筋書きはできている
黒船は日本に偶然立ち寄ったわけではなく、ペリーは大統領からの国書を携えていた。実は中国のBYDも同様で、うるさ型が多い日本のカスタマーを徹底的にリサーチしたうえでの上陸である。「BYDドルフィン」の費用対効果の高さはこの研究に基づいている。だから脅威なのだ。
BYDドルフィンのポジション
とある飲み会の席で、「BYDのドルフィンってクルマに乗ったよー」という話をすると、クルマに全然興味がなくて、ポルシェとかフェラーリと聞いてもウンともスンとも言わない知人が、「どうなの、どうなの、実際のところ、中国のクルマってどうなの?」と食いついてきた。
意外な展開に、虚を突かれた。これはどうやって説明すればいいのだろう。なにせ相手は、クルマ全然知らない人間だ。BYD独自のブレードバッテリーが、とか、内装の質感が、とか説明してもまるで伝わらない。やむを得ず、たとえ話を用意した。
「まずまずおしゃれな人がいるとします。どれくらいおしゃれかというと、スーツを量販店では買わずに、セレクトショップで店員さんと相談しながら仕立てるぐらいの人です。それくらいファッションに気を使う人でも、白いワイシャツは消耗品だから普段はユニクロでいいや、という人もいます。実際、ユニクロのワイシャツでなにも問題はない。BYDのドルフィンは、ユニクロのワイシャツぐらいのクオリティーの高さです」
この話をしても、知人はイマイチ納得していない様子だ。そうだ、彼はクルマだけじゃなくて、ファッションにもそれほど興味がなかった。で、別のたとえ話を考えた。
「かなりコーヒーが好きな人がいるとします。どれくらい好きかというと、自分でローストまではしないけれど、毎朝豆をひいてコーヒーを入れるぐらいのコーヒー好きです。そういう人が寝坊してコーヒーを入れる時間がないときに、セブン-イレブンでコーヒーを買うとします。そりゃあ自分で入れるコーヒーのほうがおいしいけれど、これも悪くはない、コーヒーを飲めるだけ幸せ、ってなると思います。BYDのドルフィンは、セブン-イレブンのコーヒーくらいのレベルは十二分に確保していると思います」
こう説明するとクルマにもファッションにも興味はないけれど、食いしん坊ではある知人は、ようやく「なるほど!」とピンときたようだった。要するにBYDドルフィンは、クルマ好きが趣味で乗るにはいろいろツッコミどころがあるけれど、実用車として使うならなんの不満も抱かないレベルにある。...