冒険へのパスポート
アナタなら冒険のお供にどのバイクを選ぶ? JAIA輸入車合同試乗会のなかから、新型アドベンチャー「BMW F900GS」「ロイヤルエンフィールド・ヒマラヤ450」や、普通二輪免許で乗れる「トライアンフ・スクランブラー400X」の走りをリポートする。
荒野に向かう準備が整っている BMW F900GS
おそらく一般的にはアドベンチャー系。個人的にはパリダカ系と呼ぶジャンルの先頭をひた走るのがBMWの「GS」シリーズ。誰でも一度くらいは抱くはずだ。GSが醸し出す荒野への誘いに身を任せてみたい憧れを。けれど、これほど現実とのギャップを思い知らされるモデルがないのも事実だったりする。
ボクサーツインエンジンを搭載した「R1300」から、312cc単気筒エンジンの「G310」まで幅広いラインナップを有するのが現在のGSシリーズ。そのなかで中堅に位置するのが、今回フルモデルチェンジされた並列2気筒エンジンのF900GSだ。先代にあたる「F850GS」のエンジンスペックは排気量853ccの最高出力95PS。新型ではそれぞれ895cc、105PSへとアップしており、それに伴って車名まで変えてきた。その他多くの刷新箇所に鑑みると、正常進化した別種ととらえていいだろう。
なおかつシート高も10mmほどアップし、BMWモトラッドで最も高い870mmとした。これがGS! またいだ瞬間に聞こえてくるのは、憧れがパチンと破裂する音なのだ……。
身長175cmで標準的と信じている自分の股下長でも、両足のつま先が地面につくのはギリ。停車中でも強風にあおられたら立ちゴケ必至。その分不相応を体感する悲しい気持ちは、何年も前に借りた「R1100GS」でも体験した。そのときは山中の坂で2度も立ちゴケしたんだっけ。
だがしかし、走りだしてしまえば快適ゆえ、一瞬にして嫌な記憶を吹き飛ばしてくれるのもGSの特長だ。ブルンブルンと両肩をぶん回すように働くツインエンジンは「速い!」と感じる部類。視線の高さからくる見晴らしのよさは、試乗会の会場ですら旅先みたいに感じさせてくれた。
なのに小さなカーブを曲がろうとすると、ハンドルの“立ち”の強さに往生する。GSシリーズ唯一の21インチフロントホイール&ブロックタイヤは、本気オフローダーの証し。これを相棒にするなら、僕は一からオフロードモデルに適した操り方を学ばなくてはならないのだろう。
なんにせよシリーズ中堅のF900GSは、すぐにでも荒野に向かう準備が整っているモデルだ。言うまでもなく、またがってすぐに嫌な汗をかく僕には、御せるだけの体格をはじめ、それにふさわしい支度を用意することができない。つまりF900GSは、乗り手を選ぶ。そんな新車がこの時代に発売される事実にすがすがしさを覚えた。憧れとはそもそも、かなわないままだからこそ無垢(むく)の美しさを保てるものでもある。いや、負け惜しみじゃなく。
(文=田村十七男/写真=向後一宏/編集=堀田剛資)...