強烈無比な個性の競演
世界各国のモーターサイクルが今年も神奈川・大磯に大集結! JAIA輸入二輪車試乗会の会場から、まずは「BMW R18」と「ハーレーダビッドソン・ファットボーイ114/アイアン883」の走りをお届けする。皆同じクルーザーだが、いずれも強烈な個性の持ち主だった。
デカダンスの匂い BMW R18クラシック ファーストエディション
JAIA主催の輸入二輪車試乗会に招かれるたび感じ入るのは、モーターサイクル文化の豊かさだ。あくまで個人的な感想だが、四輪より二輪のほうが社会課題から距離を取れる(ように見える)ぶんだけ、多趣味ゆえの多幸的な、多様性を享受したものづくりの謳歌(おうか)……要するに文化の成熟を、この会場のそこかしこから感じ取れる。
そんな思いを最も強く印象づけたのが、BMWの「R18クラシック ファーストエディション」だ。ダブルクレードルのフレームにティアドロップスタイルのフューエルタンク、その縁に1930年代の「Rシリーズ」をモチーフにしたピンストライプを走らせるデザインに触れれば、“クラシック”以外の表現を許さない頑(かたく)なさを覚えずにはいられなくなる。
なによりも、クラシック ファーストエディションのベースモデルであるR18のために、BMWモトラッドは1801ccという史上最大排気量のボクサーツインを開発したのだ。しかもこのエンジン、スロットルをあおった際に車体が傾くボクサーツインのクセが、体ごと持っていかれそうなくらい強く激しく出る。そうした個性に懐かしさを感じるクラシックな人間がいることを承知したうえで、BMWモトラッドはこんなにパンチのあるエンジンを投入したに違いない。
対して走りは、これまた見た目通りにジェントル。乗り手が自重さえすれば、BMW史上最大の排気量で威圧してくることもなく、また374sの車両重量を感じさせることもなく、穏やかに優雅に走る。ただし、「レイン」「ロール」「ロック」の3段階が用意されたパワーモードの「ロック」を選べば、91PSのフルスペックが解放される。
ベースとなるR18との違いは、大型ウインドシールド、タンデムシート、サドルバッグ等の装備が主だが、フロントホイールをR18の19インチから16インチに、タイヤを120/70から130/90に替え、ルックス全体の雰囲気も異にしている。そして価格は297万6500円(「ファーストエディション」は326万2000円)。こんな豪華なモーターサイクルをBMWモトラッドは発売した。SDGsやカーボンニュートラルというテーマが語られ始めたこの時期に。
いや、嫌みを言いたいのではない。むしろ拍手を送りたい気分だ。とはいえ、このご時世を思えば、多趣味で多幸的で多様性に満ちた二輪文化の世紀末を感じざるを得ない。このモデルに漂うのは、新時代の前に漂うデカダンスの匂い。言えることは、とにかく「乗るならお早めに」だろうなあ。
(文=田村十七男/写真=三浦孝明/編集=堀田剛資)...