向かい風を切り裂いて
最新、すなわち992.2世代の「911 GT3」にも4リッター自然吸気のフラットシックスユニットが搭載されている。ただし、これを継続採用するのはポルシェにとっても大変な作業だったようだ。ポルシェの苦心と工夫、結果として得られたドライビングフィールをリポートする。
初代のデビューから25年
あの衝撃は今でも忘れられない。1999年、初代ポルシェ911 GT3がデビューした時のことだ。当時の911はといえば、エンジンが水冷化され車体は完全に刷新。そして何より“涙目”のヘッドライトで物議を醸したタイプ996の時代である。
進化は認めながらも、ハードコアなファンの多くがどこかで納得しきれないでいた、そんなタイプ996をベースに、伝説的な空冷時代の「カレラRS」をベンチマークとして、ドライビングのパフォーマンスとプレジャーを徹底追求して生み出された911 GT3は、瞬く間に走りを愛するポルシェ偏愛者にとっての、アイコニックな存在として認められることになる。
そのデビューから、はや四半世紀。この911 GT3にも、あらがいようのない時代の変化の波が押し寄せてきている。とりわけ厳しさを増すクルマを取り巻く環境規制、そして騒音規制は、911 GT3の一番の特徴・個性である高回転・高出力型の自然吸気フラットシックスにとっては向かい風以外の何者でもない。実際、すでに「カレラ」シリーズは過給ユニット化され、最新の「911カレラGTS」ではハイブリッドも採り入れられている。いつかGT3にも“その時”がきてしまうのでは……。純粋主義者にとって、これが切迫したテーマであることは間違いない。
幸いにも昨2024年、911 GT3登場25年という節目の年に登場した“タイプ992.2”こと最新の911 GT3のリアエンドには、従来モデルに続いて排気量4リッターの水平対向6気筒自然吸気エンジンが搭載されていた。しかし、それは決して簡単なことではなかった。それでも可能にしたのはたゆまぬ情熱、あるいは執念とでもいうべきものだ。
スペック数値には、その苦心のほどが端的に表れている。最高出力510PSは従来と変わらず、最高許容回転数も9000rpmを守ったが、一方で最大トルクは従来の470N・mに対して20N・mダウンの450N・mに下がっている。...