インテリジェントモンスター
フルモデルチェンジで2代目となったアウディのラグジュアリーモデル「A7スポーツバック」に試乗。燃費や安全性を高める先進のメカニズムが詰まった最新型は、しかし、自ら積極的にむちを当てたくなる走りの4ドアクーペだった。
いまやセダンもカッコがすべて
2005年にメルセデス・ベンツが「CLS」を発表した時には賛否両論が巻き起こった。背の低い、クーペみたいなええカッコしぃの4ドアセダンについて、「実用を犠牲にしてまでデザインを優先するとは何事だ」というお叱(しか)りの声があがったのだ。
お叱りの声があがったのだ、なんてひとごとのように書いているけれど、筆者もお叱りの声をあげたひとりだった。クルマ守旧派というか、頭がカタいので、4ドアセダンが別の乗り物になってしまうことが認められなかったのだ。
そして、クーペみたいなええカッコしぃの4ドアセダンを自動車メーカー各社がつくるようになった。やがて、それが正しい戦略であったことが明らかとなった。荷物を積みたいとか人を乗せたいとか、そういった機能を重んじるのであればミニバンやSUVを選べばよろし。セダンはカッコよさを追求する乗り物になったのだ。
一時期までは、「走りで選べばセダン」的な言説も成り立った。けれども、「ジャガーFペース」や「アルファ・ロメオ・ステルヴィオ」みたいに、“イノシシの皮をかぶったオオカミ”みたいなSUVが出てきたいま、「セダン=走り」という公式も過去のものとなった。
というわけで、セダンはフォーマルでスタイリッシュ、カタカナばかり使っていると頭が悪そうなので、上品なたたずまいに価値を見いだす存在、つまり4ドアクーペが主流となった。セダンはカッコがすべてなのである。
で、ひとくちに4ドアクーペといっても、微妙なすみ分けがあるところがおもしろい。例えばこの夏にフルモデルチェンジした前出のメルセデス・ベンツのCLSは、フォーマルなスーツっぽい。スーツといって昭和のオトーサンが着ていたドブネズミ色の背広ではなく、ミレニアル世代が結婚式の二次会に着ていくような、ちょっと光沢がある細身のスーツだ。
そして、ここに紹介するアウディA7スポーツバックは、もうちょっとカジュアル。というのも独立したトランクではなく、ハッチゲートがあるファストバックのスタイルを採っているから。セダン+クーペという足し算に、もうひとつステーションワゴン(アウディ的に言えばアバント)の要素が加わっている。したがって、光沢がある細身のスーツなんだけど、ネクタイを締めるのではなく、タートルネックのセーターを合わせた感じだ。...