かけがえのない場所
ボルボの小型電気自動車(BEV)「EX30」にファン待望の「クロスカントリー」が登場。車高を上げてSUVっぽいデザインにという手法自体はおなじみながら、小さなボディーに大パワーを秘めているのがBEVならではのポイントといえるだろう。果たしてその乗り味は?
北欧ならではの勘どころ
その昔、わが家にしばしサーブがいたことがある。ゼネラルモーターズと提携後の最初につくられたその「9-3」は、当時の「オペル・ベクトラ」と共通のアーキテクチャーではあったものの、ふんわりしゃなりと路面をなでるように捉える乗り味が、過酷な自然環境での御しやすさにつながっているんだろうなと、かの地への妄想が膨らんだ。そういえば空調の吹き出し口ひとつとっても、凸凹を設けてそこに風を当てることにより、冷暖房が間接照明のようにふんわりと室内を包みこんでくれるのに感心させられたこともある。
言葉にすればコージーとかチルなどという形容になるのか、そういうほっこり感は北欧のクリエーションにおいての核たるところに据えられているのだろう。逆にいえばどんなに優れた技巧であっても、人当たりが悪いものはよしとされない。その昔、欧州の空港に降り立てばノキアの携帯電話の柔らかな着信音に旅情をくすぐられたものだが「ノキアチューン」と呼ばれるそれが実装されたのは、日本の携帯電話が街角でピピピと殺風景な音を鳴らしていた1994年のことだったという。
ボルボもまたプロダクトにご当地ならではのアイデンティティーを明確に織り込んできたメーカーだ。手袋をはめていても使える大ぶりなボタンやノブ……というのは昔からのクルマ好きには有名だろう。昨今はさすがにそうはいかないが、そのぶん内装の色やオーナメントの素材などに、ナチュラルやオーガニックといった今日的なテーマを意識したものを多用している。そうやって、華やぎよりも安らぎを揺るぎない個性としてみせる術(すべ)には感心するばかりだ。それこそ北欧の風土が育んだセンスということなのだろう。...