「構想力・イノベーション講座」(運営Aoba-BBT)の人気講師で、シンガポールを拠点に活躍する戦略コンサルタント坂田幸樹氏の最新刊『戦略のデザイン ゼロから「勝ち筋」を導き出す10の問い』(ダイヤモンド社)は、新規事業の立案や自社の課題解決に役立つ戦略の立て方をわかりやすく解説する入門書。企業とユーザーが共同で価値を生み出していく「場づくり」が重視される現在、どうすれば価値ある戦略をつくることができるのか? 本連載では、同書の内容をベースに坂田氏の書き下ろしの記事をお届けする。
その会議は、
組織を前に進めていますか?
あなたの会社の会議は、どのように運営されているでしょうか。
決まった順番で報告が行われ、資料が一通り説明され、最後に「何か質問はありますか」と聞かれて終わる。あるいは、数字の進捗や事実関係の確認が中心で、特に発言がなければ踏み込んだ議論に入らないまま会議が終わる。
こうした会議は、進行も整っており、表面的には問題がないように見えます。
しかし、結果が出ない組織ほど、この手の会議を繰り返していることが少なくありません。
なぜなら、そこには「学び」も「前進」も生まれていないからです。
求心力を失う会議は、
「共有」で止まっている
成果につながらない会議の多くは、目的が曖昧です。
会議が「意思決定の場」なのか、「学びの場」なのか、「振り返りの場」なのかが整理されないまま、結果報告や情報共有だけで終わってしまいます。
特に問題なのは、失敗が起きたときの会議のあり方です。
・売上が未達だった
・プロジェクトが遅れた
・顧客から厳しい指摘を受けた
本来であれば、組織として学ぶべき重要な機会であるにもかかわらず、会議の空気が次第に「誰の責任か」という方向へ傾いていくことがあります。
発言は慎重になり、言葉は防御的になり、「余計なことは言わないほうがいい」という空気が支配する。この瞬間、会議は組織の求心力を失い始めます。
戦犯探しの会議が、
組織を静かに壊していく
失敗の場で責任追及が行われると、失敗は共有されなくなります。
その結果、問題は表に出てこなくなります。そして最後には、誰も助けを求めなくなります。
表面上は「問題が減った」ように見えても、実際には問題が見えなくなっただけという危険な状態に陥ります。組織は学習能力を失い、同じ失敗が形を変えて繰り返され、戦略の精度も実行力も、徐々に低下していきます。
こうした会議に共通しているのは、失敗を「処理すべき出来事」として扱い、学びに変換する視点が欠けている点です。
成果を出す組織は、
失敗を“学習装置”に変えている
一方で、成果を出している組織の会議では、失敗の扱い方がまったく異なります。
問われるのは、
・なぜこの判断に至ったのか
・どの前提が間違っていたのか
・次に同じ状況が起きたら、何を変えるべきか
といった点であり、「誰が悪かったか」ではなく、「何を学べるか」が議論の中心になります。
このような会議では、失敗を共有することがリスクではなく、組織への貢献であり、成長の原料として扱われます。
結果として、現場からの情報が集まり、戦略の前提が更新され、次の意思決定の質が高まっていきます。会議が、単なる報告の場ではなく、戦略を磨くための学習装置として機能し始めるのです。
『戦略のデザイン』では、戦略の失敗をどのように学びへ変換するかを、具体的に整理しています。