ちょっと暑く感じるオフィスでは、なぜか頭がぼんやりする。タイピングが遅くなる。いつもなら気づくミスを見落としてしまう――。その原因は、職場の「暑さ」や「湿度」にあるかもしれない。仕事のパフォーマンスを守るために、夏のオフィスで何を整えればいいのか。1万人以上の患者を診てきた医師が、医学的根拠に基づいて執筆した『体力がすべて』。いまある体力を、どのように伸ばし、配分するのかを説いた本書から、一部を抜粋・編集し、暑い日の職場環境の整え方を解説する。
仕事のパフォーマンスを下げる暑さとの付き合い方
夏の蒸し暑さ、空気のこもった会議室、絶え間ない話し声、まぶしい照明。
私たちの思考や判断は、こうした環境の影響を常に受けている。環境が整っていないと、どれだけ集中しようとしても、頭の働きは鈍りやすく、エネルギーの消耗も増えやすい。一方で、それらを少し整えるだけでも、頭の働きは安定しやすくなる。
自分の周りの「環境の負荷」を考える上で大切なのは、どのような環境の変化が頭の働きを妨げるのか、そしてその影響を減らすには現場で何を変えればよいのかを、あわせて考えることだ。
体感の暑さは温度と湿度に左右される
室温が高い環境では、タイピングが遅くなったり、誤字や見落としが増えたりしやすい。これは単なる感覚の問題ではなく、室温と作業成績の関連は、研究でも示されている。
一般的なオフィス環境を対象とした研究では、おおむね25℃以上のやや高い室温では、作業成績が悪化しやすいことが示されている。特に反応時間などの指標で悪影響が現れやすい。一方で、21℃未満のやや低い室温では、明確な悪影響は確認されなかった。
したがって、オフィスの温度管理では、暑くしすぎないことが、作業パフォーマンスの観点から重要になる(*1)。
また、熱波の時期に冷房のない環境で過ごしていた学生は、空調のある環境にいた学生と比べて、認知テストで反応速度が遅く、正答率も低かったという観察結果も報告されている(*2)。
湿度が高いと体感温度も上がる
私たちが感じる暑さや寒さは、温度計の数値だけで決まるものではない。湿度が高いほど汗が蒸発しにくくなり、体の熱が逃げにくくなるため、暑さが強く感じられやすい。暑い環境では、湿度が高いほど認知パフォーマンスが低下しうることも報告されている(*3)。
一方で、乾燥しすぎる環境では、目や喉などの不快症状が増えやすく、オフィスでもこうした症状の増加や生産性への悪影響が示唆されている(*4)。
体感が極端になるほど、集中力は削がれやすい。感覚だけに頼らず、次の数値を目安に環境を管理すると、コンディションを安定させられる。
体感温度を下げる方法
同じ温度でも、工夫次第で体にかかる負担は軽くできる。
温度・湿度に加えて、風と日差しを整えるだけでも、集中や思考が安定する環境をつくりやすくなる。
(本稿は『鍛えるよりも「使い方」 体力がすべて』から一部抜粋・編集したものです。)