良質なオールラウンダー
400kgに迫る車両重量、1.8リッターの水平対向6気筒エンジンと、あらゆる部分が規格外なホンダのフラッグシップモデル「ゴールドウイング」。6代目となる新型は、遠乗りに特化したクルーザーかと思いきや、“操る”ことを積極的に楽しめる一台に仕上がっていた。
いろいろ心配になるほど、デカい
この日のロケは心配から始まった。指定された集合場所は都心から1時間ほどの距離ながら、道中の交通量はそれなりにあり、道幅が狭いところも多い。しかも空模様はやや不安定で時折雨もパラついていた。
そんな中をwebCGのディレクターKさんはゴールドウイングに乗ってやって来るという。Kさんは神戸生まれの六甲山・レーサーレプリカ育ち。ヒザ擦りしそうなヤツはだいたい友達とはいえ、それも30年以上前のこと。大型二輪免許にいたっては1年前に取ったばかりという、典型的にもほどがあるリターンライダーだからだ。
それでも日本人離れの体躯(たいく)を誇っているというなら心配も和らぐが、本人の申告によると身長は167cm。昭和30年代男にありがちな「見えっ張り」が機能していればサバを読んでいる可能性も捨てきれず、そうでなくても加齢によって縮んでいるかもしれない。
そんなKさんが排気量1833cc、車重383kg、全長2575mm、価格331万5600円にまたがって向かって来るのだ。心配するなという方が無理である。
しかも予定時刻になってもKさんは来ない。少しヤキモキし始めた頃、先に到着していたH編集部員の携帯が鳴った。相手はKさんだ。もはや悪い予感しかしなかったが、どうやら道を間違えただけらしい。取りあえず、ホッ。
が、それもつかの間だ。道を間違えたということは、どこかでUターンを余儀なくされるかもしれない。大丈夫か? いや、大丈夫なわけがない。ゴールドウイングの最小回転半径は3.4mである。ホンダのラインナップ中、ゴールドウイングの次に排気量が大きいのは「CB1300」だが、こちらは2.7mでクルリンパと回ってみせるからだ。
心配は尽きない。いろいろな状況を想定し、もしもの場合に備えて助けに行く算段をシミュレーションしていたところ、ようやくKさんが到着した。そしてヘルメットを脱ぎ終わるより先に、「いや、これめちゃめちゃいいですね!」などとおっしゃる。こちらの心配などつゆ知らず、本当に心底楽しそうだった。...