熱狂と崇拝のカルトカー
日本では2008年から親しまれてきた3代目「フィアット500」の販売が終了。タイムレスなデザインは今でも健在であり、周りのクルマよりも遅いのはデビュー当初からのこと。つまり古くさいところは何ひとつないのだ。最後に思い出づくりのドライブに出かけた。
日本仕様の生産が終了
この記事は急いで読むことをオススメしたい。ステランティス ジャパンは5月にフィアットの500と「500C」の国内販売終了を発表した。すでに日本向け仕様車の生産が終わっており、ディーラーの在庫がなくなれば手に入れることができなくなる。どうしても欲しいなら、読まずに今すぐ問い合わせの電話を入れたほうがいい。
そういう事情だから、試乗車を選ぶこともかなわなかった。2気筒エンジンを搭載する「ツインエア」は用意がないという。手配できたのは「1.2カルト」。1.2リッター直4エンジンだが875ccターボのツインエアより最高出力と最大トルクが下回り、最廉価のエントリーグレードという位置づけだ。ポップでカジュアルなクルマという500のキャラクターにはふさわしいともいえる。
ちょっと引っかかるのは“カルト”というグレード名だ。社会問題を引き起こしている悪い宗教団体を思い起こしてしまう。もちろん、500はゆがんだ教義や信仰とは関係がない。cultという言葉は狂信的集団を指すが、もともとは熱狂や崇拝といった意味を持っている。アレハンドロ・ホドロフスキーの『エル・トポ』やデヴィッド・クローネンバーグの『ヴィデオドローム』をカルトムービーと呼ぶような使い方だ。
そう考えると、500は確かにカルト的人気のクルマだった。初代500がデビューしたのは1936年。「トポリーノ」の愛称で呼ばれ、イタリアの国民車的存在になる。1957年にダンテ・ジアコーザの手になる2代目の“ヌオーヴァ500”が登場。駆動方式を初代のFRからRRに変更し、室内空間を大幅に拡大した。1975年まで、18年の長きにわたって親しまれるロングセラーとなった。...