憧れすら届かない
アストンマーティンが世に問うた、V12エンジンを搭載したグランドツアラー/スポーツカー「ヴァンキッシュ」。クルマを取り巻く環境が厳しくなるなかにあってなお、美と走りを追求したフラッグシップクーペが至った高みを垣間見た。
受け継がれる「V12」というご神体
浮沈の時を繰り返してきた20世紀に別れを告げ、スーパーカーリーグの一角に軸足を置いて立ち続ける21世紀のアストンマーティン。そのターニングポイントをはっきりと示したモデルが、2001年登場の初代ヴァンキッシュだ。「打ち負かす」「征服する」といった名前の意味合いからも匂い立つたけだけしさを、FRスポーツカーのかがみのようなスタイリングに包み込んだそれは、腕力の数字ばかりがクローズアップされがちだったスーパーカーのあり方に、少なからぬ影響を与えたように思う。
搭載された12気筒ユニットは、当時の胴元だったフォードのV6ユニットをベースに、アストンの1990年代を象徴するモデルとなった「DB7ヴァンテージ」向けに設計・開発されたものだ。それがヴァンキッシュへの搭載で花開き、以降は彼らを象徴するご神体として、約20年にわたりあまたのモデルに搭載された。そのなかには、2012年に登場した2代目のヴァンキッシュも含まれる。
ヴァンキッシュは、アストンマーティンのラインナップにおいて継続的に販売される車種ではない。台数を厳密に区切って焦燥感をあおることはないが、その時々で世代の要として一定期間投入される、特別なポジションの銘柄である。そして今回、3代目となる現行ヴァンキッシュは、さしものアストンであっても継続は難しいかとうかがわれた12気筒を搭載して登場した。彼らがフラッグシップの要件としてそれを掲げてから四半世紀、今も伝統は継承されている。そしてこのモデルは、最大でも年間1000台以内の生産・供給に収めるとされている。新たな欧州排ガス規制「ユーロ7」の万一の発効に備えて、少量生産の特別枠を先取りしにいっているかたちだ。...