“手に余る”究極の理由
KTMからリッタークラスの新型ロードスポーツ「990デューク」が登場。軽快なフットワークと独創のデザインを併せ持つモーターサイクルは、自称“古いオートバイ乗り”の目にどう映るのか。オーストリアから届けられるアバンギャルドな一台に触れた。
ヒラヒラ舞うように扱えそうな感触
「手に余る」。これが個人的なKTM 990デュークの印象だ。ネガティブ発言に聞こえるかもしれないが、もしあなたがKTMに興味をお持ちなら、こんなたわ言もひとつの意見と受け止めてくれたら幸いです。
さておきKTM 990デュークは、デュークシリーズのデビューから30周年の2024年に登場した最新モデルだ。前身の「890デューク」で採用されていた「LC8c」エンジンを拡大し、排気量は947ccで最高出力123PSを発生する、水冷4ストローク並列2気筒DOHCエンジンを搭載している。
などと涼しげに記しているが、ほぼ1リッターで出力100PS以上と聞けば、現代のオートバイのスペックに不慣れな者は肝っ玉が縮み上がる。なので慎重にスロットルを開けてみたのだが、取り越し苦労と言うべきか、いきなり別世界に放り出されるような加速感には襲われなかった。それを安心材料にして街なかを走らせるうち、低速域からでも十分なトルクを引き出せる特性がわかってくると、存外に扱いやすい印象すら覚えるようになる。
ただし、警戒心を解くことはできない。鼓動感を放ちながらもスムーズに高回転域に達するエンジンの手綱を緩めた瞬間、それこそ別世界にさらわれる予感を常に感じるからだ。穏やかにもたけだけしくも乗れそうな幅の広さは、ビッグツインのだいご味なのかもしれない。けれど自分には、ガラガラうなるサウンドはアラートのサインに聞こえた。
すべては「見た目のわりに」という錯覚が油断を引き起こす。ゆるめのライディングポジションもそうだ。ネイキッドモデルのデュークはバーハンドルが主流ゆえ、上体の筋力が求められる前傾姿勢を強いられない。加えてハンドル位置が近めなので、上半身の自由度も高い。ゆえに乗りやすいと思ってしまう。さらに、825mmのシート高はシート自体の幅が狭いので足つき性も悪くないし、狭いながらも尻の収まり具合もいいから困る。
聞くところによると、990デュークには新たな構成部品が90%以上も投入されているそうだ。そのハイライトが、新設計のチューブラータイプフレームとスイングアーム。車体の剛性を高め、リアアームはしならせることでより曲がれるようになったというが、申し訳ないけれどその功績を実感できる技量はない。ただ、このサイズで燃料込み190kgが醸し出す軽量感は、ビシッと硬めの乗り味を担保にした、ヒラヒラ舞うように扱えそうな感触によって体感することができた。
だとしても、「このオートバイを選んでよかった」と喜べる舞台は街なかではないだろう。そもそもKTMは「RADY TO RACE」をうたっているので、街なかしか走らない者の「手に余る」のは当然かもしれない。それでもロードモデルをつくり続けるKTMについて、このあと所見を勝手に語ることにする。「これに乗ってくれてよかった」とデュークが思ってくれない自負を持つ乗り手なので、さして説得力はないけれど。...