目を背けたい現実
小型SUVの「ATTO 3」で日本市場に進出したBYDの次の一手は、小型ハッチバックの「DOLPHIN(ドルフィン)」だ。何とも愛らしい見た目ながら、走りにも内外装の質感にもほとんど隙がない。われわれは中国の新興メーカー発という考えを捨て、襟を正さなければならない。
飛ぶ鳥を落とす勢いのBYD
電気自動車(BEV)とプラグインハイブリッド車の専売メーカーにシフトした2022年、186万台を販売したBYDの勢いは、さらに加速している。2023年の1〜6月期の世界販売台数は約125万台で、対前年比は96%増。分母がゼロコロナ政策の折の数とはいえ、伸び率は成熟した自動車産業のそれとは思えない。
と、このうち半分と見積もっても、2023年のBYDのBEV販売数は既納客ガン無視の値引き攻勢を仕掛けるテスラのそれに限りなく近づくことになる。もしくはトップの座から引きずり下ろすことをもくろんでいても不思議はない。
その後押しとなる状況は既に表れている。同じくこの1〜6月、自動車輸出において中国は日本を抜き、世界一となった。その原動力が他国が撤退したロシア市場であることは想像できるが、全数の4分の1を中国が言うところのNEV、つまりPHEVとBEVが占めているとあらば話は一筋縄ではいかない。うち、輸出向けはBEVが大半を占め、2022年も90万台強を外に出しているとなると、2023年のBEVの輸出は3桁万台の大台に乗せてくることは確実だろう。ちなみにこの数字には、上海工場から出荷されるテスラも含まれている。
と、ここまでは報道発表を基にした数値的なところから見えてくる話だ。一気にパワーバランスを覆す周到なシナリオを政治が描いていたとか、そのお膳立てがあってこその強力な競争力だとか、そういう詮索話は日々いろいろと出てくるし、イデオロギーの前提が国富の共有である以上はさもありなんだと個人的には思う。あるいは、莫大(ばくだい)な人口が支える市場を横目にそういう二枚舌をみんな容認してきたんじゃないかという話も理解できる。
でもそれはあくまで個人の感想というやつで、あらゆる方々が読む前提で試乗印象を伝えることとは切り離して考えなければならない。ましてや今は日中のカントリーリスクに直結するようなネガティブニュースが大新聞や大電波に乗ってバンバン報道される状況だ。感情任せで政治的思惑に乗せられないよう、できるだけ冷静でいることが大事なタイミングだと思っている。...