乗るときっと好きになる
遠目にはよくあるミドルサイズSUVだが、近づいてみれば印象はガラリ一変。ドアの向こうには、いたる所に格子柄がちりばめられた、まばゆい世界が広がっていた。この、ある種“イロモノ”のような雰囲気の漂う「DS 7クロスバック」だが、ひとたび走らせてみると、どこか昔のフランス車のような、懐かしい乗り心地を備えたクルマに仕上がっていた。
シックというよりキラキラ
急増するインバウンド需要で盛り上がってはいても、わが日本の来日観光客数はまだ年間3000万人に届いていない。それに対してフランスはずいぶん前から8000万人以上をキープ、首都パリだけで年間3000万人以上が訪れるという世界一の観光大国である。それゆえにDSはパリへの憧れをブランドの土台に取り入れようとしているのだろう。ただ「光の都パリへのオマージュと伝統技法にインスパイアされたインテリア」といわれても、ああ、そうなんですか、と戸惑ってしまうのが正直な気持ちだ。なんだか新興時計ブランドのプレゼンテーションを聞いているようだ。こう言ってはなんですが、近年まれに見るほどの理解が難しいクルマである。ひとことで言って全体的にくどすぎる。ところが、乗ってみたら印象が俄然(がぜん)好転した。
その前にこだわりのインテリアである。ダッシュボード中央のアナログ時計がエンジン始動とともにグルリと回転して現れる仕掛けも(ただし「グランシック」グレードのみ)、オジサンには別に響かない。そんなことに手間をかけるぐらいなら、他にいくらでもすることはあるのではないかと考えてしまうのが世間ずれしたオジサンである。本物の「DS」を知らない若いユーザーならば(私も同時代ではないがかなり乗った経験はある)、おしゃれでユニークと感じてくれるのかもしれないが(そしてそれが狙いなのかもしれないが)、こちとら一本スポークのセルフセンタリングステアリングから半球型のブレーキスイッチやボビンメーター、もちろんハイドロニューマチックも含めて、かつてのシトロエンの数々のユニークなメカニズムを直で経験してきた世代である。この程度のもので驚かそうったってそうは問屋が卸さないわな、とつい口調がぞんざいになってしまう。いたる所にちりばめられた格子柄というか三角形のデザインモチーフも私の趣味ではない。グランシック(Grand Chic)というグレード名の割にはまるでシックな感じではなく、上質な空間というよりも、なんだかちょっとアクの強いインテリアデザイナーが手がけたキラキラ華美なクラブの内装みたいである。
変わっていることは基本悪いものではないが、普通とは違うことが目的になってしまっては本末転倒だろう。...