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【今年こそ!】勉強、ジム、ダイエット……エビデンスが明らかにする「習慣形成」の方法とは


37万部のベストセラーとなった『「学力」の経済学』(中室牧子著)から早9年。教育分野にはすっかり「科学的根拠(エビデンス)」という言葉が根付いた。とはいえ、ジャーナリストや教育関係者が「科学的根拠」として紹介しているものには、信頼性の低い研究も多い。
そこで、中室牧子氏がみずから、世界で最も権威のある学術論文誌の中から信頼性の高い研究を厳選、これ以上ないくらいわかりやすく解説した待望の新刊が発売された。
「勉強できない子をできる子に変える3つの秘策とは?」「学力の高い友人と同じグループになると学力が下がる」といった学力に関する研究だけでなく、「小学校の学内順位は将来の年収に影響する」「スポーツをすると将来の年収が上がる」といった、「学校を卒業した後の人生の本番で役に立つ教育」に関する研究が満載。育児に悩む親や教員はもちろん、「人を育てる」役割を担う人にとって必ず役に立つ知見が凝縮された本に仕上がった。
待望の新刊『科学的根拠(エビデンス)で子育て』の中から、一部を特別に公開する。

年始めにこそ知りたい
「三日坊主」にならない習慣形成の方法

「勉強ができない子をできる子に変える」ために、私がおすすめする2つ目の秘策は、勉強を「習慣化」することです。

勉強と同じように「継続」が難しいことはたくさんあります。スポーツジムに通う、資格試験の勉強、ダイエットに禁煙。継続が難しいからこそ「三日坊主」なる言葉が生まれたのでしょう。

かくいう私にも、スポーツジムに入会したのに、最初の3日だけしか利用せず、あとは会費だけ払い続けたという苦い経験があります。

実は、「スポーツジムに通うことが三日坊主にならない方法」を明らかにしたおもしろい実験が行われています。これには、子どもたちの勉強を三日坊主にしないための重要なヒントが含まれていますから、詳しく紹介していくことにしましょう。

この実験では、大学生は、ランダムに3つのグループに分けられました(*1)。

実験のグループ分け

グループ1 実験が始まった最初の1週間のあいだに、1回以上大学内のスポーツジムに行けば、3750円(25ドル)が支払われる

グループ2 実験が始まった最初の1週間のあいだに、1回以上大学内のスポーツジムに行けば、3750円(25ドル)が支払われ、続けてその次の4週間で合計8回以上スポーツジムに行けば、さらに追加で1万5000円(100ドル)が支払われる

グループ3 何もなし(ほかの2つのグループと比較するための対照群)

3つのグループの大学生は、実験が行われた5週間のあいだに、それぞれ何回スポーツジムに行ったのでしょうか。その結果が、図1で示されています。実験直後(5週間後)には、グループ2だけが突出してスポーツジムに行く回数が多かったことがわかります。

ここまでは驚きに値しませんが、この研究がおもしろいのはここからです。実験は5週間で終了しましたが、研究者たちは、そのあとも学生がスポーツジムに行ったかどうかのデータを取り続けました。

図1で示されているとおり、グループ2の大学生は、実験が終わり、お金がもらえなくなった13週間後も、スポーツジムに通い続けていることがわかったのです。

これが「習慣形成」の効果です。お金という金銭的インセンティブが呼び水となり、スポーツジムに通うという習慣が定着したのです。

金銭的インセンティブは、これまでスポーツジムに行ったことのない大学生がなんとなく感じていた(しんどそうだなとか、面倒くさいなというような)抵抗感を和らげる役割を果たしたと見られます。

たとえば、量の多い宿題をするとか、苦手科目の試験勉強をするときも、同じような抵抗感を感じやすく、「明日からでいいや」と先延ばしにしがちです。

このようなとき、最初の一歩を踏み出す手助けとなるよう、子どもたちに適度なお小遣いやご褒美を与えることが有効なことを示した複数のエビデンスがあります(*2)。

習慣化のための2つの条件

しかし、これだけでは、十分な説明とは言えません。もし金銭的インセンティブに習慣形成の効果があるならば、グループ2だけでなく、同様に金銭的インセンティブを与えられたグループ1の大学生にも同じような効果があるはずだからです。

しかし、図1からも明らかなとおり、グループ1の大学生にはほとんど効果がありませんでした。なぜでしょうか。

このことを理解するために、研究者たちは2つ目の実験を行いました。ここでも、大学生は、ランダムに3つのグループに分けられました。

実験のグループ分け

グループ1 月に1回以上スポーツジムに行けば2万6250円(175ドル)が支払われる

グループ2 月に8回以上スポーツジムに行けば2万6250円(175ドル)が支払われる

グループ3 何もしなくても2万6250円(175ドル)が支払われる(ほかの2つのグループと比較するための対照群)

2回目の実験では、すべてのグループに同じ金額が支払われましたが、スポーツジムに通わなければならない回数が違っています。3つのグループの大学生は、それぞれ何回スポーツジムに行ったのでしょうか。

その結果は、図2に示されています。またしても、グループ2だけがスポーツジムに行く回数が増加し、そのあとも持続したことがわかります。つまり、習慣形成には、定期的に「繰り返す」ことが重要であることがわかります。

2つの実験の結果を大雑把にまとめてみると、習慣化のためには、(1)何かを始めるときに感じる初期の抵抗感を和らげ、取り掛かるきっかけを作ること、(2)繰り返すこと、の2つを同時に行うことが重要だとわかります。

これは大学生を対象にした小規模な実験でしたが、このあと、企業の社員を対象にした大規模な追試が行われ、同様の結果が得られています(*3)。

子どもたちの食習慣を変えようとしたおもしろい研究もあります。8000人が通う40の小学校で、給食のときに子どもたちが果物や野菜の小皿を選ぶと、学校内の売店や書店で使える約40円(0.25ドル)分のトークン(学校内でしか使えないおもちゃの通貨)をもらえるようにしたのです。

少額の金銭的インセンティブによって、小学校で野菜や果物を食べる子どもの割合は2倍に増加し、3か月後に金銭的インセンティブが得られなくなってもその効果は持続し、子どもたちに野菜や果物を食べる習慣がついたことが報告されています(*4)。

お金で釣るのは逆効果になることもある

「習慣は第二の天性なり」ということわざのとおり、今日の行動を「良い習慣」につなげる第1歩とすることは重要です。

ただし、注意が必要なこともあります。先の実験に参加した大学生の中で、習慣形成に成功したのは、「これまでスポーツジムに行った経験のなかった大学生」だけだったということです。

実験の前から定期的にスポーツジムに通っていた大学生たちは、実験の前後でほとんど行動を変化させなかったどころか、実験のあとにはむしろスポーツジムに行く回数が減少してしまいました。

これを経済学的に説明すると、もともとスポーツジムに通っていた大学生は、内的なインセンティブが高かったのにもかかわらず、金銭的インセンティブのような外的なインセンティブが導入されたことによって、みずからの内的なインセンティブを失ってしまったということになります。

外的インセンティブとは、外部からの報酬や評価による動機づけのことで、内的インセンティブとは、みずからの興味や関心、意欲に基づく動機づけのことを指します。

このため、金銭的なインセンティブを習慣形成につなげるためには、「今はまだその習慣が身に付いていない人」を対象にするのがよいでしょう。

(この記事は、『科学的根拠(エビデンス)で子育て』の内容を抜粋・編集したものです)

提供元:ダイヤモンド・オンライン

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