新時代のトライデント
マセラティの新型SUV「グレカーレ」のなかでも、530PSの3リッターV6ターボを搭載した最上級グレードが「トロフェオ」だ。スーパースポーツ「MC20」ゆずりの心臓を持つ特異な一台は、「SUVの皮をかぶったグラントゥーリズモ」ともいうべきモデルに仕上がっていた。
シフトセレクターはいずこ?
マセラティ・グレカーレ トロフェオに乗り込んだのはいいけれど、う〜む。発進の仕方がわからない……。スタートのボタンはアルファ・ロメオの「ステルヴィオ」と同じく、ステアリングホイールの左スポークの根元にある。これを押す。グオンッ! とフロントの「ネットゥーノ」なる「MC20」ゆかりの3リッターV6が即座に目覚める。でも、そのサウンドは不思議なほど控えめだ。ちょっとガッカリ。マセラティにはV8もV6も、直4のマイルドハイブリッドでさえ、夜の街でガオーッとほえているイメージが私にはある。
だけども、問題はギアのセレクターがないことである。行かなくちゃ。撮影に行かなくちゃ。でも、ないのである。どこにある? 落ち着け、オレ。センターコンソールには? ない。ナイナイないよ、レバーがない。そこにあるのはカーボンのパネルで覆われた小物入れとカップホルダーだけだ。ダッシュボードには? 中央に12.3インチと8.8インチのスクリーンが上下に並んでいる。アストンマーティンとかのように丸型のシフトボタンが並んでいたりはしない。いったいセレクターはどこ? メルセデスみたいにステアリングから生えている? ノー。ステアリングのパドルか? ノー。そりゃそうだ。Dレンジに入れていないのだから、動くはずがない。どこにあるんだぁ?
困ってしまって、にゃんにゃんにゃにゃん。助けてくれたのは編集部のHさんでした。あまりに私が動かないものだから、心配して駆けつけてくれた。教えてもらわなければ、乗り込んだ地点の霞ヶ関の路上にずーっといたかもしれない。教えてもらえば、答えは簡単。上下に並んだスクリーンの間に並んだ、真っ黒けのスイッチに、左から「P」「R」「N」「D/M」と書いてある。このとき私は思った。これで箱根に行ける。...