◎メタボ健診を受けていれば健康になれる
◎テレビを見せると学力が下がる
◎偏差値の高い大学に行けば収入が上がる
一見正しそうに見えるが、実はこれらの通説は経済学の有力な研究ですべて否定されている。ここでいう「メタボ健診」と「健康」のように、「2つのことがらが因果関係にあるかどうか」を調べる方法のことを「因果推論」(いんがすいろん)と呼ぶ。
この因果推論の考えかたを一般書で初めて紹介した書籍『「原因と結果」の経済学』が全国の書店で話題。毎日新聞朝刊、日経新聞朝刊に書評が掲載され、池上彰氏も「私たちがいかに思い込みに左右されているかを教えてくれる」と推奨。
どうすれば、ある2つのことがらが因果関係にあるといえるのだろうか。『「原因と結果」の経済学』から、一部を特別に抜粋する。
相関関係を因果関係のように
見せてしまう「第3の変数」
「まったくの偶然」(第13回)の次に私たちが疑ってかからなければならないのは、原因と結果の両方に影響を与える「第3の変数」の存在だ。専門用語で「交絡因子(こうらくいんし)」と呼ぶ(注1)。
これは、相関関係にすぎないものを因果関係があるかのように見せてしまう厄介者だ。
交絡因子の具体例を見てみよう。第1回で述べたとおり、「体力がある子どもは学力が高い」と言われている。このことを知って、子どもに運動をさせようと考える親もいるかもしれない。
しかし、体力と学力とのあいだに因果関係があると断定するのは早計だ。子どもの体力にも学力にも両方影響している第3の変数があるかもしれない(図表1)。
たとえば「親の教育熱心さ」などがある。教育熱心な親は、子どもにスポーツを習わせたり、食事に気をつけたりする(体力に影響を与える)だろうが、同時に子どもを勉強するように仕向けるだろうから、学力も高い(学力に影響を与える)傾向がある。
この場合、本当に子どもの学力を上げているのは体力ではなく「親の教育熱心さ」だ。もしそうなら、無理やり体力をつけさせても、子どもの学力は上がらないだろう。
「因果関係かどうか」を検討するときには、原因と結果の両方に影響を与える交絡因子が存在しているかどうかを疑ってみることが重要だ。
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