最もエレガントなベントレー
高級車市場において、かつて考えられなかったほど多くの支持を集める、現代のベントレー。最高出力528psのオープンモデル「コンチネンタルGT V8 Sコンバーチブル」に試乗し、人気の理由や今後の課題について考えた。
ベントレーといえば……
都内ではごく普通にコンチネンタルGTを見かけるが、それを当たり前のように感じているのだから時代は変わったものである。少なくとも15年前までは考えられなかった風景だ。すれ違った後に思うのは、もしコンチネンタルGTが生まれなかったら、自動車史の中でもまれにみるベントレーの復活はなかったはず、ということだ。マーケットを創り出すというのはまさしくこのようなことを言う。あるいは、すでに存在していたけれど、ほとんどの自動車メーカーが気づかなかった顧客の漠然とした欲求を見事に形にしたのである。自動車に限らず、そうやって顧客の心をわしづかみにした製品だけが新たな世界を切り開くのである。それまでのベントレーは歴史も品格も、ついでに固定客も持ってはいたが、あくまでごく限られた人々のためだけの特殊な趣味のクルマであり、ビジネスユースにも耐える実用性と信頼性を万全に備えているとは言えなかった。それゆえ年間1000台足らずを文字通りのハンドメイドでほそぼそと作り続けていたのである。
ところが20世紀末にフォルクスワーゲン傘下入りすると、「メルセデス・ベンツSクラス」と「BMW 7シリーズ」、それにジャガーぐらいと見なされていた高級車セグメントのさらに上に、特別なハレの日だけではなく、日常的にも使えるスーパーラグジュアリーカーのマーケットが存在すると看破し、世の中の疑いの目を物ともせずに果敢に送り出したのが超弩級(どきゅう)クーペであるコンチネンタルGTとサルーンの「フライングスパー」である。結果、ベントレーは1万台以上の量産メーカーへと変身を遂げ、今やベントレーといえばコンチネンタルGTシリーズである。もちろん量産とはいえ昨年の生産台数はおよそ1万1000台にすぎないが、それまでとはまさしくけた違いである。...