凝縮された名門の美意識
16世紀に創立された英国のコーチビルダー「Mulliner(マリナー)」。その伝統と格式のある名を冠する「ベントレー・コンチネンタルGTマリナー」に試乗した。こだわりの素材とデザインによって仕立てられた2ドアクーペは、ぜいたく極まりない至高の一台だった。
マリナーには3つの柱がある
コンチネンタルGTマリナーの車名は、ベントレー社内ブランドともいえるベントレーマリナーに由来する。
マリナーはもともと16世紀に馬車製造業者として創業したが、20世紀に入るとH.J.マリナーとして自動車架装業者=コーチビルダーに転身する。自動車の創成期にはベアシャシーを自動車メーカーがつくり、そこにコーチビルダーが顧客の要望に合わせて上屋を架装して、1台のクルマとして完成させるのが普通だったからだ。
H.J.マリナーは早くからロールス・ロイスを手がけて英国随一のコーチビルダーとして名をはせた。1960年代初頭になると、同じくロールス・ロイスの架装で知られるパークウォードと合併してマリナーパークウォードとなり、そのまま、当時ベントレーと一体だったロールス・ロイスの社内コーチビルダーとして傘下に入った。
その後は社内コーチビルダーとして活動するも、1990年代初頭にはロンドン郊外の専用工場も閉鎖。さらに、マリナーパークウォードが独自にボディーを手がけるモデルも2000年を前にほぼ姿を消す。また、1998年にロールス・ロイスの名がBMWグループにゆずられて以降、マリナーの名はベントレーのもとに残って、ときおり限定車や特別仕様車に名前が使われてきたのはご記憶のとおりだ。
ベントレーは現在、この伝統のコーチビルダーをあらためて有効活用しようとしており、マリナーのブランドで大きく3つの事業を展開しはじめている。ひとつが1台からのカスタマイズも請け負う“コーチビルド”で、その第1弾が2020年に世界12台限定で発売された「バカラル」だった。2つめの“クラシック”事業では、1939年式の「コーニッシュ」を復元したり、約100年前の「ブロワー」を復活・継続生産したコンティニュエーションシリーズなどを手がけたりしている。...