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なぜ、「頭のいい人」ほどコミュニケーションが下手なのか?


「なぜ、当たり前のことが伝わらないのか?」そう憤りを感じたことはありませんか? 論理的で、優秀で、仕事ができるリーダーほど、実は”無意識の絶交”を部下に突きつけているかもしれません。この記事では、ゴールドマン・サックスで同僚だった田中渓さんと櫻本真里さんに、部下とのコミュニケーションについて語り合っていただきました。櫻本さんの著書『なぜ、あなたのチームは疲れているのか?』を踏まえつつ、頭の回転が速い人が陥る「説明の省略」という罠と、チームの心理的リソースを最大化させる「否定しない技術」を深掘りします。あなたの「正論」が、チームを壊す刃にならないための処方箋がここにあります。

相手の「前提知識」に合わせて話す

櫻本真理さん(以下、櫻本) 田中さんとは、学生時代からのお付き合いですが、いつも気持ちのよいコミュニケーションをさせていただいてきたと感じています。そのコミュニケーション能力は、田中さんのマネジメントで大いに活かされているんだろうと思っているんですが、田中さんご自身のなかではどんなことを意識しているんでしょうか?

田中渓さん(以下、田中) いえいえ、コミュニケーションについてはまだまだ未熟ではあるんですが、ただひとつ自分には「強み」があるとは思ってるんです。

何が「強み」かというと、「わからない人」の気持ちがわかるということなんです。というのは、ゴールドマン・サックスってめちゃくちゃ頭のいい人ばかりのエリート集団ですから、入社してしばらくの間は、みんなが何をしゃべってるのかついていくのにたいへんだったんです。

櫻本 田中さんですら、そうだったんですか?

田中 ええ。まさに天才集団のなかに入った凡人でしたからね。実際、「お前みたいな学歴のないやつ」などと言われました(笑)。僕は上智大学の出身なので、世間的には学歴があると思われるかもしれませんが、彼らのなかでは“底辺”みたいな扱いでしたよ。

でも、そんな立場だったからこそ、「頭がいい」からこそコミュニケーションがうまくいかないという現実がよく見えたんです。

というのは、知識量も半端なくて、頭の回転の異常に早い人たちって、「ここはわかってるよね」という部分は無意識的に省略して、最短距離で結論まで走り抜けるような話し方をするからです。

ところが、「わからない人」が理解するためには、一つひとつ噛み砕いてステップを積み重ねる必要がありますから、それでは伝わらなくって、コミュニケーションがおかなしことになってしまうんです。

だから、僕が何かを伝えようとするときには、相手の前提知識にちゃんと合わせにいくことを強く意識しています。相手がどのくらいのところまで理解していて、どのくらいの“粒度”で話せば通じ合えるのかを、とにかく手探りしますね。このように相手に合わせていくことを意識しないと、コミュニケーションはうまくいかないですよね。

櫻本 それは非常に重要なポイントですよね。多くのリーダーが「当たり前のことを言ってるだけなのに、なぜ、部下に伝わらないのか?」というストレスを感じていますが、その大半が、田中さんのおっしゃるように「相手の前提知識に合わせる」というステップを踏まずに、一方的にコミュニケーションをとっていることに原因があるように思います。

なかには、「理解できない部下に、やる気や能力がないんだ」といった形で、部下を否定し始めるリーダーもいますが、これがチームを壊していく大きな原因になっています。なぜなら、人間は「否定」されたときにいちばん傷つくし、いちばん心理的リソースを奪われるからです。

だから、部下の前提知識を理解したうえで、相手に伝わるようにコミュニケーションをとることは、チーム・マネジメントをするうえで根本的に重要なことだと思います。

誰かに「肯定」されたときに心理的リソースは生み出されますから、リーダーが部下の目線に合わせたコミュニケーションをすることによって、職場を「自分を肯定してくれる空間」にすることができれば、それだけで心理的リソースが満たされた活気のある職場になっていきます。

相手の心理的リソースを最も傷つける行為とは?

田中 「否定しない」というのも大事なポイントですよね。
ゴールドマン・サックスは国籍、人種、ジェンダーなどいろいろなマイノリティがいる会社でしたから、何か意見を言ったら、必ず誰かを傷つけているということを前提にしなければならない環境でした。

だからと言って、誰も傷つけないようにしようとすると、何も言ってないのと同じようなことしか言えません。だから、何を言っても傷つく人がいるというのを前提に、なるべく痛みが少ないように、痛みを越えて理解してもらえるような、そんなコミュニケーションの仕方を磨かざるを得なかったように思いますね。

櫻本 なるほど。田中さんと話すといつも感じるのは、相手の話を受け止める力がすごいということです。

相手の言うことを否定せずに、いったんすべて受け止めてから、相手のためになるような話を返す……そういうことを徹底されていて、とても気持ちよくお話ができるし、私にとってちょっと耳が痛いことでも素直に聞ける感覚を覚えるんですが、それはゴールドマンのような職場環境のなかで磨かれたものなんですね。

田中 そうですね、まぁ、必要に迫られて僕なりに磨いてきたというところでしょうか。

櫻本 私もゴールドマンで働いていたからよくわかるんですが、国籍や人種などが異なる相手とコミュニケーションをとるためには、相手の背景にあるものを理解したうえで、相手に配慮をしたうえで話すことが求められますよね。

でも、それって同じ日本人同士の上司-部下関係でも同じことだと思うんです。特に、知識や経験の少ない部下の発言に違和感を覚えることはよくあることですが、それをすぐに「否定」するのではなく、「なぜ、そういう発言をするんだろう?」と相手の背景や前提知識を理解しようと努めることが大切です。

もっと言えば、「なぜ、部下のこの発言に対して、自分は違和感を覚えるんだろう?」と自己理解を深めることも大切です。自分が「当たり前」「これが正しい」と思い込んでいることを客観視することができれば、その自分の“常識”を一方的に部下を押し付けるようなことはなくなりますからね。

そういうマインドで部下と向き合うことができれば、違和感を覚える発言を部下がしたときにも、「おもしろいね」などとポジティブな言葉を返す余裕が生まれます。そのうえで、「なぜ、そう考えるんだろう?」という視点で対話を重ねて、お互いに理解し合う関係性をつくっていけるんじゃないかと思います。

田中 そうですね。そのような「肯定的な関係性」を築くことが、マネジメントを成立させるうえで最も重要なことなのかもしれませんね。(つづく)

(本対談は櫻本真理さんの著書『なぜ、あなたのチームは疲れているのか?』について語り合っていただいたものです)

連載第1回 https://diamond.jp/articles/-/380108

連載第2回 https://diamond.jp/articles/-/380110

提供元:ダイヤモンド・オンライン

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