。...