継承すべきお宝
高級車にも電動化の波が押し寄せる今、大排気量サルーンの存在意義とは? 果たして名機W12エンジンを搭載する「ベントレー・フライングスパー スピード」は、電気自動車にはない息吹とシーンを選ばぬ走りのよさを味わわせてくれた。
最も走りに振った一台
ベントレーが、W型12気筒エンジンの生産を終了すると発表したのは2023年2月。国や地域によって多少の差はあるけれど、2023年12月に受注を終了、2024年4月には完全に生産を終える予定だ。
これは同社の「ビヨンド100」戦略にのっとったもので、「2024年までにすべてのモデルにPHEVをラインナップ」→「2025年から毎年1モデルずつ、5年にわたってBEVを発表」→「2030年には完全BEV化」というロードマップを描いている。
同時に、2030年末にはエンド・トゥ・エンドのカーボンニュートラルを達成し、“サステイナブル・ラグジュアリー・モビリティー・ブランド”の地位を確立することが目標だという。
というわけで、目の前の「Dragon Red II」という、血の色を思わせる深みのある赤に塗られたベントレー・フライングスパー スピードを眺めながら、ベントレーのW12を回すのも今日が最後かもしれない、としみじみとする。いや、もしかしたらベントレーに限らず、12気筒エンジンそのものと今生の別れになるかもしれない。そう思うと、一刻も早く出発したいような、出発前のワクワクをもう少し味わいたいような、複雑な気分になるのだった。
スタートする前に、フライングスパー スピードの「スピード」について理解しておく必要がある。
ベントレーは現在、「デリバティブ戦略」を採っている。デリバティブとは簡単に言うとグレードのことで、それぞれの車種に4種類のグレードが用意されている。
究極のウェルビーイングを提供する「アズール」、印象的なスポーツモデルである「S」、最もパフォーマンスを重視する「スピード」、そしてすべてにおける最高峰を追求する「マリナー」の4つだ。つまりこれからドライブするのは、フライングスパーのなかでも最も走りに振った仕様ということになる。...