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「飲まなきゃいけない」を「好んで飲む」にどう変える? “体に良い”だけでは続かない…“飲む酢”市場の転換点
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リニューアルされた『フルーティス』(写真提供:ミツカン)
お酢ドリンク市場は2021年ピークで縮小傾向…“酸っぱくてキツイ”が壁に
2021年といえば、コロナ禍により緊急事態宣言が度重なり発令された年。健康への意識の高まりから、「なんとなくお酢って体にいいよね」と手に取る人や、若い女性を中心に韓国発の果実酢がブレイクしたことなどから、お酢ドリンク市場の売上高はピークを迎えたのだ。
しかし、トレンドは移り変わるもの。ブームで流入したライトユーザーはその後、第4次ブームを迎えた豆乳や、抗酸化作用による美容効果が話題となったトマトジュースへと流出。お酢ドリンクは、その味と効果が気に入って今も継続購入しているファンが一定数いるものの、市場は縮小の一途を辿ってきたという。
フルーティスブランドがローンチされた2020年のパッケージ(写真提供:ミツカン)
「消費者インタビューを行うと、『酸っぱくてキツイけど、体にいいと言われるから頑張って飲んでいる』というように、お酢ドリンクを飲むことを“苦行”のように感じているという声が多く聞かれました。その結果、酸味が合う人は継続するし、合わない人は離脱していることがわかりました」(田中さん/以下同)
しかし、そもそも、お酢は本当に体にいいのか? 酢の主成分である酢酸には、“食後の血糖値の上昇を抑える” “肥満気味の人の内臓脂肪減少”“高めの血圧低下”“運動後に生じる疲労感の自覚軽減”の4つの力があることが報告されているという。
『フルーティス』はその効果を訴えるべく、2023年に肥満気味の方の内臓脂肪を減少させる機能性表示食品へとリニューアルしたのだが、それでも人気を取り戻すことはできなかった。その要因にはこんな時代背景もあった。
2023年によりヘルシーな印象へとリニューアルされた『フルーティス』ストレート(写真提供:ミツカン)
その他にも、コロナ禍を機に機能性表示食品が大幅に増加しことに加え、物価上昇も手伝って、消費者の健康飲料を選択する目はシビアになっている。酸っぱさがネガティブと捉えられがちになったお酢ドリンクにとって、「体にいいから飲まなきゃいけない飲料」から、「美味しいから好んで飲む飲料」への転換が求められる時代になったといえる。
社内外で「もう厳しいかもしれない」の声も…若手社員が挑んだ“名前以外すべて変える”決断
「私は甘い飲料や果実ジュースを飲みたいと思っても、甘さが後に残る感じが苦手でいつもお茶と水しか飲んでいませんでした。ところがミツカンに入社して『フルーティス』を知って、甘いけれど後味がスッキリしているところや酢の健康機能に感動し、この価値を廃らせてはいけないと思ったんです」
しかし、予算や時間をかけて大幅なリニューアルを行うことについては、いくつものハードルがあったという。まず一番が社内における『フルーティス』の悲しい立ち位置だった。
「『フルーティス』はピークからずっと下火状態が続いていて、社内外から『フルーティスはもう厳しいかもしれない』という声が上がっており、諦められかけていたブランドでした。それまで何をやってもダメだったという印象が強かっただけに、『なんで今さら?』というような空気が社内にあり、理解を得ることが最初の関門でした」
そこで、提案したのが、「ブランド名以外はすべて変える」という大胆かつ大幅なブランドの再定義だった。その大きな柱となったのが、これまでのお酢を全面に出した設計から、お酢を果実の美味しさを引き出すための縁の下の力持ちとし、“健康のためのお酢ドリンク”から“新・果実体験が楽しめるリフレッシュドリンク”へと一新すること。
果実を主役にしたお酢ドリンクが誕生(写真提供:ミツカン)
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シャインマスカット 炭酸割り(写真提供:ミツカン)
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あまおう 牛乳割り(写真提供:ミツカン)
くすんだピンクやグリーンの“攻めた”パッケージ 「果実を主役に、お酢は脇役に」の発想で刷新
リニューアルされた『フルーティス』(写真提供:ミツカン)
「メインターゲットである大人の女性にどういうデザインが刺さるのかを研究するために、デザインチームは新大久保に韓国コスメを見に行くなど、今の流行をいろいろな角度からリサーチしました」
果実を全面に押し出したパッケージ『フルーティス あまおう』(写真提供:ミツカン)
くすんだピンクのパッケージになった『フルーティス マスカット』(写真提供:ミツカン)
同社のお酢ドリンクのラインナップを見ると、酢酸750mg含有というお酢の力と味を最大限活かした特定保健用食品の『マインズ』もあれば、機能性表示食品『黒酢ドリンク』シリーズなどもある。そんな中、お酢をあくまで果実の味を際立たせるための脇役として使用し、「かつてお酢ドリンクを飲んでいたけれど離れてしまったという人やお酢ドリンクを知らない人にまで、幅広く届ける飲料」として新たな開発に挑んだ田中さん。
お酢を“酸っぱい=苦行”から“美味しい=楽しい”に変えた『フルーティス』は、お酢ドリンク市場に定着した「飲まなければいけない」から「好んで飲む」の初めの一歩になるのかもしれない。