羊だろうと 狼だろうと
最高出力333PSのパワーをフルタイム4WDで御す豪速ハッチバック「フォルクスワーゲン・ゴルフR」に試乗! かつてなら脳内麻薬が飛び散るような体験だったのだが……令和の今、テスターである清水草一氏が抱いた感想は、まったくもって異なるものだった。
現代版「羊の皮を被った狼」
「フォルクスワーゲン・ゴルフ」の高性能バージョン「GTI」は、現在の中高年世代が若かりし頃、神話化された存在だった。日本には2代目ゴルフから正規導入され、私も『CAR GRAPHIC』誌の一読者として、その羊の皮を被(かぶ)った狼ぶりに憧れたものだ。
その後、ついに実物に乗る機会を得た時は、スペック以上に「このクルマはすごいんだ! GTIだもん!」と、念仏を唱えながら走った。
そのGTIを上回る高性能バージョンとして6代目から登場したのが、ゴルフRである。当時私は、アグレッシブすぎるくらいのエンジンフィールに、「オマエはランボルギーニか!?」と震撼(しんかん)。シフトアップのたびに「ブホッ! ブホッ!!」とリズミカルな変速サウンドが耳に届き、思わず『カーグラフィックTV』のオープニングテーマ曲を流したくなった。
当時のゴルフRは、2リッターターボで最高出力256PS。今回試乗した新型のゴルフRは、同じ2リッターターボで333PSに強化されている。今回はマイナーチェンジながら、従来型に比べ13PSのアップである。
ルックスに関しては、羊の皮を被った狼の伝統が受け継がれており、見た目はノーマルのゴルフと大差なく、かなりフツー。目印は、フロントエアダム中央部の反り上がりと、ボディーやブレーキを控えめに飾る「R」のロゴとエンブレム、そして4本出しマフラーくらいだ。伝統を守る姿勢は立派だが、昨今、「羊の皮を被った狼」は、あまり流行(はや)らないのではないか。
かつて速さは、クルマにとって最大の価値だったが(私見です)、現在はそうではない。グリルの小さな「GTI」バッジを発見して道を譲ってくれる時代は、完全に終わっている。高性能なら、シロートさんでも一目でわかるくらいハデにしないとアピール力がない。別にアピールする必要はないんだけど……。...